私の本業は英語の教材制作。
現在も中学生や高校生向けのものを制作しております。
その際,実際に先生や生徒さん達が使っている現行の教科書や問題集などを見て
テストや入試で扱われる「英語」を把握しておく必要があります。
しかし,その時いつも思うことがあるのです。
それは,
「日本語英語だなぁ。」
ということ。
もちろん文法的には正しいし,通じない英語ではありません。
でも,ナチュラルではなかったり,
それ以上に「ちょっと失礼」な文章もあったり。
今回は,そんな英語を紹介します。
―「思います」は,思っている時だけにして!―
日本人はとかく,
「これから○○を始めたいと思います。」や,
テレビのレポーターなども,
「では,あちらの方を早速見てみようと思います。」
などのように,
「〜思います。」
という表現を使います。
これは日本人からすると,とてもナチュラルで何も違和感を感じません。
日本人にとって「〜思います」は,単に「頭の中で思う」の他に,
状況によっていろいろな意味に変換できる言葉です。
例えば,最初に述べたレポーター発言,
「では,あちらの方を早速見てみようと思います。」の「思います」は,
「行動に移します」の意味で述べられています。
また,
「将来,私は英語の先生になりたいと思います。」というのは,
「英語の先生になりたいと『決意しています』」であり,
「今年は良い年になると思います。」は,
「今年は良い年になると『願っています』」という
「状況によって違い意味」が実は隠れているのです。
これらのことを踏まえずに,ただ日本語をそのまま英語にして,
「今日は,私の将来の夢について話そうと思います。」
“I think I’m going to tell you about my future dream.”
のような英語がときおり出てくることがあるのです。
もちろん,文法的には全く間違いではありません。
でも感覚的に,
「これから話すのに,『思います』って言うの?」とネイティブには少し疑問に思われるかもしれません。
英語で,“I think ~.(私は〜と思います)” というのは,
「確信は持てないけど,私はそう思う(わからんけど)」のようなニュアンスが含まれており,
“I think I’ll tell you about my future dream.”
なんて言われたら
「私は,自分の将来の夢について話そうと思っていますが,まだ話すかどうかわかりません。」
のような意味合いでとられかねないのです。
ここは, “I think”なんてつけずに,
“I’ll tell you about my future dream.”
(私の将来の夢について話します。)
それだけでいいのですね。
“I think…” と言うときは,自分の考えや思っていることを言うときに使う方が誤解されずにすむかもしれません。
―ちょっと失礼じゃない?―
数年前,アメリカにいたときのこと。
友人と一緒に車で移動していたのですが,その際に運転の危うい車がいました。
「ちょっと危ないなぁ〜。」と思ってつい
“Hey, look. She’s driving like crazy.”
(ちょ,ちょっと見てよ。彼女の運転超危ない。)
すると友人が
“Which one?”
(どれ?)
と聞いてきたので,
“That old lady’s car!”
(あの年配の女性の車だよ!)
と答えた際,友人が一言
“OLDER!”
と言ったのです。
そして続けて,
“Cozy, watch your mouth. Just be polite!”
(コージー,口が悪いよ,丁寧にね!)
と笑いながらですが言ってきたのです。
さて,みなさん!
一体,どこが悪かったかわかりますか。
ふふふ
勘の良いあなたならわかりましたね。
そう, “old lady”です。
「年配の女性」と言ったつもりが “old lady”(年寄りの女性)のような感じで言ってしまったのです。
“old”は,そのまま「古い,年寄りの」などの直接的な意味となるため,
この場合は友人が言ったように
“older lady” (目上の女性)と言ったほうがいいのです。
でもこれであれば,「年上」ということしかわかりません。
より「年配の」ということを丁寧に言いたいのであれば,
“elderly”を使った方がいいのです。
こう言うとわかりやすいかもしれません。
“an old man” (年とったおっさん)
“an older man”(年上の男の人)
“an elderly man”(年配の男性)
“man”はすべて同じですが,前にくる表現だけで受け取られるニュアンスがこのように変わってくるのです。
おもしろいですね。
―ニュアンスも一緒に学習したいもの―
“old” (古い,年寄りの)
“older” (目上の,より年をとった)←oldより丁寧
“elderly”(年配の,年老いた)←oldよりずっと丁寧で70代以上くらいのイメージ。
についてご理解いただけましたでしょうか。
実は,この話を思い出したきっかけは高校入試の英語なんです。
実際に出題されたものですが,読解問題でこの “old”が出ていたのです。
その話は,
「とある公共施設で,大きな声でおしゃべりをしている若い人たちに勇気を持って注意した年配の女性」のお話。
文中には, “old woman”という表現がたくさん出てきます。
本来ニュアンスとしては,「婆さん」が近いかも?しれません。
そして最後には,
“I think that old lady was great!”
解答の訳には,「私は,そのおばあさんは素晴らしいと思います。」とあります。
しかし,ここはお気づきの通り,
「私は,その「ばあさん」は素晴らしいと思います。」
というニュアンスになってしまうのです。
ここは,
“elderly woman” (年配の女性=おばあさん)にしたいところ。
“elderly”が難しければ,中学2年生で学習する “older”でも良いのです。
それをそのまま, “old woman”にしてしまうあたり,
「日本語英語だなぁ…。
この辺りの意識を変えていかないと
これから先も日本語のまま訳してしまう英語が増え続けてしまうよなぁ。」
と感じる秋の夜長なのでした。
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。