海外のニュースを見ていると、日本ではなかなか出会わない話題を目にすることがあります。
今回は、そんな海外ニュースから、私たちにも身近な「サバ」の話です。
スーパーなどで手軽に買える「サバ缶」。
日本でもおなじみですよね。
ところが今、イギリスでは、
「いつものサバ缶だと思って買ったら、魚が変わっていた」
という、ちょっと驚くようなことが起きています。
一体どういうことなのでしょうか。
「サバ」が別の魚に?
9月11日、イギリスの新聞The Guardianが、こんな記事を掲載しました。
Extra fishy: your tinned mackerel may not be what you think it is
(ちょっと怪しい? あなたのサバ缶、思っているものとは違うかも)
記事によると、イギリスではこの1年ほどの間に、一部のブランドやスーパーの缶詰で、これまで使われていたサバが別の魚に切り替えられています。
これまで使われていたのは、
Atlantic mackerel(大西洋サバ)。
ところが代わりに使われ始めたのが、
jack mackerel(ジャックマッカレル)
という魚。
名前には同じ「mackerel」が入っています。
でも実は、この2つは同じ魚ではありません。
大西洋サバはサバ科。
一方のジャックマッカレルは、分類上はアジ科の魚。
つまり、英語ではどちらにも「mackerel」という名前が入っていますが、従来の大西洋サバとは別の種類の魚なのです。
味だけではなく、栄養も違う
商品には「jack mackerel」と表示されています。
ただ、これまでのサバ缶と同じような商品として店頭に並んでいるため、表示をよく見なければ、魚が変わったことに気づかない人もいるかもしれません。
しかも、違うのは魚の種類だけではありません。
The Guardianによると、ジャックマッカレルは従来のサバとは味や食感が異なり、
オメガ3脂肪酸の量も、およそ半分。
さらに、ジャックマッカレルの仕入れ価格は大西洋サバよりかなり安いにもかかわらず、商品は似た価格で販売されているケースもあるそうです。
イギリスの消費者団体Which?は、こうした商品の変化を、
“ skimpflation(スキンプフレーション)”
の一例だと指摘しています。
これは、価格を大きく変えないまま、商品の中身や品質などを抑えること。
値段が上がる「inflation(インフレーション)」とは少し違い、
「値段ではなく、中身が変わる」
というわけです。
なぜサバを変えたの?
では、なぜわざわざ別の魚に変えたのでしょうか。
単に安い魚を使いたかった、という話ではありません。
背景にあるのが、
北東大西洋のサバ資源の減少です。
乱獲への懸念から、Marine Conservation Societyは北東大西洋のサバを、避けるべき魚を示す「赤」に評価しています。
大手食品メーカーPrincesは、持続可能ではない漁獲への懸念が続いていることを理由に、従来の北東大西洋のサバから別の魚へ切り替えたと説明しています。
スーパーのLidlも、MSC認証を受けたチリ産のジャックマッカレルへ切り替えています。
さらにイギリスのスーパーWaitroseは、今年、サバの販売そのものを一時停止し、代わりにニシンなどを勧める対応をしています。
一方で、消費者側から見ると、少し違った問題もあります。
先ほど紹介したように、従来のサバより安い魚に変わった一方で、商品は似た価格で販売されているケースもあります。
サバ資源の減少や持続可能性を理由に魚を変える企業側の事情。
そして、「中身が変わったのに、なぜ値段はあまり変わらないの?」という消費者側の疑問。
今回のニュースには、その両方が重なっているのです。
スーパーに並ぶ一つのサバ缶から、海の資源だけでなく、イギリスの消費事情まで見えてきます。
同じ「mackerel」でも……
今回のニュースには、
Atlantic mackerel
jack mackerel
という、よく似た名前が登場します。
どちらにも「mackerel」。
でも、同じ魚ではありません。
スーパーに並ぶ一つの缶詰から、
「魚の名前」
「食文化」
「海の資源」
そして、
“skimpflation”
なんていう今のイギリス社会を表す英語まで見えてくる。
これも海外ニュースを英語で読む面白さなのかもしれません。
日本語のニュースだけを見ていると、なかなか出会わない世界の出来事。
そんな「英語がわかると、世界が広がる」ニュースもお届けしていきたいと思います。

