【World Life】とは?
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谷底だらけのイギリス留学

World Lifeな生活
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イギリスに来て5か月が過ぎた頃。
「あと少しで、念願のツーリズムの学校が始まるぞ♪」そんなウキウキ気分の時。

1本の電話で、私の目の前は真っ暗になった。それは、行く予定の学校からだった。

「あなたのツーリズムコースは、人数が少なかったので今年は開講しません。あなたは外国人だし、「英語コース」があるから英語コースの方に変更してください」と。

「え?ツーリズムコースはないって?? 英語コースに変えろって??」
予期しない言葉に、自分の英語の理解が間違っているかと思った。いや、間違いだと思いたかった。

だって、ツーリズムの勉強をするために、イギリスに来たというのに…。

ー泣きっ面に蜂ー

残念ながら私の聞き間違いではなかった。私の行きたかったツーリズムコースは開講しないらしい。
しかもそれを言われたのは、学校の始まる3日前の事!

「変更手続きもあるから、学校に来てほしい」と言って電話は切られた。
しばらく呆然とした。また奈落の底に突き落とされた気分だった…。

イギリスに来てから3ヶ月。通った語学学校ではずっと落ちこぼれ。

勉強しても勉強しても、英語は一向に話せるようにならなかったし、周りのクラスメイトとの英語力の差も埋まらなかった。

最後の方は、先生は私にはビデオを見ていれば分かるような簡単な質問しかせず、私もまたそれくらいしか理解できなかった。みじめだったし、英語の勉強に嫌気がくる程だった。

それでも私には目的があった。「ツアコンになるために、ツーリズムの学校に行く」という目的が。

ロンドンにあるその学校に通うため、週末にはブライトンから電車で1時間かけ、ロンドンへ出ては住む部屋探し。少しは気分転換にもなるかと思ったのだが…。

新聞に出ている空室情報を頼りに不動産屋さんに電話しても

“It’s gone.”
(その物件はもうないね)

と一言で片づけられ、速攻で電話を切られる。

本当に部屋が出てしまったのか、私の英語がたどたどしくて、面倒くさかったのかは分からないが、かけてもかけても“It’s gone”の一言で切られる。

折れそうな気持ちで、日本人経営の不動産屋さんなら親切にしてくれるかもと探して行ってみる。が、「うちではそんな安い物件は扱ってない」とここでも冷たく断られる。

さらには、イギリスでは公立の学校よりも私立の学校の方が良いといい、私が行こうとしていた学校が公立であまりいい地域にはなかったため「何でそんな所の学校に行くの!」とまで言われた。

まさに泣きっ面に蜂状態。「同じ日本人なのに、なんでこんなに冷たいの…」

誰も知り合いのいないロンドン。今のようにネットでいつでもどこでも繋がれる状態ではない。
本当に一人ぼっちだった。

公衆電話から日本の実家に電話をかけ、初めて泣いた。心配する声が受話器の向こうから聞こえる。 どこまで説明できたか分からない。

でも電話を切って気づく。

「どんなに心配してくれても、助けようとしてくれても、日本からじゃ何もできないんだよな。ここでは誰も助けてくれないし、助けてもらえない。自分で何とかするしかないんだ」

毎週末、泣きそうになりながら不動産屋さんに電話をかけ続け、ようやく数件アポが取れ、部屋を見せてもらう 。

そして、その中でやっとスタジオフラット(日本でいうワンルーム)を借りる事ができた。

魔の3ヶ月を過ごしたブライトンからロンドンへ引っ越し。新しい学校が始まるまでの約2ヶ月間が夏休みになった。

学校のない夏休みは楽しかった。語学学校の友人とオランダやベルギーを旅行したり、両親が来て一緒にスコットランドを周ったり。

ボロボロだった気分も少し落ち着きを取り戻し、「いよいよ目的のツーリズムを学ぶ事ができるぞ!」と気持ちも上がってきた時、

「コースが無くなった」と言われたのだ…。せっかく上がってきた気分が、また大きくがた落ち↘

「ようやく楽しくなると思ってたのに…」

イギリスに来てからはキツイ経験と、大変な事ばかり…。そしてまたしても…。
どうしていいか分からず泣けてくる。

ー英語は学びたくない!ー

そしてまた思い知る。ここでは誰も助けてくれる人はいない。

「泣いていても始まらない。自分で何とかするしかない!」

他の学校を調べてみたものの、他の所も同じくらいに始めるため募集は終わっているか、既にコースが始まっているかだった。

結局、先の事は決まらないまま学校へ行く。だけど、英語コースになるのは絶対イヤだった。前の3ヶ月の語学学校で英語の勉強にはほとほと嫌気がさしていたのだ。「英語は学びたくない!」という思いで担当者の人と話す。

担当者:「あなたは日本人だから、英語コースがあるからそっちに変更するといいわ」

私:「私は、ツーリズムの勉強をするためにイギリスに来たんです!このコースに通うために、もう3ヶ月間語学学校にも行きました!

私の英語は完璧じゃないけど、もう英語の勉強をするのは飽き飽きなんです!」

担当者に言ってやろうと、家で何度も練習していた言葉を一気に話した。

「英語コースには絶対行きたくない」という強い思いに、「コースが開講されない」という怒りも加わって、脳が活性化したのか、自分でも驚く程スムーズに英語がでてきていた。

思いが伝わったのか担当者は、少し考えて
「分かったわ。昼間のコースは開講されないけど、夜間のコースは開講されるの。そっちに行く?」と。

「夜間コースかぁ…。」
思っていたカレッジライフとは全然違うけど…、英語コースでまた英語の勉強をし続けるよりもずっと良いように思えた。
「夜間コースにします!」その場で決め、変更手続きをしてもらった。

ーこれが私にしたかったこと!ー

そこから私のイギリス生活は激変する。

夜間コースにしてもらった事で、昼間の時間が空いた。全日制から夜間コースに変更して、納めていた授業料も差額分も無事返金された。

空いた時間と、浮いたお金で私が選んだのは、会話中心の語学学校。英語の勉強ではなく、話すことがしたかったのだ。そこはこれまで私が通った、英会話学校やブライトンの語学学校とは全く違っていた。

テキストはほぼ見ることなく、先生が出す英語の質問にひたすら答えるという練習をしていく。英語のトレーニングジムのようなところだ。

実はこれが、試験はできても会話ができなかった私にとってはすごく有効だった。何度も何度も繰り替えし話す練習をする事で、いつの間にか口が覚えていくようになっていたのだ。

私に必要だったのは、「英語の勉強・知識」ではなく「英語を話す練習」だったのだ!

それまでは質問されても、英語→日本語で質問を理解し、日本語→英語で答えを考えて言う。という時間がかかるものだったが、それが気づいた時には英語⇔英語で日本語を介さずに理解し、英語で考えそのまま話す。という事ができるようになっていたのだ!

そして、ツーリズムの学校の方も「夜間コースかぁ~」と妥協して決めたものではあったが、始まってみるとこれがすごく楽しかった!

今考えてみれば、私が学んだ事は航空券の種類や、予約の取り方、発券の仕方など、旅行会社ではごくごくベーシックな事だった。でも、それは私が初めて自分が興味のある事を「英語で」学んだ瞬間だった。

これまでは英語を「言語」として学ぶ、勉強するという事から、英語を使って自分の知らない事を学ぶという初めての経験!

授業はもちろん全て英語だし、ネイティブの人たちと一緒なので早いし、分からない単語もよく出てくる。

が、知らない単語も、これまでは「試験のため。知識のため。」でただ覚えていたものが、「自分が学びたい物のために調べる。覚える」となった。

やっている事は同じことだけど、気持ちが全然違うし、授業で使う言葉なので覚えも早い。知らない単語や用語を勉強する事も、覚える事も、旅行業に関係があると思うと楽しくて仕方ないのだ。

「これが私のしたかった事だ!」とイギリスに来て初めて充実感を覚える。
その後の1年のイギリス生活は、本当に充実して楽しかった。

点と点

振り返ってみて思う。
「あの時、ツーリズムコースがなくなって良かった」と。

あのまま、ツーリズムコースに行っていたら、ツーリズムの勉強は進んだかもしれないが、英語は話せるようにはならなかっただろう。英語が話せていなかったら、ツアコンになれていたかもわからない。

そして、何よりもあの事で私は強くなった。人生で一番つらい時を、自分ひとりで乗り越えられたという事が自分を強くしたし、あの時の事を考えれば大抵の事は何でもないと思えるようになった。

結局は、全てうまくいっていたのだ。

スティーブジョブズがスタンフォード大学の卒業式のスピーチで語った「点と点はつながる」という話。私はすごく共感する。

~先を見て点と点を結ぶことはできない。
後から振り返って点の繋がりに気づくのです。
だから、今やっている事がどうにか未来に繋がると信じてください。~

普段の生活でも、予期せぬ事が起きたり、「何でこんな事になるだろう」って事が起きたりする。

「最悪~…」と思う事も、その事で自分が成長できたり、結局はいい事につながるかもしれない。
その時には分からないけれど、後から振り返ってみたら「良かった」と思えるかもしれない。

「この経験はどこかに繋がっている」そう信じれば、最悪な出来事もプラスに考えられる気がする。

そしてもう一つ。私が良かったと思うことは「自分の直感に従ったこと」

あの時、学校の先生に薦められた通り「英語コース」に進まず、自分の心に従って「英語は学びたくない!私はツーリズムが学びたいんだ!」と主張して本当に良かったと思う。

これもまた、スティーブジョブズがスピーチの中で言っている。~最も大切なのは自分の心と直感に従う勇気を持つこと。それはあなたが本当になりたいものを知っている。~

もちろん、その当時彼の言葉は知らなかった、というより彼のスピーチよりずっと前の事だけど、無意識に同じような事を感じていたのかもしれない。

勇気を出して先生に訴え、そこから道が開けたのだから。
あの時の出来事が間違いなく今の自分をつくっている。

「点と点」・「自分の心と直感に従う勇気」。
これまでも、そしてこれからも彼のメッセージは私に生きる勇気を与えてくれる。


※スティーブジョブズのスタンフォード大学での卒業式スピーチはこちら ↓↓↓
有名なスピーチですが、私は何度見ても感動します!

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