Hey!guys.
月曜日のSwatchです。
自衛隊と米軍との、ある調整会議で通訳として任務に当たっていた際、「時間を作る」という会議参加者の発言を通訳したときに、“make time”というフレーズが咄嗟にでてしまいました。
“make time”を直訳すると「時間をつくる」ということになり、「そのために、時間を作りたいと思います」という発言には、内容的にあっているように思いました。
何度となくその発言が繰り返され、その都度、自動的に“make time”を繰りかえし、通訳していました。
日本側の発言が一段落して、米軍側の反論になりました。
“I understand the plan you said ”
(あなたの発言は分かりました)
続いて、
“You’ll make time to □□□□□□□□(※守秘義務のため伏せ字)”
と日本側の発言を繰り返し確認した後、
“I mean… we should play for time…”
と発言したのです。
“I mean”と聞いたときに、次の言葉が非常に重要であることを直感ました。
なぜなら、“I mean”は、アメリカ人が相手の間違いなどを穏やかに表現するときに使う表現だからです。
その時、アメリカ人の発言者を見ると目があい、
“we should play for time to…”
と聞いた瞬間、通訳席の机の上に置いた電子辞書に “play for time”を打ち込んでいました。
すぐさま、画面に意味が表示され、説明をみて、再度アメリカ人を見ると、こちらをじっと見つめていました。
「play for time」=「時間を稼ぐ」
という表現を、アメリカ人の発言者は、教えてくれたのです。
その後の日米の発言で、「時間を稼ぐ(時間を作る)」は“play for time”で通しました。
教えてくれた発言者のアメリカ人とは、懇意の仲でもあり、なんでも相談できる仲間で、Swatchの訳した“make time”は、実は非常に深刻な状況でした…。
<make timeは、時間を作るではない!?>
Swatchは日本側の発言者の「時間を作る必要がある」という表現から、直接 “make time”(時間をつくる)と通訳してしまいました。
しかし、会議後の反省会で、「時間を作る」という表現は半分ぐらいしか伝わらないという議論になり、辞書やアメリカ人に直接聞き取りをしたところ、次のような結果になりました。
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“make time”という英語表現は存在する、間違いではない。しかし、その意味は、今ある計画、スケジュールを見直し、移動可能なイベントや業務を他の時間帯に移行して、時間を作ること。
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つまり、「新たに時間を作る」という意味ではなく、「スケジュールを変更」して、そこに時間を割り当てるという意味だったのです!
調整会議で、それまでに協議してきた内容、計画を変更することは大変なことです。
変更するには、明確な理由が必要となり、変更する意義、その変更がもたらす影響などを総括して、変更を決定することになり、少なくともその会議では、計画の変更は全く念頭にないことだったのです。
“make time” (現在の計画の一部を変更して、時間をつくる)
という表現は、そういった懸念を生むことになるのでした。
2か国の国際会議というのは、言葉の認識の違いで、本題からずれて行く可能性は否定できず、そこに通訳者の留意する点と努力する本質があります。そういった努力や汗が、会議の円滑な進行につながることがやりがいになります。
<play for time(時間を稼ぐ)の戦略的意味>
Swatchが通訳団長となった会議は、会議後に研究会(反省会)を必ず実施していました。
その時のアジェンダ(議題)は、
(1)“make time”(時間を作る)という直訳が会議に与えた影響
(2)“I mean”(つまり)という何気ない表現に込められた思慮深さ
(3)“play for time”(時間を稼ぐ)を何故使うのか
(1)“make time”(スケジュール変更で時間を創出)により、アメリカ側にいままでの計画の変更を、伝えてしまうかもしれず、計画変更を、唐突に議題に挙げるような表現は間違いである。
(2)“I mean”は、相手への気遣いや自分の言い間違えを訂正する表現であり、会議の場で使わない。それをあえて、アメリカ人が発言したのは、特に意味があったのではないか。それは、
“make time”という通訳の表現に対する違和感の表明、また通訳への配慮でもあった。
(3)“play for time”という表現を使った理由については、聞き取りによって理解できた。“play for time” は、我の(味方の)状況を有利に進めるために、時間稼ぎをすること。交渉や決定を遅らせたり、相手を混乱させたりするため、わざと時間をかけて対応する、「軍事戦略的な表現」であるということだった。
<人間関係の構築の大切さ>
大昔の通訳での、赤恥をお話ししました。
Swatchが私淑し憧れた同時通訳者、「英語道」を提唱し、英語と異文化を学ぶ私塾「弘道館」を設立された松本道弘氏は、多くの著書の中で、「失敗を笑うだけでなく、そこから日本人の持つアメリカ人の考え方のずれを正していただければ嬉しいです」と述べられています。
Swatchが、いつも念頭に置いている言葉です。
それに加え、日米の文化や慣習の違いを乗り越えた人間関係は、非常に大切です。仕事をする上でも、個人的な関係が良好であれば、良い方向に進むことを確信しています。
今回の話の中でも、Swatchとアメリカ人の発言者が非常に良好な関係であったことが、会議の進行に影響を与えたことを、ご理解頂けたかと思います。
目を合わせるだけで、なにがしかの意思が通じる関係、阿吽の呼吸といったものが生まれる関係をもてることは、仕事がうまくいくだけではなく、人生が豊かになります。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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