「キャーっ」
と突然、外国人学生の女性が叫び声をあげた。そして
「これってピーナッツバターが入ってる?」
と青ざめて、今食べたものを口から出した。
これはある日の夕食中の出来事。
日本ではとてもポピュラーなある食物を食べて、彼女はさっきのように叫んで食べたものを吐き出した。
日本人なら誰でもわかるのだが、実際その食べ物にはピーナッツバターなんて入っていない。
さて、このあるものとは?
世界の食に対する意識とは
私がこの施設でお仕事をしていて、もっとも難しいと感じるのは食に関するお世話をすること。
食事というのは、人によりさまざまに大切な意味を持つからだ。
宗教、思想、環境問題、アレルギー、と日本よりもかなりたくさんの選択肢をもつ外国人の食に関するこだわり。
これに対応する事は、日本では少々難しい。
いつも私が一番重視するのは、「生命の危機に関わる事」と「こだわりの思想」の2つのポイントに絞っている。
今回は海外のベジタリアン事情をお伝えしたいと思う。
ベジタリアンのさまざまな種類
最近食についてのこだわりが普及している日本だが、まだまだベジタリアンは馴染みが薄いと感じる。
ベジタリアンになる人達の理由はいろいろあるが、ざっくり分けるとこの4種類
1.神様の意志に反するので、動物を殺したくないという宗教に基づいた人達。
この人達は、家族がそもそも同じ宗教の場合、一度もお肉やお魚を食べたことがない。だから、まったくその味を知らず、もはや食べたいという欲求が無い人も多い。
2.動物愛護の目的から、動物性の物を食べない主義の人達。
この人達は動物愛が強いので、革製品の素敵な靴や手帳などを購入しても絶対に自慢してはいけない。
3.添加物からの環境破壊を懸念している、または健康面で添加物などを取りたくない人達。
お肉の加工には必ず添加物が使われるため、外国人にとって日本よりも大きく問題視されているらしい。日本の食材が安全だと思っている一部の外国人からは、こんな意見を聞いたこともある。
「日本では食べられるけど、自分の国のお肉は怖くて食べられない。だから、自分の国帰るとベジタリアンだけど、日本に来たら自由にお肉を食べるんだ」
これに対しての成否はおいておくけど、こういう意識を持っている外国人もいるんだな、と思った。
またこんな風に話す外国人研究者もいた。日本食はベジタリアンも悩ませる美味しさらしい。
「自国ではベジタリアンだけど、日本の出汁巻き卵や鳥の唐揚げは美味しすぎて我慢ができない。日本に来たときは絶対に食べたい」
4.最後に一番注意すべき人達
アレルギーにより、食事を制限されている人達。
この人達は食事のルールを絶対的に守らなければならない。アナフィラキシーなどの発作が起きてしまう危険があるからだ。
例えばお肉を食べることはOKだが、揚げ物に使われている小麦アレルギーのために、お肉なども控えているという人もいる。
このように様々な理由があって食事制限をしているベジタリアン。
そのため理由によって食べられる範囲が違ってくるので、卵と乳製品はOKな人や、お魚だけはOKな人・・・など様々。そしてそれが少し難しいところだと思う。
その中でもお魚を食べることができる人とできない人では、日本で提供できる食事の範囲がとても狭くなる。
日本の出汁文化は魚が使われる事が多いので、味噌汁も煮物や和え物すらも食べることができず、ソーセージの代用品で使いたい、魚肉ソーセージやちくわなども提供ができない。
これは、宿泊施設の食事担当の人たちをもっとも悩ませる。
更に、これはとても特殊な話だけど「白砂糖」。
白い砂糖の精製には牛骨が使われる。
以前、「この喫茶店のケーキは、私が食べられるか食べられないか?」という質問をしたベジタリアンの外国人女性がいた。彼女は、動物愛護の思いが強くベジタリアンになった。
牛骨の話は知っていたが、彼女が入ることができる喫茶店が無くなってしまうから、真実を詳しく伝えることができなかった。
ベジタリアンとの食事
ベジタリアンの人との食事、日本では居酒屋などが選びやすくて彼らにはとても助かるようだ。
お店選びを頼まれて、メニューの選択なども必要なので一緒に行ったことがあった。
ベジタリアンのために、野菜のメニューを注文した。
そしたら・・・
「キャーっ」
と突然、ベジタリアンの外国人学生の女性が叫び声をあげた。そして
「これってピーナッツバターが入ってる!」
と青ざめて、今食べたものを口から出した。
日本ではとてもポピュラーな「ある食物」を食べて、日本人なら誰でもわかるのだが、実際その食べ物にはピーナッツバターなんて入っていない。
「念のためお店に聞いてくるね」と言って確認をした。ピーナッツが入ってない事を確認して彼女は安心した。
そのある食物とは、
「ほうれん草の胡麻和え」
胡麻の味が「ピーナッツバター」とそっくりだったので、ピーナッツアレルギーがある彼女は、驚いて叫んでしまった。というわけ
ベジタリアンだからと思い野菜を頼んでも、このように非常に焦る局面に合ってしまう。
ベジタリアンは野菜が大丈夫!と思うのは少々違う、と痛感した。食に関することは、詳細に確認が必要だと思った。
その人がどんな理由でその食事方法を選択しているのか?
それはとても大切な事になる。
ただ、この部分を理解してあげると、外国人とはとても仲良くなれる、というのも事実。
食事はエネルギー補給以外にも、お互いの理解を深めるツールでもある。
外国人の食に関する意識と彼らの食物事情を理解していると、思いがけない外国人のそれぞれの思想の内面に触れることができる。
日本のことわざ「腹を割って話す」の通り、本当に理解しあえるきっかけになる。
京都が大好きで光華女子学園へ進学、卒業後、大阪の企業で経理課勤務。仕事が肌に合わず、夢だったイラストレーターを目指して大阪芸術専門学校へ。賃貸住宅ニュース雑誌社へ派遣社員として就職。その後地元へ帰り、地元のフリーペーパーやパチンコ店などのポスター制作するグラフィックデザイナー、ベジタリアン・ヴィーガンのお料理の先生、バンドのドラマー(ジャズ・ロック・軽めのフュージョンなどジャンルを問わず、地元ではセミプロとして活躍する。プロドラマー海野俊介氏に師事)、お琴奏者(趣味で名取まで取得)、演劇が好きで劇団にも少しだけ所属・・・など様々な経験を経て、英検3級しかありませんが、縁あって現在は、某施設で外国人担当のお仕事をしています。