あなたは10時5分から始まる、NHK総合『キャッチ!世界のトップニュース』を見てますか?役立つし面白いので、私は結構見ます。
で、数日前放送の衝撃的なニュース。私が考えさせられたことを、ぜひあなたにお伝えしたいんです。
豪州で初めて行われた虐待調査の結果の報道。子供時代に虐待を受けたと6割の人が回答したらしいんです。3割弱の性的虐待に、育児放棄、言葉の虐待等色々合わせてですね。
正直すぐ(いくらなんでも?)という気がしました。幼児時代に6割の人が何らかの虐待を受けた、なんて直観的にどんなものでしょう。で、私の疑いの科学的な裏付けがどこかにあるだろうか?と調べたら…思わず「ヤッター!」でしたw。かなり確かな情報源が二つあったんです。
一つ目は米国の心理学者達の実験。以下のよう。
あなたは米国のスペースシャトルが離陸後爆発し乗組員全員が亡くなられた、全世界に生中継された1986年の出来事を覚えてますか?米国ばかりか全世界に衝撃を与えた事件。私も今でも衝撃の感覚が呼び起こされる気がするほど。
ところがすかさず、これを記憶の実験材料にしたのが心理学の教授二人。惨事の翌朝、大学生約40人に事故の報道に接した状況を質問。2年半後同じ人に同じ質問をして答えを比べたんですね。
あれほどの衝撃的な事件なら、記憶も2年たっても変わらない…と普通思いませんか?でも回答比較の結果は意外なもの。
実験者自身の言葉の引用です。
Their memory changed dramatically.
(彼らの記憶は劇的に変化していた)。
例えば「事件を知った場所、時間、誰から聞いた?」等のQ。ある人の2回分の答え。
結構違ってません?人生で一度のような大事件の記憶でも、これほど揺れる…しかもですよ。回答者は「あなたは自分で昔全然違うことを書いてますよ」と2年半保管されていた自筆の回答を目の前に出されるわけです。
すると「2年半経つとあんなショックでも記憶が薄れるのか」のような殊勝な反応は一部。多くの人は「今が正しく昔が間違い」と言うんだそうです。直後の記憶、自筆の方が確かでは?なんて言っても通じなかったんでしょうね。
この実験はこれ以降何度も引用され超有名になったそうです。
私自身この実験を知ったのは、別の本から。米国のリッチな精神分析家達は、依頼者の記憶の曖昧さにつけこんでいるという暴露本でした。
ともかく記憶のいい加減さを証だてるこの実験。信ぴょう性が高そう。
<【記憶】今の常識?>
情報源の二つ目は世界的な脳科学者イーグルマン博士。彼は数年前、英語圏で脳の特別番組を制作。6夜放送分をまとめた「The Brain」も国際的ベストセラー。冒頭近く彼が記憶の不確かさについて述べる最新の知見は、以下のようなもの。
「記憶が音楽CDとかドライブのように、一度焼き付けられ、それ以降そのまま変わらない…というのは全く誤ったイメージ。記憶というものは、思い出す度に組み替えられ作り直される。
人から聞いたことが実際に起きたことになる等、都合の良い作り変えが普通に起きる。ニセモノの記憶でも4分の1の確率で植え付けられる。その場合、本人でも本物の記憶と区別できない。」
これって本当ならすごくありません?この番組英語圏で大ヒット。「記憶」の常識が変わりつつあるのかも。
<再確認のハードル>
さてこの二つの信頼できそうな情報源に基づき、オーストラリアの虐待調査を見直してみましょう。
イーグルマン博士の発言にあった嘘記憶の植え付けの1/4成功という数字をちょっと目安にしてみます。そして調査の「全体の6割」に1/4の間違いが入っていたとすると…
そうすると6割×3/4=4割5分。6割の内、信ぴょう性の高いのは4割5分に減りました。
つまりオーストラリアでは何らかの虐待を受けた人の数は、全体の4割5分…本当のトコロは分かりませんが、少なくとも記憶の確実さについてフォローアップが必要な気がします。
たださっきの実験通り、証拠を見せられても、人に自分の記憶を疑わせるのはそもそも難しそう。ともかく、英語の二つの情報源のお陰で、ニュースを客観的な視点から眺められたのは確かみたい。
英語はまさに情報ライフライン。 英語を学び続ける価値はありますよね。
See you soon!
Jiro
<英語版>
知ってる内容を英語ルートで理解する。洋画で字幕を読んで英語を聞くように。
↓ ↓ ↓
英語版はこちらから☆
追記:
オーストラリアの調査:https://www.acms.au/findings/
情報源1.
◯The invisible gorilla
Christopher F. Chabris and Daniel J. Simonsp88- 89
https://amzn.to/4240Gb8
情報源2
◯The Brain: the story of you
David EaglemanPantheon
https://amzn.to/41Tbx88
◯あなたの脳のはなしデイヴィッド イーグルマン (著)
https://amzn.to/41QKha9
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員