「僕は大きな間違いをしていたかもしれない!!どうしよう!」
ある時、ベトナム人研究者から突然メッセージが送られてきた。
「僕より偉い日本人の教授なのに、苗字で呼んでしまったみたいなんだ」
とさらに送られてきた。
メールを読んでいるだけで、ベトナム人研究者の青ざめた顔が思い浮かんだが、日本なら逆じゃない?と思うところ
さて、なぜ苗字で呼んだら失敗だったのか?
今日は外国人の呼び方の感覚について不思議に感じたことをお話します。
海外のショータイム
1年前からこの施設で働いている、とても優秀な事務のプロフェッショナルな男性職員さん。
事務のお仕事は、ほぼ何をやっても完璧なのだが、こちらの男性事務員さん、英語と外国人が大の苦手らしい。
男性事務員さんが初めて施設内全員に向けて送った英語のお知らせメールには、
「Ladies & Gentleman」
と書いてあり、それを読んでかなり焦った私は、慌ててビジネスメールの書き方をお知らせした。
私達は「皆様へ」を「Dear All」という表現で示します。
英語にも、もちろんビジネスメールのルールがあるのだけど、基本的には日本語と同じ組み立て方。
「〇〇様→お世話になっております。→今日は〇〇(要件)でご連絡しました。→要件などの内容→よろしくお願い致します。→社名」
いたってシンプルだけど、外国人とのビジネスメールのやり取りの中で、私達には当たり前のある事を知人に話したら、ひどく驚いて大笑いされた事が一つある。
それは、外国人が「〇〇様」を書く時に必ず使う表現。
たとえば「佐藤様」の場合
「Sato-sanと書いてくるんだよ」と私が言ったとき。
「ローマ字でsanってつけるの?」と私の知人は大笑いした。
それが不思議な事だとは思ってなかったので、こちらが驚いた。
「〇〇さん」は言いづらい
外国人の研究者や学生が、メールに必ず「○○-san」をつけて送ってくるのは、彼らなりに最上級の敬意を示している。
実際に苗字に「さん」をつけて呼ぶことは絶対にない。
なぜなら「さん」は発音がしにくいから。
そして外国人同士でどんなに自分より偉い上司であっても、“sir”や”profeccer”をつけて呼んでいるのも聞いたことがない。
彼らはだいたいいつも「名前」で呼び合っている。
例えば、「山田たかし」さんで教授だったら、日本では総称して「山田先生」と言うけど
海外の研究者も学生もメールでは「Yamada-san」と書く。
呼び方は「TAKASHI」になる。
そして外国人同士のメールのやり取りになると、「名前」しか書いてこない。ここでもメールも呼び方も、苗字ではなく「名前」を使っている状況しか見たことがない。
どっちが苗字?
日本人の名前をみても、決して迷うことはない、苗字と名前!
外国人だと急に難しくなる。
彼らはいくつも名前をもっている。私は文字で見ているだけでは、彼らの両親がつけた名前はどれかわからない。
お互いを呼び合っている名前を聞いて、それが今彼らの両親につけてもらった名前なんだと、なんとなく判断している。
ある時、イギリス人留学生の女の子のお世話をすることになった時、はじめて本当の長い名前を見た。
そのイギリス人外国人留学生に、いくつかある名前の意味を聞いてみた。
イギリスは伝統が長く息づいている民族。彼女の場合は、おばあちゃんの名前で、その家の人達が先祖代々大切してきた名前を、覚えておきたくて、形にして残しているそうだ。
日本だったら、昔は家の主の名前を引き継ぐ習慣があったり、父の名前の頭だけを取って代々引き継いできたりした。その感覚に近いようだ。
よく自己紹介で外国人が言う、「○○と呼んでね」とは、自分で読んでほしい名前を使い分けているんだという事も聞いた。
職場はファーストネームで呼ばれているとしても、プライベートでは「自分が呼んでほしい方の名前」を使っているようだ。
苗字はなぜいけないのか?
ベトナム人研究者があるとき
「あの○○さんの苗字と名前は何?」と聞いてきた。
「苗字は○○で、名前は○○だよ」と私が返事を送ったら
ベトナム人研究者は、急に青ざめた様子をありありと出して
「僕は大きな間違いをしていたかもしれない!!どうしよう!」
「僕より偉い日本人の教授なのに、苗字で呼んでしまったみたいなんだ」
「なぜ、苗字がいけないの?」と私が聞くと
答えはシンプルで
「sanづけて呼ぶ事が出来なかったら、名前を呼び捨てにしていた。」
こんな風にベトナム人研究者は、返事をくれました。
ベトナム人研究者は、自分より偉い立場の日本人教授を「名前で呼び捨て」にしていたのだった。
確かに、それは私もかなり焦るだろう。
私はこんな風に返事を返した。
「大丈夫だよ、私達日本人は、外国人から呼び捨てにされるのには慣れてるから、そんなに気を悪くしてないよ。」
「そんな問題じゃないよ、でも謝っておくね。ありがとう」とベトナム人研究者から返事がきた。
私が日本人教授の名前を呼び捨てにして呼んでいたら、想像しただけで怖い。
外国人同士の間の順位は、日本人と少し違う。
日本だと、1.苗字にさんづけ 2.名前にさんづけ 3.とても仲良くなってから、〇〇ちゃんなどと呼べて 4.最後にやっと「呼び捨て」で呼ぶが来ると思う、呼び捨ても名前だろうと思う。
しかし、海外だと「さんづけで呼ぶ」という習慣がないので、むしろ日本の敬意の中の1.2.3.を全て飛ばして4.名前で呼ぶ というのが、親愛の意味を込めるのにふさわしい。
だからベトナム人研究者は、「名前」だと勘違いして「苗字」を呼び捨てにしていたのだ。
外国人と仲良くなる時に、彼らが感じている距離感は
○○さんと呼ばれるよりも、名前で呼び捨てにされる方が、より親近感をもってくれている。
親しくなりたい人だったら、自己紹介の時などに「名前」で呼んでね、と言ってしまおう。
彼らとの距離感はとても近くなる。
京都が大好きで光華女子学園へ進学、卒業後、大阪の企業で経理課勤務。仕事が肌に合わず、夢だったイラストレーターを目指して大阪芸術専門学校へ。賃貸住宅ニュース雑誌社へ派遣社員として就職。その後地元へ帰り、地元のフリーペーパーやパチンコ店などのポスター制作するグラフィックデザイナー、ベジタリアン・ヴィーガンのお料理の先生、バンドのドラマー(ジャズ・ロック・軽めのフュージョンなどジャンルを問わず、地元ではセミプロとして活躍する。プロドラマー海野俊介氏に師事)、お琴奏者(趣味で名取まで取得)、演劇が好きで劇団にも少しだけ所属・・・など様々な経験を経て、英検3級しかありませんが、縁あって現在は、某施設で外国人担当のお仕事をしています。