海外のニュースを見ていると、日本のニュースではなかなか出会わない話題を目にすることがあります。
今回、イギリスの新聞『The Guardian』で見つけたのは、ちょっと面白い「会話」に関する研究です。
みなさんは、こんな経験ありませんか?
初めて会った人なのに、なぜか話が弾んで、あっという間に時間が過ぎてしまった。
反対に、共通の話題もあるし、お互いに話を合わせているのに、どうにも会話が盛り上がらない。
この違いは、いったい何なのでしょう?
実はアメリカの研究チームが、1,000件以上の会話を分析したところ、楽しい会話には、ある共通したパターンが見つかったそうです。
しかも、そのパターンは、男女がもう一度デートするかどうかにも関係していたというのです。
相手に合わせるだけではダメ?
会話を盛り上げるには、相手の話をよく聞いて、共通の話題を見つけることが大切。
そう考える人は多いと思います。
もちろん、それも大切なのですが、今回の研究では、少し違ったことが分かりました。
例えば、こんな会話。
A「最近、旅行に行ったんですよ」
B「旅行ですか! 私も旅行が好きなんです」
A「温泉に行ってきました」
B「温泉、いいですよね!」
A「料理もおいしくて」
B「おいしい料理、最高ですよね!」
お互いに話は合っています。
でも、これだけでは、なかなか話が広がりませんよね。
では、こんな会話ならどうでしょう。
A「最近、旅行に行ったんですよ」
B「どこに行ったんですか?」
A「箱根です。温泉がよかったですよ」
B「いいですね! 私、温泉も好きなんですけど、旅先の朝ごはんが楽しみで」
A「ああ、分かります! 今回も朝ごはんがおいしくて」
B「そういえば、海外のホテルの朝食って、日本とずいぶん違いますよね」
温泉の話から、朝ごはん、そして海外のホテルへ。
話題が少しずつ広がっていきます。
実は、研究チームが注目したのは、こうした会話の流れ方だったのです。
※上の会話は、研究内容を分かりやすくするための例です。
楽しい会話には「色」がある?
アメリカのダートマス大学の研究チームが発見したのは、楽しい会話に現れる「ピンクノイズ」というパターンです。
ピンクノイズ?
なんだか不思議な名前ですよね。
そもそも「ノイズ」とは、音や信号などの不規則な変動のこと。
その変動の特徴によって、ホワイトノイズ、ピンクノイズなど、色の名前で呼び分けることがあります。
今回の研究では、この考え方を人間の会話に応用しました。
研究チームによると、会話には大きく分けて、次のような違いがあります。
一つは、話題があちこちに飛んでしまう会話。
相手が話したことを受け止めず、次々と別の話に移ってしまう。
これでは、なかなか話がかみ合いません。
もう一つは、反対に、同じ話題や言葉を繰り返してばかりの会話。
お互いに話を合わせてはいるものの、新しい展開がなく、退屈になってしまうことがあります。
そして、その中間にあるのが「ピンクノイズ」のパターン。
同じ話題についてしばらく話し、そこから誰かが新しい話を持ち出す。
すると、もう一人がその話を受け止め、また会話が広がっていく。
話が合うことと、話が広がること。
その両方が、ちょうどよく繰り返されるのです。
もう一度デートするかも分かる?
今回の研究では、1,000件以上の初対面の人同士の会話を、AIを使って分析しました。
そして、会話の中にピンクノイズの特徴が強く現れているほど、参加者は、
「会話が楽しかった」
「もっと話していたかった」
「相手とのつながりを感じた」
と答える傾向があったそうです。
さらに、友人同士の会話でも、同じような関係が見つかりました。
そして、ちょっと面白いのが、スピードデートでの結果です。
スピードデートとは、短い時間で何人もの異性と会話し、気になる相手を見つける出会いのイベント。
研究チームがその会話を分析したところ、ピンクノイズの特徴は、その後、二人がもう一度会ったかどうかを予測する手がかりにもなったというのです。
会話の内容だけでなく、話題がどのように移り変わったかが、その後の二人の関係にも結びついていたんですね。
もちろん、ピンクノイズが多ければ必ず恋愛がうまくいく、というわけではありません。
それでも、会話の流れにそんな特徴があるとは、面白い発見です。
会話上手は練習で身につく?
では、この「ピンクノイズ」を意識すれば、誰でも会話上手になれるのでしょうか?
研究チームは、二人の司会者が会話するポッドキャスト番組も分析しました。
すると、番組を始めてから最初の50回ほどの間に、会話のピンクノイズの特徴が強くなっていく傾向が見られたそうです。
つまり、二人で会話を重ねるうちに、話題を広げたり、また戻したりする流れが生まれやすくなっていたのです。
研究者は、こうした会話の能力は練習によって伸ばせる可能性があると考えています。
ただし、今回の研究だけで、練習すれば必ず会話上手になると証明されたわけではありません。
それでも、普段の会話で試してみたくなりますよね。
相手の話にただ「そうですね」と合わせるだけでなく、
「それで、どうなったんですか?」
と少し掘り下げてみる。
あるいは、そこから思いついた別の話をしてみる。
そして、相手が興味を示したら、その話をまた一緒に広げていく。
そんな何気ないやり取りの中に、楽しい会話の秘密があるのかもしれません。
ただし、すべての会話が楽しく盛り上がればよいわけではありません。
悩みを打ち明けたり、悲しい出来事について話したりするときには、話題を広げることより、じっくり相手の話を聞くことが大切な場合もあります。
今回の研究は、あくまで「楽しいと感じる会話」の特徴を調べたものです。
それでも、会話の楽しさをAIで分析し、そこに「ピンクノイズ」というパターンを見つけたというのは、なかなか興味深い話ですね。
みなさんも、誰かと話していて「あっという間に時間が過ぎた!」と感じたとき、その会話がどんなふうに広がっていたか、思い出してみてはいかがでしょうか。
日本語のニュースだけを見ていると、なかなか出会わない世界の出来事。
そんな「英語がわかると、世界が広がる」ニュースも、これからお届けしていきたいと思います。
参考記事(英語)
The Guardian(2026年11月6日)
Want to have a better chat? Scientists say the secret is ‘pink noise’
https://www.theguardian.com/science/2026/nov/06/better-conversation-study-pink-noise
研究論文
Science Advances(2026年11月6日)
Pink noise in dyads’ semantic similarity trajectories predicts conversation enjoyment
https://doi.org/10.1126/sciadv.aeb2684

