コロナ禍も少し落ち着いてきて、街の賑わいが戻ってきたような感じがします。
クリスマスが終わり、アッという間に、街は新年を寿(ことほ)ぐ雰囲気になりました。
キリスト教国では、公現祭(エピファニー:Epiphany)の1月6日までは、クリスマスの飾りつけが街で見られます。
日本は宗教ではなく、季節のイベントと商戦に乗せられてクリスマスがあるのを実感します。
例年、Swatchもアメリカ人の友人に誘われて、米軍施設のホテルに、クリスマス・デイナーに行きます。正装した軍人とともに、美しく着飾った夫人たちが会場を華やかに彩ります。
デイナーの後、顔なじみのマネージャー氏が笑顔で見送ってくれます。
“Merry Christmas!” とマネージャー氏に声を掛けて、会場を後にします。
“Happy Holidays!” それに呼応して、マネージャー氏が笑顔で応えます。
「え?Merry Christmas! じゃないの?!」
<Merry Christmas!って言わなくなった!?>
例年、“Merry Christmas!” と言うと、“Merry Christmas!”と返ってきたのに、今年はどうしたのだろう?
キリスト教徒ではないので特に問題はないのだけれども、不思議な感じだ。「今なんて言ったの?」と、振り返って聞くわけにもいかず、そのままホテルを後にしたが、疑問が残る。
さっきまで一緒だった、友人にメールしてみると、すぐに返信がきた。米軍施設では、「最近は”Happy Holidays!”と顧客対応する」らしい。
米軍では、兵士が信じる宗教は、様々。キリスト教以外の宗教では、クリスマスを祝うことはありません。すべての人に対して平等にという考え方が、最近は基本になっているという。
ホテルに来る客は、信じる宗教の名札を付けているわけでもないので、万人にお祝いの意味を伝えるという理由で、“Happy Holidays!”と挨拶をするそうです。
最近は、アメリカでは、公の場、ホテル、レストラン、劇場や会議やセミナーなどの場では、”Merry Christmas”は、言われなくなっています。ちょっと残念ですね。
アメリカ人に聞いたところ、友達同士では宗教に関係なく“Merry Christmas”と言うそうです。
そこでもう一つ疑問が湧きました。“Happy Holidays”は具体的にいつ頃なの?ということです。
最初に、クリスマスツリーの飾る最後の日を書きましたが、クリスマス関係の宗教行事が始まり、公現祭の1月6日*までを、”Merry Christmas & Happy New Year!“で表現します。
“Happy Holidays”もそれに準じて、クリスマスから公現祭までを言います。
*日本やアメリカでは、礼拝者が参加しやすくするために次の土日を含めるところもあります。
<イギリス女王陛下は、“Merry Christmas!”って言わない?>
イギリスでは、毎年国民は、エリザベス女王陛下のクリスマスメッセージを楽しみにしていました。女王最後のクリスマスメッセージ2021は、次のような言葉で締めくくられていました。
“It is in the spirit that I wish you a very happy Christmas!”
「幸せなクリスマスをお過されるよう、心から祈念しております!」
でした。
“It is in the spirit”「心の底から」
“I wish you ” 「国民の皆さんのために祈っていますよ」
“a very Happy Christmas” 「素晴らしく幸せなクリスマスを」
一つ一つのフレーズが身に沁みますね。女王の威厳と優しさが感じられます。
このように英王室は“Merry Christmas!”の代わりに、“Happy Christmas!”を使っています。
もともと移民が多く、マルチカルチャーを容認する国であるイギリスは、オフィシャルな表現に気を使っています。また、言葉へのこだわりがある国でもあります。
“Merry” の意味には、「酔っぱらった」という意味も含まれており“Merry Christmas!”は、「酔っぱらいのクリスマス」とも解釈でき、子どもに向かって言うのは不適切ということで、“Happy” を使うそうです。
そこまでこだわりますかね。でも、イギリス人らしい感じです。イギリス人らしい感じは、「イギリス英語と京都弁の共通点」を読んでいただくと分かると思います。
今まで使ってきた“Merry Christmas”を “Happy Christmas”に変えるのも、国を変えていこうという大きな機運があるように思います。
<Political correctness:政治的正当性:>
最初に、米軍施設のホテルマネージャーが、お客様に対して“Merry Christmas!”を”Happy Holidays” と言っていたことを書きました。
お客様を平等に、差別のない言葉でコミュニケーションすることを、政治的正当性(ポリティカルコレクトネス あるいはポリティカルコレクト)といいます。
まだまだ、日本では耳新しい言葉かもしれません。日本では放送禁止用語という形で耳にすることがあるかもしれません。
一番進んでいるのが、やはりアメリカです。人種差別廃止という運動から、「黒人:negro」の呼称を、African Americanという呼び方に変えたのは有名です。
アメリカでは、~系アメリカ人(例 日系人:Japanese American)ですが、イギリスでは、なんとBritish Japaneseで,日系イギリス人です。もともとの民族を尊重するということでしょうか。
これはまた、次のお話のトピックとしたいと思います。
最近の流れとしては、国連のSDGsの概念である「誰一人取り残さない」、
”No one left behind!”が、こういった新しい文化を後押しをしている感じです。
変わらないと思われた季節の表現も、政治や社会の考え方の変化で、変わっていきます。
そんな情報を知ることで、英会話の勉強も楽しくなり、さらに英語表現に磨きがかかります。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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