赤レンガ色の壁で囲まれた巨大な「赤の広場」、カラフルでかわいい玉ねぎ帽子をかぶっているかのような「聖ワシリイ大聖堂」。
テレビでよく見るロシア モスクワの風景が目の前に広がる。
思っていたよりも一つ一つの建物がずっと巨大で、敷地は広大!地図上ではすぐ近くにあるはずの建物も歩いては回われない。
中国の天安門広場を思い出す。国土が広いからなのか、社会主義国だからできるのか、とにかく日本とはスケールが違いすぎる。全てがデカい!
そして、ロシアは私が想像していたよりも、建物は色鮮やかで、華やか。歴史的な建造物だけでなく、街中のレストランやお店などもスタイリッシュでおしゃれなお店も多い。
社会主義国だし、勝手に暗いイメージを抱いていたのだけれど、やっぱり行ってみないと分からないものだ。
モスクワの美しい街に魅了された私だったが、唯一、強烈な違和感を覚える事があった。
それは…
怒ってる?
その違和感は、レストランやホテルに入った時に特に強く感じる。
ロシア人は…
笑顔がない。というよりも無表情。
スラっとした長身にきれいな顔立ちのウェイトレスさんなのに、顔は無表情で「怒っているんですか?」と聞きたくなるほど。
寒い国の人たちは、あまり口を大きく開けたりしないというが、それでも同じく寒い北欧の人たちにはそんな違和感はなかった。
同じ社会主義国の中国でも、愛想は確かにないけれど、彼らはよくしゃべり感情を表に出すので人間らしいし良くも悪くも気持ちは伝わる。
でも、ロシアの人は本当に無表情で、感情さえもないように見えてしまう。顔が整っている分余計にロボットみたいで私は怖ささえ覚えた。
街のカラフルで明るい色彩の建物とのギャップが余計にそう感じさせるのかもしれない。
そんなモスクワでの夕食の時。観光中は現地ガイドさんが付いてくれるものの、夕食のレストランなどはドライバーさんのみになる。
その時は、旧市街にあるレストランでの食事。大きなバスは、旧市街の中には入れない。少し離れた所でバスを降り、歩いてレストランへ。
バスのドライバーさんは、さらに離れた駐車場にバスを停めてから同じレストランで別のドライバーさんらしき人と一緒に食事をしていた。
食事も終わりに近づき、デザートを待っている時。そろそろドライバーさんに出発時間を伝えて、バスを降りた所まで持って来てもわらないといけない。
私は食事をしているドライバーさんのテーブルへ向かう。
ロシア語わかりませ~ん!
すると、ドライバーさんの方から何やら話しかけてきた。
ドライバーさん:“〇▼※△☆△#◎★………”
私:「???」
目線は私を見ているものの、無表情で、ノージェスチャー。ロシア語のみ…。
ドライバーさんが添乗員に話しかける時は、たいてい「何時に出発する?」か「ご飯美味しかった?」くらいの物だ。
だけど、真顔でジェスチャーもなしでロシア語のみとなると、何を言いたいのか全く想像もできない。むしろ、「何か問題でもあった?怒ってるの?」と不安になる。
“No Russian” と私は首を横に振る。すると、横にいた別のドライバーさんらしき人と何やら話した後、私の方へ向き直り、
ドライバーさん:“〇……▼……※……△……☆……△……#……◎……”
子どもに話すようにゆーっくり話し出したのだ!だけど、それはロシア語!しかもまた無表情のノージェスチャー!(+o+)
え!これは初めてのパターン!
(いやいやいや。別に速くてロシア語が分からない訳じゃなくて、どんだけゆっくり言ってもらってもロシア語は一つも理解できないんですけど~!!!)
ドライバーさんで英語を話さない人は多い。けれど、たいてい、現地の言葉が分からないなと思ったら、ドライバーさんはジェスチャーで時計を指したり、時間を指で示したりしてくれる。
それでお互いに意思疎通ができるのだが、今回はロシア語のみのパターン!出発時間の事を言おうとしているのかさえも分からない。理解度ゼロ%!
彼の言おうとしている事は何か全く分からなかったが、仕方ない。自分の言いたい事をとりあえず伝えてみる。
私は、レストランの出入り口を指さし、その後、腕時計を指して、歩くようなジェスチャーをする。そして、バスに乗りたい時間を紙に書いて渡した。
じっと見ているドライバーさん。「伝わったかな?」と彼の顔を覗き込むもその表情は変わらず。
普通はここで「うん、うん」と頷いたり、Goodと親指を立てたりするのだが…それもない。
またしても、無表情、ノージェスチャーのままロシア語で何かを呟くように言って、ドライバーさんはレストランを出て行ってしまった。
「え?ドライバーさん!大丈夫だよね?ちゃんと伝わったよね?怒って出て行った訳じゃないよね?」伝わったかどうかの確信も得られず、不安になる。
食事も全て終わり、レストランを出てバスを降りた所へと歩いて向かう。その間も私は、バスがちゃんと迎えに来てくれているか不安でたまらない。「大丈夫だよね。来てくれているよね」自分に言い聞かせるように歩いて行く。
バスは…
ちゃんと降りた場所に来てくれていた。
「伝わってたんだ…。良かった。」
世界の共通言語は、英語じゃなくて…
表情もジェスチャーもなくて、言葉のみって、その言語を知らなかったら全く伝わらないんですね。ゼロです。ゼロ!
言いたい事どころか、相手が怒っているのかハッピーなのかさえも分からないんです。
あのドライバーさんは、もしかしたら親切なドライバーさんだったのかもしれません。普通のスピードで分からなかったロシア語を、2回目はゆっくり話そうとしてくれたから。
ただ、ロシア語が全く分からない私には意味のない事で、ドライバーさんの言いたい事も優しい気持ちも、言葉だけでは残念ながら全く伝わらなかったのです。
私達は言葉以外でも、相手の表情や動きから多くの情報を得ているという事がよく分かります。表情やジェスチャーは本当に大事!
そして、逆に言えば、言葉で伝わらない、または伝えられない部分は表情やジェスチャーでもカバーできるという事!
表情豊かに、身振り手振りで話せば言葉だけの時よりも何倍も伝わりやすくなるでしょう!
そして、もう一つ私が大事なんだと気づいた事は「笑顔」!
ロシアでは知らない人の前で笑う事はあまりないようです。それが分かっていてもやっぱり笑顔が見えないと「何か問題?怒ってるの?」と不安を感じてしまいます。国や文化の違いもあると思いますが、笑顔は人を安心させる大事なものなんだと気づきました。
高橋優さんの「福笑い」という曲の中で「きっとこの世界の共通言語は、英語じゃなくて笑顔だと思う」と言う歌詞があります。英語も大事だけれど、笑顔も大事!
マスク生活が長引き人々の笑顔が見えなくなってしまった現在は、余計にそう感じます。早くマスクをはずして笑顔で海外の人たちとも交流できる日が来るといいですよね!
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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