「マサ、〇〇持ってる?」
ある外国人研究者が、ニコニコしながら私に質問した。
それを聞いて私の頭の中は真っ白になったが、悟られないふりを装い、私はこう言った。
「それは、持ってないなぁ」
「〇〇だよ、〇〇!」と更に彼は続ける。
いやぁ、それを持ってる人はとっても珍しいと思うよ。とは言えず、更に
「うーーーん?持ってないと思うよ」と抽象的な答えを返した。
さて、この〇〇とは?
いつも病院への付き添いの時に
私のお仕事は外国人研究者のお世話だが、その中でも、もっとも多いお世話が「病院への付き添い」だ。健康診断から始まり、虫さされから体調不良まで幅広く対応している。
病院へ付き添うと必ず長い待ち時間がある。
この長い待ち時間は、私の英語のお勉強の時間にもなる。私にとってとても貴重な時間だ。
普段の英語の使い方でわからない事を聞いたり、世間話や彼らのプライベートな話を聞くことも多い。
この待ち時間に、私は彼らの不安な事や楽しいと思う事をリサーチして、1人の外国人のデータを蓄積していく。いろいろな質問をしながら、私は彼らを知っていく。
そして、いつものように外国人研究者の通院に付き添っていたとき、その会話は始まった。
彼はベトナム出身の外国人研究者で、日本に長く滞在しているが、日本語はあまり得意ではない。
英語が母国語ではない彼の英語は聞きやすく、そして私と同じ英語の悩みの側面を持っているので、わかりやすい答えをくれる。説明もいつも丁寧だ。
そんな心優しい彼が、ある時こんな質問をした。
「ねえ、マサは〇〇をもっている?」と外国人研究者。
「え!?持ってないよ」と私。
この質問に私はかなり動揺していた、彼になるべく悟られないように平静を装いながら、できるだけ静かに答えた。
「〇〇だよ、〇〇!〇〇」と外国人研究者。
「うーーーん?持ってないと思うよ」と私は答えながら、頭の中で考えた。
もしかして、私が英語を聞き間違えているのではないだろうか?
こういう事はよくある事、私が英語を聞き間違えるのなんて日常茶飯事。だけど、どう間違えているんだろう?私は会話の前後を思い出しながら、聞こえてきた英単語の発音に違い言葉を探した。
私は眉間にしわを寄せて考えていたに違いない。無意識で顔がこわばっていたんだろう。
すると、外国人研究者はゆっくりと私に聞いた。
「 Do you have a Mather? Mather!」
(あなたはお母さんがいますか?)
直訳するとこんな感じだけど、ライトに訳すと、「あなたのお母さんはどうしてる?」という感じ
私は聞き間違えていたことにやっと気づいた。その前に外国人研究者は、自分の母親の話をしていたのだった。
「OK, Sorry I misunderstood.・・・・・」私はこう答えて、自分の話を始めた。
私たちは同じ、英語は母国語でない
さて、私が間違えてしまった〇〇とは
「murderer」(マーダー、殺人者)
「殺人者持ってる?」と聞こえた時、本当にドキッとした。でも、こうゆう質問は外国では普通なのかもしれないとか、これに驚いたら差別だと思われるかもしれないとか・・・、色々な意味で本当にハラハラして、答えに戸惑った。
すこし話が戻るが、私たちは共通の英語に対する悩みを持っている。
それは英語が母国語ではないために、アメリカ人の単語を繋げる発音が聞き取りにくかったり、自分の英語が通じなかったりすることだ。
そして、彼はベトナムイントネーションの英語を話すという事を、会話しているといつも忘れてしまう。ベトナムは7つのアクセントの抑揚があり、英語よりよほどたくさんの強弱がつく言語。それを母国語に持つ彼らの英語は、強いアクセントが英語にも多くつく。
だから、私には「mother」という英単語が
「マッダー」と聞こえていて、それが「マーダー(殺人者)」と言ったと、私の脳内で変換されていた。
聞き間違い・言い間違いがあって当たり前
私が英語を話すとき、外国人からよく英語を確認される。
ある時は、イギリス人の学生に、
「I need confirmation.」と言った時に、
イギリス人の学生に
「Confirmation?」(のこと?)と繰り返されて,単語を確認された。Rとイントネーションの位置がわかりにくかったみたいだ。
スペイン人とドイツ人の研究者に、
「I was running in this morning!」
(今朝走ってきたよ)
と言ったとき、二人とも目を大きくして一瞬私の顔をジーっとみながら
「What learning?」と言った。LとRの発音がごちゃごちゃに聞こえていて、「朝、何を学んだの?」と私に聞いてきたのだった。
英語が母国語の圏内は世界の2割だと聞いたことがある。私と同じように、世界の大半の人は母国語ではない英語を話している。スペイン人はスペイン流の英語の発音をしているし、フランス人はフランス流の英語の発音をしている。そして私たち日本人も、日本流の発音をしている。
英単語が聞き取れなくても、発音が通じなくても、それを深く気にする必要はない。大切なのは、お互い同じように英語が母国語ではない、という事を理解する事だと思う。
私たちは完璧な英語を発音できなくてもいい、それを踏まえて私たちが話す英語を理解してもらい、相手の英語を理解しようとすること、それが言語が違う人とのコミニュケーションを上手にするコツだと思う。
京都が大好きで光華女子学園へ進学、卒業後、大阪の企業で経理課勤務。仕事が肌に合わず、夢だったイラストレーターを目指して大阪芸術専門学校へ。賃貸住宅ニュース雑誌社へ派遣社員として就職。その後地元へ帰り、地元のフリーペーパーやパチンコ店などのポスター制作するグラフィックデザイナー、ベジタリアン・ヴィーガンのお料理の先生、バンドのドラマー(ジャズ・ロック・軽めのフュージョンなどジャンルを問わず、地元ではセミプロとして活躍する。プロドラマー海野俊介氏に師事)、お琴奏者(趣味で名取まで取得)、演劇が好きで劇団にも少しだけ所属・・・など様々な経験を経て、英検3級しかありませんが、縁あって現在は、某施設で外国人担当のお仕事をしています。