「すみませーん!」
お店のレジなどで店員さんがいなかったときに,
このように呼ぶことがありますよね。
先日,テレビでとある番組を観ていた時のこと。
海外の飲食店でタレントが注文しようとして,少し離れたところにいる店員さんに対して,
“Sorry, sorry~!”
と叫んで呼んだのです。
ああ,これ私もやっていたなぁ。と懐かしく思ったのですが,
これには2つほどあまり好ましくないことがあるのです。
あなたは,それがわかりましたか?
―すみません―
留学したての頃,
学校で学習した英語がメインで,実際に使われる英語をあまり知らなかった私は,
いつも人に話しかける際に
“Sorry”
と言って声をかけていました。
日本語的な感覚では,
「ちょっとすみません。」
ですよね。
なので,そう思って使っていたんです。
本来であればこのような場合は,
“Excuse me.”
を使うのですが,最初の頃は知らずに使っていたんです…。
さて,この “sorry”と “excuse me”,実はとっても奥が深くてややこしいんです。
ですので,今回は「大まかな感じ」が少しでも掴めるようにお話しようと思います。
―”Sorry.”―
私たち日本人は,「すみません」という言葉を日常的によく使うのだそう。
1.「すみません,注文をお願いします。」
2.「すみません,資料を持ってくるのを忘れてしまいました。」
3.「すみません,ちょっとよろしいですか?」
4.「お土産までいただいてしまって,本当にすみません。」
それぞれの「すみません」を使う場面を考えると,状況によって微妙に違うと思いませんか?
「すみません」と聞くとまず思いつくのは「謝っている状況」。
上記で言えば,
2.「すみません,資料を持ってくるのを忘れてしまいました。」がそのイメージです。
対して,
1.は飲食店などで店員さんを呼ぶ場合。
3.は,特定の人に対して話しかける場合,
4.は,感謝する場合。
このように,同じ「すみません」でも実は使う状況に応じて意味が違うんですね。
でも,これら1.〜4.に共通するのは
・仕事中に,私のために呼び止めてしまって申し訳ないという「すみません」。
・突然話しかけてしまって申し訳ない,という「すみません」。
・いつもお気遣いいただいて申し訳ないという「すみません」。
状況に応じた呼びかけや感謝ではあるものの,
その根本には「申し訳ない」という気持ちが隠されているように思うのです。
だから店員さんを呼ぶ時も,お忙しいところすみません,という意味を含めて “Sorry”と言ってしまうのかもしれません。
しかし,英語の“sorry”の基本的な意味は,
「謝罪」や「残念な気持ち」を表すこと。
例えば,
I’m sorry I couldn’t get your call. (ごめん,電話に出られなかったよ。)
I’m sorry it was my fault. (ごめんなさい,それは私のせいです。)
などのように自分が悪かったり,迷惑をかけてしまったりのように「詫びる気持ち」のときや,
I’m sorry for your loss. (お悔やみ申し上げます。[亡くされたこと,残念に思います])
と,お悔やみ等,「残念に思う気持ち」を表す場合に使うんです。
つまり “sorry”を使う場合は,「心苦しく,後悔や残念な気持ち」の場合なんですね。
ですので,お店で店員さんを呼ぶ時など,つい “Sorry.”と言ってしまいがちですが,
謝罪や残念な気持ちを表しているわけではないので,この場合は,“Excuse me.” を使うようにしましょう。
― “Excuse me.”―
“Excuse me.”と言うと,「失礼します」と訳す人も多いと思います。
でも,これこそが謝罪以外で私たちがよく使う「すみません」に近いのです。
“excuse”とは,「言い訳をする,許す」という意味が主なイメージ。
“Excuse me.”は,極端に言えば「私を許してくださいね」というニュアンスを含んだ
「すみません。」となるんですね。
なので,人に話しかける場合は「突然話しかけるけど,ちょっと許してくださいね」くらいの感じで,
“Excuse me. Can I ask you a question?” (すみません,質問してもいいですか?)
となり,
お店で注文をお願いする場合も,
「お忙しいところ,あなたの仕事を中断させてしまうことを許してくださいね」
を含んだ「すみません」で,
“Excuse me. Could you take our order?” (すみません,注文よろしいですか?)
となるんですね。
人にお願いしたり話しかけたりする際の「すみません」は(心を痛めて謝るのではなく),
(ちょっとお時間を頂戴しますが)くらいの感じで,
“Excuse me.”
を使うようにしましょうね。
―とは言うものの…―
日本では,飲食店などで店員さんを呼ぶ時,近くにいるスタッフの方に
「あ,すみませーん!」
と,ちょっとだけ大きめの声を出して呼ぶことがありますよね。
先程,英語で店員さんを呼ぶ時は “Excuse me.”だと言いました。
言いました,が,が! ですよ!
欧米などでは,店員さんを大きな声で呼ぶことはあまりマナーが良いこととされていません。
通常は,そっと手を挙げて店員さんに知らせたり,アイコンタクトして「お願いします」と小さく手を挙げたりして呼びます。
テイクアウト専門店や,レジカウンターだけのお店で店員さんがいない場合は
“Excuse me.”
と言って全く問題はありませんが,レストランなどテーブルについて食事をするようなところでは,日本のように声を出して呼ぶことはなるべく避けましょう。
そっと手を挙げて,店員さんと目があったら口パクのように
“Excuse me.”
というのはアリですけどね(笑)
そもそも,基本的にレストランはテーブル毎にサーブするスタッフが決まっているので,自分たちの担当以外のスタッフを呼ぶことはNGです。
ほとんどの場合,担当のスタッフの方が自分のテーブルを気にかけてくれているので,呼ぶこともあまりないかもしれません。
さ〜て,冒頭に訊いた
「2つの好ましくないこと」。
あなたはもうおわかりでしょうか。
そう,店員さんを呼ぶ時の “Sorry”は,謝罪や残念な気持ちではないので❌。
そしてもう一つ,飲食店等で店員さんを呼ぶ時は大きな声で呼ばず手を挙げる,です。
私も「すみませーん!」と呼ぶ方法がすっかりとプロ級に板についてしまっているので,海外に行った時には気をつけねば!
今回もちょっとだけでもお役に立てたなら幸いです。
それではまた来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。