日本でバーテンダーと聞くと、蝶ネクタイを締め、シェイカーをオシャレに振る、きちっとした格好の男性の方を想像されることが多いかもしれませんね。
ところが、アメリカではいろんなバーテンダーさんがいます。もちろん、アメリカ映画でたまに見るような、ちょっとセクシーに胸の谷間をチラッと見せた女性のバーテンダーさんがいたり、なんと高齢の方も多いのですよ。
年配の女性バーテンダーも、結構見かけます。アメリカでは、年齢や性別、また身体の不具合等でも、職業上の差別をしてはいけないそうです。みんな平等のアメリカ。
今日は、ベテランの女性バーテンダーさんの、お話もしていきますね。
<本日のハッピーアワー>
まず、今回行ってみたバーは、アップタウンにある、
「TAP A KEG」(タップ・ア・ケグ)
年中無休で、営業時間は、昼にオープンの朝の4時まで。ハッピーアワーは、昼から夜の7時までだそう。お店のつくりは、普通にプールテーブル(ビリヤード台)、ダーツと、ジュークボックスぐらいで、ファンシーな気配りは何もないのですが(ホームページもない)、なんといっても年配のお客様が多い。
なるほど、アメリカは、老後の年金がしっかりしているので、しっかりリタイヤした人たちが、昼過ぎからここに集い、それは楽しく飲んでる気配。なんだか、ファミリーっぽい雰囲気が満載。
先にお伝えした通り、こちらのバーテンダーやウェイトレスは、年齢制限がありません。なので、アメリカ映画などでもおなじみと思いますが、妙齢のおばあちゃんがダイナー(日本で、いわゆる食堂)のウェイトレスとして、結構ミニのスカートのユニフォームを着て働いてたり、白髪と白いお髭のグランパが、T シャツとジーンズを、ちょっと出っ張ったお腹だけどかっこよく着こなし、バーテンダーをしてたりします。
頼れるベテラン女性バーテンダー
知り合いから聞いた話ですが、あるバーのベテランバーテンダーさんは60代後半ぐらいの女性。白人で、とてもしっかりしていて、声も大きい、明るい人。
ある日、お客が酔っ払ってグダグダと彼女に話しかけていたら、
”Don’t bother me, if you don’t order anything, get out!”
(うるさいよ、ビール頼まないでごちゃごちゃ言ってるだけなら、さっさと出て行きな!)
と、手厳しい一言が飛んだらしい。他のお客さんたちは、下を向いて、苦笑。
また別の日、このバーで、突然、バコッと酔っ払い2人による殴り合いの喧嘩が始まった。私など、きゃっ、怖い〜、などと思いっきり引きそうだが、このバーテンダーさんがいれば大丈夫!
”Cut it out! If you want to fight take it out side!”
(やめい!もし殴り合うなら外でやれ!)
彼女の一声で、この2人はすごすごと外へ出て行き、無観客の中、勝手に殴り合っていたそう。その後、この2人は静かに店へ戻ってきて、またビールをオーダーしたそうな。ここで彼女の機嫌が悪ければ、
”I can ban you !“
(もうこの店には立ち入り禁止、二度と来るな!)
と言われてしまう恐れもあったようですが、彼らは許してもらえたらしい。
フルグラスでテイスティング?
またある日、この同じ女性バーテンダーに、タップ・ビア(生ビール)、どれにしようか迷ってた時に、これはどんな味なの?
と聞いたら、200cc 位のグラスにフルグラス、テイスティングさせてくれたと。じゃあこれは?と聞いたら、それも同じくフルグラス。それで4種類、試し飲みだけで800cc ぐらい飲んでしまって、無料で酔っ払ってしまった、と言う話を聞いた(大笑)
もちろん、その後、このお客さんは、きっと彼女にたくさんチップを払ったとは思うけれど。
これらの話は、すべてこの「TAP A KEG」のお客さんの話。
直径15センチ位のボールに、いっぱい入った、塩バターのポップコーンが、本当は1つ2ドルなんだけれど、常連を自称するお客さんたちは、みんな家族のようなものなので、おかわりし放題なんだよ(笑)と、うれしそうにそう話してくれた。
さて私も、近い将来、ここでポップコーンのおかわりがタダになる日が来るかな。
ではまた来週。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。