こんにちは
NYのKayoです。
今年のUSオープンのお話をするなら、まずはバスケットボールから始めたいと思います。
え? テニスの話なのに、なぜバスケ?
でも、これが今年のニューヨークを語るには、とっても大事なことなのです。
というのも、今年の6月、New York Knicks(ニューヨーク・ニックス)が1973年以来、なんと53年ぶりにNBA(全米プロバスケットボール協会)チャンピオンになりました。
もうニューヨーカーの大騒ぎ&喜びようといったら大変なものです。
街中が「KNICKS!」で最高潮に盛り上がり、そのバスケットボール熱が冷めないまま、USオープンの季節がやってきました。
しかも、ちょうどニューヨーク・ファッションウィークの時期。
そこで今年のUSオープンでは、Nikeがバスケットボールを思わせるテニスウェアを提案し、選手たちも次々に取り入れました。
つまり今年のニューヨークでは、「テニスだけど、ちょっとバスケ」。
これが一つの流行になったのです。
そこで大坂なおみさん登場
そんなところへ登場した大坂なおみさん。
いやあ、やってくれました!
初戦のコートに現れた彼女を見て、「あら、今日はテニスじゃなくてファッションショー、特別イベントなの?」と思った人もいたかもしれません。
白いチュールのロングスカートに、新聞記事や写真をあしらったフード付きのローブ。そして髪型は、NBAの伝説的選手アレン・アイバーソンを思わせるスタイル。
ローブを脱ぐと、今度は黒いバスケットボール風のウェアです。
実際の大坂さんの姿はこちらで見ることができます。
USオープン公式サイト
「Naomi Osaka makes 2026 US Open fashion statement with all-white look」
これは、ただ「派手な服を着てみました」という話ではありません。
ニューヨークのバスケ熱、Nikeの今年の流れ、そして大坂さんが尊敬するアイバーソンへのオマージュ。その全部を、テニスコートの上で一つにまとめて表現したのです。
でも、世の中はそう簡単ではありません
もちろん、「素敵!」「カッコいい!」という声だけではありませんでした。
「ここはランウェイじゃなくてテニスコートでしょう」「試合に集中したら?」という批判も出ました。
テニスには長い歴史と伝統がありますから、スポーツ選手には「スポーツ選手らしい格好」をしていてほしいと思う人もいるのでしょう。
また、大坂さんは以前、メンタルヘルスや世間からの過度な注目について率直に語ってきました。
そのため、「注目されたくないと言っていたのに、こんなに目立つ服を着るの?」という、ちょっと意地悪な声まであったようです。
嫌われても、私はやります
でも、ここからの大坂さんが、私はとても好きなのです。
批判されても、「みんなに好かれなくてもいい」という、とても潔い態度を見せました。そして、自分が最初に何かをやることで批判を受けても、それによって次の世代のアスリートたちが少し自由になれるのなら、それには意味がある、という考えを示しているように思えます。
考えてみれば、メンタルヘルスについて声を上げたときも、大坂さんは「最初にやった人」だったのかもしれません。
なので、今回も、きっとそうなのかも。しかも、あのローブに縫い付けられていた新聞記事は、これまで彼女について書かれてきたニュースや報道なのだそうです。
つまり、「あなたたちが書いた私のストーリーも、全部まとめて私の一部よ」と、ファッションにしてしまった。これは、なかなかカッコいいではありませんか。
USオープンは、勝敗だけじゃない、と思いたい
今年のUSオープンは、男子がドイツのアレクサンダー・ズベレフ、女子がカザフスタンのエレナ・リバキナの優勝で幕を閉じました。
リバキナは2連覇中だったアリーナ・サバレンカを破って、初めてUSオープンのタイトルを手にしました。そして大坂さんは4回戦で、そのリバキナに敗れました。
でも、私は今年の大坂さんを「4回戦敗退」という結果だけで見たくないのです。
バスケットボールで沸き返るニューヨーク。ファッションウィークで街中が華やぐニューヨーク。
その真ん中で、大坂さんは自分が尊敬するアイバーソンを身につけ、自分の過去の報道まで衣装にして、堂々とテニスコートに出てきました。
スポーツ選手だって、勝つためだけに生きているわけではないのかも。好きなものを着て、好きな人に敬意を表して、自分らしく楽しむことだって、きっとその人の人生の大切な一部分。
「みんなに好かれなくてもいい」。
ニューヨークという街は、そういう人が案外、よく似合う街なのね。
何しろ、みんなが同じ格好をしていたら、ニューヨークではちょっとつまらない。
大坂なおみさん、今年もちゃんとニューヨークらしい風を吹かせてくれました。
ほんとにかっこいい女性です。
それではまた次回♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。

