こんにちは
NYのKayoです。
ニューヨークに長く暮らしていると、毎年この季節に日本の友人からよく聞かれる質問があります。
「なんでアメリカの開票って、何日もダラダラかかるの? 日本みたいに『開票率数%』で当確出せないの?」
その気持ち、すっごくよく分かります! 日本の選挙速報って、選挙当日20時になった瞬間に「当確!」って出ることがありますね。でも実は、アメリカでそれができないのには、日本人には想像もつかない「超アメリカ的でユニークな事情」がたくさん隠されているんです。
今回は、現地からそのカラクリを分かりやすく解説しますね!
そもそも「全米共通ルール」が存在しない!
一番の驚きポイントは、アメリカには「全米一律の選挙ルール」が存在しないことです。
アメリカは「州の集まり」なので、選挙のルールも50州それぞれがバラバラ。
例えば「郵便投票」ひとつとっても、全有権者に自動で用紙が届く州もあれば、わざわざ申請しないとダメな州、理由がないと認めない州まで様々。
投票用紙の形も、開票手順も州ごとに違う。つまりアメリカの開票作業は全国一斉ではなく「50の異なるやり方での投票結果の集計」が同時に行われているんです。
「当日まで開封禁止!」州ごとの開票順ルール
なんと、全有権者に郵便投票用紙が自動で届くような、「郵便投票が当たり前」の州がいくつもあるアメリカ。その開票時期も重要なポイントです。その事態をややこしくしているのが、「開票を始めるタイミング」の違い。
例えばペンシルベニアなどの州では、法律で「投票日当日まで、事前に届いた郵便投票の封筒を開けてはいけない」と決まっています。
何百万枚という封筒を、当日の朝から一枚ずつ手作業で開封して、サインを照合して……なんてやっていたら、そりゃあ何日もかかりますよね。
逆にフロリダ州のように「事前に届いてる封筒をどんどん開封して準備OK!」という州もあります。この「準備作業のスタート地点の違い」が、開票のスピードに大きな差を生んでいるんです。
「2重封筒」との果てしなき戦い
中でも一番カオスなのが、この「封筒を開ける手作業」の過酷さです!
ペンシルベニアの郵便投票はプライバシーを守るため、なんと「外封筒」の中に「内封筒(秘密封筒)」があり、その中に「投票用紙」が入っている完全な2重構造。
選挙係員は投票日当日の朝7時になった瞬間から、数百万人分の外封筒を次々と切り開き、中の黄色い内封筒を取り出し、さらにそれを破って投票用紙を取り出します。これだけでも面倒なのに、折りたたまれた紙を1枚ずつ手でピン!と平らに伸ばして、ようやく集計機に通す準備が完了するんですって。
台帳とのサイン照合や日付の確認も含め、この一連の作業はすべて人間の手。いくら文明が進んでも、アメリカの選挙の命運を握っているのは、実は当日の、係員たちの指先のスピード、なんですね。
票の色が変わる!?「レッド・ミラージュ」の罠
日本だと「開票率20%時点の得票比率」を見れば、だいたいの勝敗が見えてきますよね。でもアメリカでそれを信じると、痛い目にあいます!とんでもない逆転がしょっちゅう起こるからです。
アメリカでは、民主党支持者は「郵便投票や期日前投票」を好み、共和党支持者は「投票日当日に投票所へ行く」傾向がとても強い、と言われています。
開票作業で「当日の票」から先に数える州では、最初に共和党(赤)の数字の波がぐんと伸びる。これが「Red Mirage / レッド・ミラージュ(赤い幻影)」。
でも深夜や翌日になって「郵便投票」の数字が出始めると、一気に民主党(青)の票の波が押し寄せて逆転する「Blue Shift / ブルー・シフト(青への移行)」が起きます。最初の20%の数字なんて、全くアテにならないんです。
「軽々しく当確を出せない」カオスだからこその面白さ!
「開票率20%の数字がアテにならないなら、じゃあ投票直後の出口調査で予測すればいいんじゃ?」と思うかもしれません。
でも大接戦の州では、そうとも言えないので、メディアも絶対に焦りません。
なぜならアメリカは、「大都市は民主党」「地方・農村部は共和党」という地域ごとの偏りが激しい、という有名な説があります。
日本の感覚だと「貧しい地方や労働者こそ、手厚い福祉や給付金をくれる民主党を応援するのでは?」と思いますよね。
でもアメリカの地方の人々(共和党支持者)は、「国からお小遣いをもらうより、自分たちの好きなやり方、伝統や自由な暮らしに国が口出ししないこと」を何より大切にする傾向があります。
そのため、小さな政府を掲げる「共和党」を支持。一方、多様な人種や若者、インテリが集まる大都市では、圧倒的にリベラルな「民主党」が支持される傾向があるんです。
そして、人口が少ない「地方」の票は開票が早く、巨大な「大都市」の票はあとから遅れてまとめて出てきます。「今リードしているのは地方の票ばかりで、これから民主党が強い大都市の票がドカンと出てくるぞ」と分かっているので、表面上の数字だけで当確を出すわけにはいきません。
だからメディアは、残りの票の「エリアや中身」を計算し尽くすまで、数日間じっと我慢をしているのです。
「ルールも開く順番もバラバラ」「住む場所や価値観で応援する党もバラバラ」。
一見カオスですが、この背景にある、アメリカ人の譲れないプライドや価値観のぶつかり合いこそが、選挙速報をドラマチックで面白くしている本当の理由なんですね。
次にニュースで「開票難航」と聞いたら、ぜひ「あぁ、あそこは封筒を開けるのが遅い州だな」「これから大都市の青い票が追いつくぞ」なんて裏側を想像しながら楽しんでみてください!
それではまた次回♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。

