アメリカの社会は、メッセージを効率よく伝えるために、略語や頭字悟が多く使われます。前回紹介した「最近気になるアクロニム」も略語もその一例です。
それぞれの企業、業種、職種などによって、特定の略語や頭字語が使われており、概念や技術の特殊用語を覚えることが仕事の優先事項になります。
日本語のメールを書く時にも、仕事上のこととなると失礼がないように気を使いますね。英語でメールを書くときには、それ以上に気を使います。
英語のメールで、略語や頭字語は、どう使っていいのか少々迷います。あなたに来たメールの文頭に、“Dear all concerned, FYI” と書かれていた場合、あなたはどう反応しますか。
<Dear all concerned, FYIは、どういう意味?>
“All Concerned”は、「関係者各位」を表します。
手紙、通知、メールなどで、一斉に複数に人に呼びかける敬称です。
通常、メールの最初には宛名が来ます。複数の場合も、一人一人の名前を明記して、誰にあてたものかを明確にします。
All Concernedを使うことによって、ある特定の事柄に関係している複数の人に文書やメールをおくる宛名にすることができます。
All concernedは、“To whom it may concern”(関係する人宛て)というフレーズが原型になっています。それを縮めて“all concerned”になります。
Dear all concernedは、Dear(親愛なるなる)がついていますので、少し丁寧な感じがします。
ビジネスでは、All Concernedで十分です。「関係者各位、関係各位」と引き締まった感じがします。
さらに、“FYI”と略語で記されています。
それはメールの目的を端的に表した言葉なのです。
FYIは、For your informationの略語で「あなたに(耳寄りな)情報を提供します」で、文頭にそのまま書けば良いのです。
ビジネスレターなどに、やさしさを求める人はいません。シャキッとビジネスライクにあなたの言いたいことが手短に伝われば、用は足ります。
日本の手紙及びメールには、時候の挨拶が最初に書かれ、そのあとに「お世話になっております」など、相手に対するへりくだった表現が良く見られます。
そんな時に、“Thank you for your efforts ”(お世話になっています) と書いても相手には伝わりません。英文のメールなどには、そういったフレーズは必要ありません。
<どうやったら相手に読んでもらえるかの工夫が肝>
英文が、ぎっしりと書き込まれたメール、あなたは読む気になりますか。
米軍では、BLUF(Bottom Line Up Front!)という考えがあります。
最後に書かれている結論を、最初にもってくるという理論です。
そうすれば、最初の数行で結論が理解できるのです。
まずこの考え方を、真似してみましょう。さらに、それに略語を組み合わせることによって、さらに読みやすく、一瞬で内容が推測できるようになります。
そこで、情報提供をしたい場合に、トップにメールの略語のFYIをもってきます。
“For your information”
(ご参考にために情報を提供します)
です。
耳寄りな情報、お得なイベントなどの情報を提供すると予告することで、読み手に期待感が生まれます。「良い情報を提供するよ」といった意図が、最初の一行で伝われば功を奏します。
レターの最初に、“FYI”と打ち込めば、その略語だけで、相手に「どんな情報何だろう」としたワクワク感を与えることができます。つまり、読んでもらえるメールになります。
あなたは、メールの相手の顔を即座に思い浮かべ、どんな内容だろうとワクワクすると思います。“FYI”はビジネスメールでも、非常に役に立ちます。
さらに、何かを知りたいときに、相手に情報を催促する場合もあります。
その際には、
ASAP( as soon as possible)
を使うと便利です。
ASAPは、日常の会話の中でも良く使います。「アサップ」、または「エイサップ」と読みます。「できるだけ早く、可能な限り早く 、最優先で 、一刻も早く 、大至急 、なるはや」という意味です。
例文をあげると、
“Let me know ASAP”
(できる限り早く、お知らせください)
となります。
日常会話の中でも、よく使います。“Let me know about it ASAP!”といえば、クールな感じです。
その中で、ビジネスライクに相手に伝えたい事項は、締め切りなどの期限です。日本人の多くは、締め切り迫っているのに、曖昧な書き方をして、トラブルになる場合もあります。
略語を使って期限や期限が短いことを知らせると便利です。先ほどのASAPは、相手に対して直接対応を要求するので、公式なビジネスメールでの使用は避けましょう。
<責任と期限をしっかりと相手に伝えるには、略語が便利>
▪️POC
ビジネスメールでは、仕事の責任を明確にすることも、重要な事項です。その際、文章で自己紹介をして、この仕事を担当します、あるいは責任者であることを説明すると長い文章になります。
そんな時には、“POC”と略語を使えば、一言で明確に伝えることができます。自分が担当をする場合には、POC(Point of Contact)を使うと良いでしょう。
I will be your Point of Contact in the Event
(このイベントでは、あなたの担当者になります)
と一文を書きっこむだけで、責任の所在が明確になります。
▪️NLT
期限を明示したい場合は、NLTを使います。NLT は、“no later than~”(~までには必ず)を意味します。
通常のBy Nov. 12(11月12日までに)では出せない緊迫感があります。
“Let us know NLT Nov.25”
(11月25日までに必ずお知らせください)
と明確に期限を相手に伝えることができます。
No laterは、それ以上遅くなることがないように相手に注意喚起できます。
▪️COB
さらに特定の時間を指定したい場合は、COBを使います。COBは、Close of Business(課業終了時)を意味します。
11月25日に仕事をしたい場合には、24日に返答がくれば良いですね。メールに書き込むのは、NLT COB Nov. 24 とすれば、返信は、11月24日の17時以前に届き、計画的に25日には対応ができます。
“I would be happy to get your reply NLT COB Nov. 24.”
(遅くとも、11月24日の終業時間まで返答いただければ幸甚です)
と書けば良い印象になります。
COBの常識として、営業時間内に余裕をもって送るという配慮も必要です。
▪️TBD
会社内でなかなか調整がうまくいかず、期限までに間に合わないと感じた場合は、まず相手に一方を入れておきましょう。
その場合、TBD(to be determined)「決定される:未定」といった略語を一文字入れておくだけで、現況を知らせることになります。
“The plan for the future:TBD”
(将来計画:未定です)
正式なイベントの招待状が、外国の企業や大使館から届いた場合は、専門用語が混じっていることや海外での常識が含まれていることがあり、しっかりと読み込まなければなりません。
▪️R.S.V.P
特に注意をするのが、”R.S.V.P”です。イベントへの出席の返答を意味しています。
“ Répondez s’il vous plaît(リポンデ・シル・ヴー・プレ)で、フランス語で「ご返信ください」という意味です。
回答の締め切りが指定されています。
R.S.V.P by 10 November
(11月10日までにご回答ください)
出席をする場合は、必ず回答しなければなりません。
<BLUFと略語を使って、すっきり伝える>
BLUF(Bottom line up front)
で、結論をトップに持ってきて、メールを読んだら一行目で内容が分かるように心がけること。
FYI(for your information)
「情報提供します」と、略語を使って一目で内容が分かるように工夫する。
NLT(No later than)
で、「絶対にこの期限を守って」という言いにくいことを、略語一つで伝えることができるメリットを活かしてビジネスする。
責任の所在を明確にするには、POC(point of contact:担当者)であることを伝える。
そういった考えや略語を駆使して、言いたいことをすっきりと伝えることができれば、メールやレターの作成も楽しくなります。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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