令和4年ももうすぐ終わり。
つい先日,「令和」という年号が発表された気がするのですが,
もう令和5年。
先日,テレビから聞こえてきた言葉,
それは
「平成レトロ」。
昭和レトロならわかるのですが,もう平成もレトロとは。
ところで,古いものを表す語には,
“retro”(レトロ)
“vintage”(ヴィンテージ)
“antique”(アンティーク)
等がありますが,
あなたはこれらの違い,わかりますか?
― “retro”とは?―
「平成レトロ」。
確かに平成は31年まであったので,平成初期は昭和の名残も色濃く残っており,
「レトロ」というのもわかります。
でもやっぱり「昭和レトロ」の方がまだしっくりくるんですよね。
そんな「レトロ」ですが,今の若い人たちの間ではそれ逆に新鮮なのだとか。
昭和のアイドルの髪型や衣装でブロマイドを撮ったり,
昭和の喫茶店のクリームソーダやプリン・ア・ラ・モードなんかを食べたり。
埼玉県所沢市にある「西武園ゆうえんち」にも,昭和の商店街を再現した「夕日の丘商店街」なるものがあって,とても賑わっているそう。
そんな古くて郷愁を誘うレトロですが,同じく古いものを表す単語に
“antique”(アンティーク)
“vintage”(ヴィンテージ)
もありますよね。
フリマアプリなどに出品されている古いものの説明を読んでいると,どれも同じように使われていたりします。
でも,実はこれ,ちゃんと使い分けがあるんです。
まずは王道の「レトロ」 “retro”。
“retro”という言葉は,ラテン語の接頭辞に由来し,その意味は「後方,過去の時代」。
また,「古いものの【趣】がある」ことを指しています。
古いものの【趣】」とはどういうことでしょう?
昭和に流行ったオレンジや黄色,緑の色の花柄の電気ポットやコップ。
鍋にも花柄なんてよくありましたよね。
「そういえばあったよなぁ。」
と懐かしく思われる人は私だけではないハズ(笑)
しかし現在,そのような昭和のデザインの商品が若い人たちにとても人気なんですって!
おっしゃれ〜な雑貨屋さんなどでもよく売れているそうなんです。
でもそこに売られてる商品は,40年も50年も前に作られたものとは限りません。
ほとんどは最近作られたもの。
色・形・趣など,昔のデザインを再現して売られているのです。
Cambridge dictionary で “retro” を調べてみると,
“similar to styles, fashions, etc. from the past:”
(過去のスタイル,ファッションなどに近いもの)
と説明されています。
つまり, “retro” という単語には,
「古い趣を持たせ,ノスタルジーを感じさせる昔風のもの」
という意味合いが含まれているのですね。
― “vintage”は?―
“vintage”というと,よくジーンズやワインなどで使われていますよね。
それもそのはず。
もともとは「ワインの収穫年」を意味する語だったんですって。
質の良いぶどうが収穫できた年のワインは
「当たり年のワイン= “vintage wine”」と呼ばれ,
そこから
「上質なもの」「古くて価値のあるもの」
にも使われるようになったのだとか。
特に,「古くて価値のあるもの」という部分が一般的になったのかもしれませんね。
英英辞書で “vintage” を調べてみると,
“produced in the past, and typical of the period in which it was made:”
(過去に作られた,その時代の典型的なもの)
とあります。
「古く価値のある年代物」を指すのですが, “retro” との違いは
「古いものを模倣して作ったのではなく,その時代に作られた物そのもの」
であるということ。
そして,だいたい10〜100年前くらいの物のことを言うそうです。
― “antique”は?―
“antique”を調べてみると,
“something made in an earlier period that is collected and considered to have value because it is beautiful, rare, old, or of high quality:”
(美しく,珍しく,また古く高品質であるという理由で収集され,価値があると考えられている,より古い時代に作られた物。)
とあります。
だったら,「 “vintage”もあまり変わらないんじゃ?」と思いますよね。
でも違うんです。
日本語では,「アンティーク」「ヴィンテージ」は同じように使っている感じがありますが,
英語での “antique”はその定義が法律で定められているのです。
1930年に定められたSmoot-Hawley関税法では,
「陶器,磁器,芸術的古美術品,及び1830年より前に製造された装飾的,または教育的価値のある物」
と制定されています。
これは,当時の人々が収集していた骨董品,ビンテージ品などを区別することを目的として定められたそう。
つまり,製造されてから100年以上経過しており,美術品として収集する価値のあるものが “antique”となるそうなんです。
これが現在も欧米諸国では基準となっているのだとか。
このことを知らずに,
“I have some antique plates from the end of the Showa period.”
(私,昭和の終わりのアンティークなお皿をいくつか持ってるよ。)
なんて言ったら,
“Those must be vintage.”
(それはヴィンテージでしょ。)
って反論されかねませんね。
私,そんなに古いものは持っていないのですが,
小学生だった頃の「コロコロコ○ック」2冊と,
大正12年の英語の教科書 「NEW CR○WN」を持っております。
コロコロ…は,まだまだヴィンテージ?(笑)
英語の教科書は,来年でちょうど100年!
ということは,これ, “antique” になるのでしょうか。
やっぱり陶器とか家具じゃないから,アンティークにはならないのかな。
あなたはどう思います?
ということで,また来週〜!
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。