3月は日本では年度末、この施設でも人事異動のお知らせが届いた。
親しい外国人研究者が突然移動する話を持ちあがると、本当に残念で寂しい気持ちになる。
ある日私は上司のドイツ人チーフに、人事異動の内容を伝えに行った。
その時に、ドイツ人チーフがこう言った
「Finally, He will leave from here.」
「?」私は一瞬固まったが、意味はなんとなくわかった。
そんな意味で習ったっけ、と私は思いながら事務所の自分の席に座り、パソコンで改めて英語を検索してみる。
「leave」離れるという意味。この場合は、施設を離れるという意味で「転勤する」。
「彼もいよいよ転勤するんだね」と言ったんだと思った。
そして「move」(移動する)や「go」は使わないんだな、と思った。
いつも思うけど、英語を使う外国人が見る方向は、私とは違うときがある。
この話すときに見ている方向の違いは、他の場面でもよく登場する。
荷物の受付の仕事
施設に運ばれる荷物や、施設の人達が送りたい荷物のお手伝いも私のお仕事の一つ。
荷物が施設へ届くと、それを届いた方へメールでお知らせをする。
外国人へ連絡すると、こんな返事が来る時がある。
「Please, if you prefer, you can leave the package in my room.」
この意味は、日本的なビジネスメールで訳すと
「もしよければ、私の荷物は私の部屋へ運んでもらえますか?」
運ぶは「carry」「bring」を使うと思うけど、リアルに外国人とやりとりをする場合は、こんな風に使わない。
「荷物を運ぶ場所」から見て話しをしているから、これから「あなたが持っていく」という表現にはならない。
「私が持っていく」時に「carry」を使う。
ただ、この表現は間違いではない。この立ち位置の違う発想、ここが外国人と交流するときに、お互い混乱を招くところだと思う。
この表現は一瞬、世界観がぐるりと変わる感じがして、変な気持ちになる。
発想の違い
よく「英語脳になる方法」のようなタイトルの本を、書店でみかけることがある。
このお仕事につくまで、この内容は机上の空論。ただわかったつもりでいる、という状況だった。
この施設で働きはじめて、いろいろな外国の人たちと接して、この意味がよくわかるようになった。
日本語とは違う方向から物事を見て、英語を使うという事。
「leave」これは外国人がとてもよく使う単語
「leave me alone」これは「私を1人にしてくれる」
「He left」これは「彼は転勤したよ」
「leave it in my room」これは「それを私の部屋へもっていって」
この単語は「離れる」という意味だけど、実際使うときは「放置する」「(その場所へ)置く」「移動する」のようにいろいろな場面で使われる。
日本では、「荷物を(今から)運ぶ」という風に、自分のいる場所からの行動を連想しながら話すけど、英語では「荷物を置いておく」という風に、置く場所からの視点で話をする事が多いと感じる。
「come」もこれと同じように使われる。
今から会社へ行くことを、会社にいる人に連絡する時「I will come to the office.」と言うのをよく耳にする。
会社にいる人に話すときは、「会社へ行く」ではなく「会社へ来る」。話しかける人がいる場所からの視点で話す。
外国人と話すとき、この感覚に慣れなくて「自分のいる場所や視点」から英語を話してしまい、外国人が時々私の言うことに「ん?」となっている事があった。
この逆の発想の使い方は、今も聞いたり使ったりすると、体のどこかがくすぐったいような変な気持ちになるけど、この習慣の違いを理解できると、英語のコミュニケーション能力は格段に上がる。
急に外国人に会話が通じる!という現象が起こる。ぜひ、みなさんにも試してほしい。
京都が大好きで光華女子学園へ進学、卒業後、大阪の企業で経理課勤務。仕事が肌に合わず、夢だったイラストレーターを目指して大阪芸術専門学校へ。賃貸住宅ニュース雑誌社へ派遣社員として就職。その後地元へ帰り、地元のフリーペーパーやパチンコ店などのポスター制作するグラフィックデザイナー、ベジタリアン・ヴィーガンのお料理の先生、バンドのドラマー(ジャズ・ロック・軽めのフュージョンなどジャンルを問わず、地元ではセミプロとして活躍する。プロドラマー海野俊介氏に師事)、お琴奏者(趣味で名取まで取得)、演劇が好きで劇団にも少しだけ所属・・・など様々な経験を経て、英検3級しかありませんが、縁あって現在は、某施設で外国人担当のお仕事をしています。