「これね、〇〇の時の物なの!」と女性のイギリス人研究者が言った。
「えーー!」そんな時の物を、今だに使えるの?と私は思った。
イギリスは古い物を大切にする国だと聞いていたが、本当にそんな事が可能なのか?
と私は驚いた。
さて、その古い物とは?
たくさんの荷物
私が一番仲良くなったイギリス人留学生の女の子は、とてもたくさんの荷物を持っていた。
このイギリス人留学生の女の子は、私が、住む場所を探すお手伝いをした事がきっかけで、仲良くなった。
彼女は顔や体にたくさんピアスをあけていて、いつもハードなブーツに赤のチェックのスカート、髪の大半を赤く染めていて、耳の近くまで刈上げていた。
写真を撮るときも笑顔でにこっとしているものは少なく、絶対に怒った顔をしたり、舌を出したりして、個性的な印象を与える女の子だった。
ハードなパンクロックな音楽が大好きで、髑髏マーク☠️のカバンを持ち歩いていた。
いつもすましたような顔をして歩いていたので、一見すると、とっつきにくい外国人のイメージだが、内面はそうでもなかった。
その雰囲気とは違って、「ぬいぐるみ」が大好きで、ゲームセンターなどで取ってくるんだ、といつも得意げに話していた。
そしてこのイギリス人留学生の女の子は、いつも荷物が多かった。
たくさんのぬいぐるみ
部屋を探したお礼に、私と当時のイギリス人留学生の女の子を担当していた女性の2人は、彼女の部屋に招待してもらったことがあった。
その時、あまりにも「ぬいぐるみ」が多くて驚いたのを鮮明に覚えている。
私がもし彼女の立場だったら、留学先の外国でこんなにたくさんの荷物を持つことはしないだろうと思ったからだ。
必ず自国へ帰る日が来るから、引っ越しの荷物を片付ける事を考えると、不要な物はなるべく持たない、という考えの方が優先してしまう。
だから何の役にもたたない「ぬいぐるみ」は絶対に買わない、私の場合は不要な物のナンバー1だろう。
他にもたくさん荷物があったが、生活をする上でどうしても、日常のこまごまとしたものが増えるのは仕方ないかな、と思っていた。
古い物を大切にし愛するイギリス人
このイギリス人留学生の、人となりを見ているのは、とても勉強になった。
考え方も若いわりに大人びていたし、私の悩み事相談まで聞いてくれて、しかも的確なアドバイスもくれた。
いつも合理的で冷静、とても独立心が強く、男性に負けないぐらい研究を熱心にしていた。
外国人はこんな考え方なんだ!と思ったし、自立している様子は、尊敬に値した。
同じ女性でありながら、この強さをパワー、それでいて優しかったり、寂しがり屋だったりと、多くの発見を与えてくれた。
イギリス人留学生の女の子の、この考え方は、部屋を決める時からその言葉のはしばしに見えた。
彼女が借りたのは古い一軒家だったので、すこし不便だった。シャワーも何もかも古くて、畳の部屋がほとんどだった。
「この部屋でも大丈夫?」と私が聞いたら、
「畳の部屋は好きです、それにイギリスの実家はもっと古いのよ。」と言いながら。
イギリス人留学生の家では、お肉を調理するのに何十年も前からあるオーブンを使うらしく、火をつける時に体をオーブンの中に入れて奥の方にあるコンロに火をつける。その様子を再現しながら話してくれた。
これは〇〇の時のもの・・・
そんなイギリス人留学生もドクターという研究者になり、研究者としてイギリスから出張するようになりました。
先日、相変わらず元気な様子を見せてくれて本当に嬉しく話をしていたとき
「これ、○○の時の物なの」とイギリス人研究者になった彼女が言った。
「えー――――!」と驚いて、よくよく見てみると確かに古い物だった。紫のマジックバンド、蝶々のイラストと子供っぽいデザインだった。
その〇〇とは、「腕時計」
そして、それは5歳のときにご両親から買ってもらった物だった。
「5歳?!!」と私は驚いて叫んだ。
「うふふ、そうなの」と、こんな話をする時のイギリス人研究者の彼女は、とても嬉しそう。
誇らしげ見える。
パンクロックが好きで、たくさんピアスをつけていて、最近タトゥーも入れているけど
ご両親から子供の時にもらった腕時計を、とても大切つけている彼女って、素敵だなと思った。
私はイギリス人からしか、このような話を聞いた事がないけど、外国人はときどき意外な物を大切に持っている。
特に両親からもらった物や、思い出深いものなど。
さらにイギリス人研究者の女性は言った。
「これね、私達が初めて一緒に遊びに行った、音楽の野外フェスティバルで買った指輪だよ」
それはイギリス人研究者がまだ学生のころ、彼女が落ち込んでいる時があり、施設内の他のスタッフの女性と相談して、彼女を励まそうと、地元で開催された野外音楽フェスティバルへ行った。
その時にたしかに「tiny(かわいい)」と言って、屋台の雑貨店で、細いリングを買っていた。
私ならすぐに失くしてしまいそうな小さな物だが、それを大切にもっていてくれたなんて。そして、そのことを覚えていてくれたことが嬉しかった。
こだわりの物
外国人のこうゆう部分がとても素敵だと思う。
はっきり意見を言ったりするけど、自分を表現することがあたりまえで、奇抜なファッションやヘアスタイルなどに驚く時もあるけど
彼らは大切な人達への感謝と思いをとても大事している。
そんな、外国人が大切にしている事を聞いてみると、彼らとの距離感がぐっと近くなる。
大切にしている物などの、思い入れの深さを知ると、私達の見方も変わるし、外国人の対応も変わる。
大切にしている「こだわりの物」を聞いてみると、とても仲良くなれる。
京都が大好きで光華女子学園へ進学、卒業後、大阪の企業で経理課勤務。仕事が肌に合わず、夢だったイラストレーターを目指して大阪芸術専門学校へ。賃貸住宅ニュース雑誌社へ派遣社員として就職。その後地元へ帰り、地元のフリーペーパーやパチンコ店などのポスター制作するグラフィックデザイナー、ベジタリアン・ヴィーガンのお料理の先生、バンドのドラマー(ジャズ・ロック・軽めのフュージョンなどジャンルを問わず、地元ではセミプロとして活躍する。プロドラマー海野俊介氏に師事)、お琴奏者(趣味で名取まで取得)、演劇が好きで劇団にも少しだけ所属・・・など様々な経験を経て、英検3級しかありませんが、縁あって現在は、某施設で外国人担当のお仕事をしています。