「えっ?私のフライトが……ない…。」
オーストラリア ケアンズ空港。私は、オーストラリアから日本へ一時帰国する所だった。
私の飛行機は夜中の便。夜の国際線ターミナルは、静まりかえっていた。電光掲示板とチケットを何度も見返す。
「やっぱりない…。なんで?」
「キャンセルになった? キャンセルになっても便名は出てるはずだし…。」
でも、何かおかしい。チェックイン時間少し前とはいえ、誰もいないのだ。チェックインカウンターのスタッフも乗客らしい人も、誰もいない…。
誰かに聞こうにも聞く人さえいない。と、掃除のおじさんが通りかかる。
「掃除のおじさんに聞いても分からないと思うけど…」と思ったが、他に人はいないので聞いてみる。
「この便に乗る予定なんですけど、便名が出てないんですよね」と言うと、おじさんも一緒に掲示板を見てくれる。
おじさん:「ないねぇ。」
私:「ですよね…。なんでないんだろう…」
と、おじさんが何気なくつぶやいた一言に、血の気が引く。
よし!空港に泊ろう!
「たしか…、昨日はその便あったなぁ」
おじさんが呟いたその言葉に、背筋が凍るようだった。私は自分の犯した重大な間違いに気づいたのだ!
私のフライトは真夜中の0時30分発の飛行機。
私は、チケットに書いてある日の夜に空港に行った。でも、0時30分という事は日付が変わった直後なので、本当はその前の日の夜に行かなければいけなかったのだ!
何という凡ミス!
添乗員の仕事をしていた自分が日にちを間違えるなんて!恥ずかしすぎる…。
「何で気づかなかったんだろう…」しばらく自分のアホさ加減に落ち込む…が、もうどうしようもない。私の乗るはずだった飛行機はとうの昔に出発し、すでに日本に着いている。
「さて、これからどうするか。」気持ちを切り替え考える。
ケアンズ空港でも3ヶ月空港スタッフで働いていたので、日本便の事は大体分かる。日本便の多くは、早朝に日本から到着し、午前中に乗客を乗せ、また日本へ発つ。
早い便だと朝の4時半頃に飛行機が着く。という事は、それよりも前に飛行機会社のスタッフは来ているはず。
朝一で、チケットの取り直しができて、午前中の便に空きがあれば日本に帰れる。
その時の時間は夜の10時を過ぎた辺り。早朝4時過ぎに航空会社のスタッフが来るとして、それまでの時間は約6時間。
6時間かぁ。ケアンズの街中に戻り泊る事も考えたが、往復の時間などを考えるとあまり時間もない。
「よし!空港に泊ろう!」
そう決めたら何だか楽しくなってくる。夜中の便に乗ったことは前にもあったが、空港で一夜を明かすのは初めて!夜中の空港はどんな風になるのか♪
とはいえ、女性1人でもあるため、いくら田舎のケアンズといえども身の危険には気を付けないといけない。
国際線ターミナルは掃除のおじさん以外誰もおらず、閑散としすぎて怖いので、とりあえず国内線ターミナルの方へ移動する。ケアンズ空港は国際線→国内線ターミナルも徒歩10分位と近い。
国内線ターミナルに来ると、お店も開いているし、まだまだたくさんの人たちで賑わっていた。人がたくさんいるとやっぱり安心する。
まずは、夜の準備に入る。服は、もともと機内で寝る事を想定していたため、TシャツにワイドパンツのゆったりコーデだったのでOK。
あとは、コンタクトを外したり、顔を洗ったり、歯を磨いたり…。一通り済ませてリラックスできそうな椅子を数席確保する。
空港に来る前にケアンズの友人とご飯を食べ、ビールも飲んだし、時間も遅くなり眠気が襲ってくる。人が多いうちに少し寝る方が安全かもと思い、少し寝る事に。
人が多いと襲われる心配はないが、スリの心配はある。
一度、イギリスからオランダに行くフェリーでも椅子の上で寝た事がある。貴重品はしっかりと抱きかかえて寝ていたものの、日本人の習慣で靴は脱いで横になっていた。
まさか靴を盗る人はいないだろうと思っていたのだが、一瞬深く眠ってしまい、目が覚めてみたら椅子の下に置いておいた、お気に入りのコンバースのスニーカーが…なくなっていた…。
今回は、あの時と違い大きな荷物もある。幸いスーツケースではなく、キャスター付きのバックパックタイプのカバンだった為、椅子の上に置き、小バッグや貴重品はお腹の前に置いて覆いかぶさるようにして寝る事にする。もちろん、靴は履いたまま!
明るいし、うるさいし寝るというより少しうつらうつらするくらい。それでも少し体は休まった。
夜中の12時を過ぎると、お店も閉まりだし人も急激に減っていく。
最終便が終わったのだろう。
お店の煌々とした明かりも消え、行きかう人もなくなり薄暗く静かな空港になっていく。
少し離れた椅子には同じように夜明かし組であろう人の姿が何人かみえる。それぞれ静かな時間を過ごしているようだ。同じ仲間のようで安心する。
そこから空港も眠るように静寂の時間が数時間訪れた。
私は少し眠って逆に目が冴え出してきた。徹夜しているとハイテンションになるけど、そんな感じ。持っていたパソコンを取り出し、映画を見たり、ゲームをしたり、お菓子を食べたり…。
ここが空港である事を忘れるくらい、家にいるようにくつろいで夜中の時間を楽しんだ。
いや、夜中の空港という非日常の空間で、映画やゲームなど家でする事をしているというのが、何だかシュールで面白い。そしてちょっといけない事をしているようなそんな感覚と、真夜中のハイテンションで一人笑いたくなる位楽しかった。
そんな静かな時間が過ぎ、明け方4時ごろになると、空港で働く人の姿も見えてくる。空港もまた目覚めたようだった。
そうなると私も動き出す時間。身支度を整え、航空会社のカウンターに向かう。
えっ?! 嘘でしょ?!
カウンターで昨日の飛行機(正確にはその前日の便)に乗り遅れた事を説明すると、2階の航空会社のオフィスに行くように言われる。
早朝の為か小さなオフィスには女性スタッフが一人いるだけだった。私が日にちを間違えて、飛行機に乗り遅れた事を話すと、「あ~、時々あるのよね。」と言って驚く様子もなかった。
やっぱり私と同じような勘違いをする人がいるのだ。自分だけじゃないと分かって少し安心。
さて、問題はチケット。その時のチケットはマイルを使って取っていた。
予約をしていたのに当日来ない人を業界用語で“No Show”と呼ぶ。通常No Showの場合は、当日の連絡なしキャンセルになるので、キャンセル料は100%の場合がほとんど。
私も今回のマイルは全て無駄になるなと諦めていた。ところが、1万5000円ほどの手数料でマイルを元に戻してくれるという。
諦めていたものが戻ってくるなんてラッキー!早速、手数料を払い戻してもらう。
次は日本への便だ。私が乗るはずだった福岡行きは週に数回しか出ない便。
「同じ便だと次は2日後になるわね」とスタッフ。
あと2日も待てるわけない…。実家は宮崎なので、福岡の次に近い関西空港行きで今日空いていないか聞いてみる。
スタッフ:「関空行きは満席ね。名古屋行きには空きがあるけど」
名古屋!関空ならよく知ってたのに、名古屋は行った事がない…。
でも、とりあえず宮崎に近づいてはいる。「まぁ、日本であれば何とかなるか」と軽い気持ちで名古屋便に乗る事に。同日宮崎便には乗り継げないため、次の日の朝の飛行機を取ってもらう。
今度は乗り遅れる事もなく乗り込み、眠っている間に無事に名古屋まで到着。
空港近くのホテルに泊まり、次の日の朝。
これでようやく宮崎に帰れると、やれやれという気持ちで空港へ。
と、何やら騒々しい航空会社のカウンター。
「何だろう」と思いながら近づいていくと、カウンターの前に大きな立て看板が。
その看板を見た私は
「ウソでしょ?! ありえなくない?! 帰れないじゃん!」
まだまだ宮崎には帰れなかったのでした。いったい、何が起こったのか!
(次回へ続く…)
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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