「“MANDARAKE”って最高なんだよ、知ってる?」と、イタリア人留学生の男の子が興奮して話しかけてきた。
私の答えは、「NO」。
すると、「“MANDARAKE”を知らないなんて!日本に住んでるのに!もったいない!」と。
彼は、無類の漫画好きで、特に「スポーツが舞台になっている日本の漫画」が大好きだった。
このイタリア人留学生の男の子、日本語を「話せない」、「読めない」、「勉強したこともない」
でも、日本語を理解することができた、不思議なお話。
日本の漫画大好き
入国の規制も緩んできた昨今、海外からの留学生と、出張してくる研究者が増え、以前日本に来ていた、昔の友人や顔なじみの研究者に会えて喜ばしい限りだ。
そんな中、イタリアから大学院生の男の子が留学生として召喚されてきた。
ある時、そのイタリア人留学生と、他の外国人研究者と、3人で食事をしながら日本の事を話した。日本の事に興味をもって、いろいろと質問するイタリア人留学生に、私は外国人に必ず聞く一つの質問をした。
「日本のアニメとか興味ある?」
「僕、日本の漫画、特に“スラムダンク”が大好きなんだ」とイタリア人留学生。
“スラムダンク”は、ご存じの方も多いと思いますが、日本の高校生のバスケットボール部を舞台にしたお話で、映画でも大人気の漫画。私も昔アニメで見たことがあって、よく知っている。
「僕はアニメも見たよ!ほかには、今なら“ブルーロック”とか、スポーツ関係の漫画が大好きなんだよ!」とさらにイタリア人留学生の男の子は饒舌に話し出した。
話を聞くとどうやら、彼の部屋は日本の漫画本が山積みになっているそうだ。
今回日本に来て、やりたい事の一つが、日本の漫画とアニメーションを直接体験することなんだと。
MANDARAKE
そしてある時、「“MANDARAKE”って最高なんだよ、知ってる?」と、イタリア人留学生の男の子が興奮して話しかけてきた。
私の答えは「NO」。
「“MANDARAKE”を知らないなんて!日本に住んでるのに!もったいない」とイタリア人留学生の男の子。
“まんだらけ“とは、東京中野にある、漫画を沢山置いてあるお店の事だった。私はまったく知らず、いろいろ教えてもらった。
イタリア人留学生の男の子は、“まんだらけ“に行った感動を込めて言った。
「日本の漫画をたくさん買ったよ!!!!!!!とてもたくさん!!!」
どれぐらいたくさん買ったのかと聞いたら、彼が言うには
「中野の駅前で、警察官に呼び止められたんだ!片言の英語で、どうやら僕の持っているリュックやバックの中身を見せろと言っているようだった。
僕は背負っていたリュックのファスナーを開けた。そして、両手に持っていたバックの中も開てけ見せたんだ。
そしたら、バッグの中が全部漫画本だとわかって、警察官は去って行ったよ!!」
「・・・・・。」
どうやら、イタリア人留学生の男の子は、漫画本でいっぱいになった、大きなリュックと、両手にバックを持っていたため、警察官に怪しまれ、職務質問をされてしまったのだった。
警察官に怪しまれるほどの量の漫画本・・・・。
どんだけ日本の漫画が好きなの!?と驚いた。
さらに聞けば、”まんだらけ”で漫画本を買った以外にも、いろいろなお店を回り、漫画本やアニメのグッズ(Tシャツなど)を買ったのだそう。
そんな彼がイタリアへ帰国するときには、漫画やアニメグッズ用に、中型の50リットルほどのスーツケースを1個、そして、それとは別に同じサイズほどの段ボールを1箱送っていた。
日本語がわかった!
こんな日本の漫画大好きっ子イタリア人留学生の帰国の日が近づいたある日。
ドイツ人チーフが、ささやかだけど送別会をしようと言って、ドイツ人チーフとイタリア人留学生と私の3人で送別会を開いた。
ドイツ人チーフがよく行く、こじんまりした居酒屋。古民家のような純和風な店内、釣りが趣味のマスターがメニューに並べるのは、おいしそうなお魚料理の数々。
お刺身盛り合わせを頼んで、運ばれてきた時、ドイツ人チーフが「イカのお刺身も食べたい」と。
私は店員さんに
「イカのお刺身も追加してもらえますか?」と聞くと。
店員さんは
「今お持ちしたお刺身盛り合わせの中に、イカが入っていますが、さらに追加されますか?」
と聞いてきた。
私はそれをドイツ人チーフに英語に訳しながら伝えているとき、一瞬「代わりに」って英語で何ていったっけ?と間が空いてしまった。
その瞬間、日本語がまったくわからないイタリア人留学生の男の子がすかさず、ドイツ人チーフに英語で状況を説明をし始め、そして私に
「この説明で合ってるよね?」と聞いてきた。
私は「Great!Looks like Japanese!」
すごい!日本人みたいに日本語わかったね!という意味を込めて言った。
イタリア人留学生の男の子は、本当にうれしそうな顔で、
「Got it! (やった!日本語わかった!)」と、拳を作った両手を天高く上げ、大喜びだった。
知っている事と理解できる事は違う
日本の漫画が大好きで、アニメが大好きで、日本語を読めないのに日本語の原作の漫画を欲しがり、英語の字幕入りのアニメを見ては感動している。
そんなイタリア人留学生の男の子にとって、「日本語がわかった」、という事は大きな喜びになった。
イタリア人留学生の男の子は、日本語を話せない、読めない、勉強したこともない。
なので、日本語の単語も文法も何もわからない。
だけど、その場の雰囲気で、店員さんの話の内容を理解していたのだった。
これは私にもよくある事で、以前イギリス人留学生が、イギリス訛りの強い英語で、とても早口で言ってきて、何を言っているのか理解できなかった事があった。
このイギリス人留学生は、大きな空の段ボールを事務室へ持ってきて、何かを必死に語りかけてきたので、なんとなく段ボールをどうにかしたいんだとわかった。
そして単語の中に「throw away(捨てる)」の言葉が一瞬聞き取れて、段ボールを捨てたいんだとわかった。
「Do you want to throw away it?(それ捨てたいの?)」と簡単な英語で私が聞いたら
イギリス人留学生は、「YES!Please help.(そうなんだ!お願い)」と。
英語の文法や単語を沢山知らなくても、コミュニケーションとして英語を使うことができる、と私は思う。
その場のシチュエーションによって、話の流れを理解できる時は多い。
会話の中には、その人のその瞬間の想いが強く入るので、私のbroken Englishでも、外国人はとても真剣に、時に大笑いして聞いてくれる。
そんな時、私はこの居酒屋でのイタリア人留学生の男の子みたいに、わかり合えた事がとても嬉しい。
英語を、文法や単語という感じでとらえるより、相手の気持ちを理解するツールとしてとらえると、お互い理解できた!という嬉しい感動体験がたくさんできると思う。
京都が大好きで光華女子学園へ進学、卒業後、大阪の企業で経理課勤務。仕事が肌に合わず、夢だったイラストレーターを目指して大阪芸術専門学校へ。賃貸住宅ニュース雑誌社へ派遣社員として就職。その後地元へ帰り、地元のフリーペーパーやパチンコ店などのポスター制作するグラフィックデザイナー、ベジタリアン・ヴィーガンのお料理の先生、バンドのドラマー(ジャズ・ロック・軽めのフュージョンなどジャンルを問わず、地元ではセミプロとして活躍する。プロドラマー海野俊介氏に師事)、お琴奏者(趣味で名取まで取得)、演劇が好きで劇団にも少しだけ所属・・・など様々な経験を経て、英検3級しかありませんが、縁あって現在は、某施設で外国人担当のお仕事をしています。