「冬の空」と聞いて何を思い浮かべますか?
雪? オリオン座? それともダイヤモンドダスト?
私には忘れられない景色があります。
それは、カナダのイエローナイフで見たオーロラ。
~オーロラは、太陽から放出されたプラズマ(太陽風)が、地球の持っている磁気圏内に入り込んで、酸素や窒素などの大気と衝突して発せられる光~
と言ってもきっとピンと来ないでしょう。
実際のオーロラとは?そして-20℃の極寒の旅とは?
呼吸に注意!マイナス20度の世界
カナダのイエローナイフは、カナダ北部、ノースウエスト準州にある人口2万人弱の小さな町です。オーロラが頻繁に現れるエリア「オーロラベルト」の真下に位置しているため、オーロラを見に世界中からたくさんの観光客が訪れます。
イエローナイフは北緯62度27分。日本の最北端、北海道の宗谷岬が北緯45度31分なので、どれだけ北にあるかが分かるかと思います。北に位置している分、当然寒く、冬は平均が-20℃前後、寒い時には-30℃を下回る時もあります。
「-20℃の世界」想像できますか?
時々、テレビなどでありますよね。バナナで釘が打てるとか、濡れたタオルを振り回すとすぐ凍って真っ直ぐ立つとか…そんな世界です。
この辺りは笑っていられますが、到着時にガイドさんから言われた注意事項にドキッとしました。
① 外で急に息を吸い込むと気管や肺が一瞬凍り、気管や肺にダメージを受ける事があるので、息をする時はゆっくり。なるべくマスクやマフラーなどで口や鼻を覆って、温めた空気を吸うように。
② 口や鼻を覆っていると、まつ毛が凍る事がある。凍ったまま触ると折れてまつ毛が無くなってしまうので、室内で溶かしてから触るように。
③ 外の車の金属部分や金具に素手で触るとくっついたり、凍傷になったりする危険性があるので、必ず手袋をつけて触るように。
これを聞くと笑っては済ませられません。身に危険が及びます。やはり極寒の地を甘く見てはいけません。普段とは違う注意が必要なのです。
服装も普通の服では足りません。ツアーの場合は、現地でスキーウェアのような上下の防寒着に、極寒地用の分厚い手袋やブーツなど一式付いていたので安心でした。日本から自分で用意するとなるとかさばるし、お金もかかって大変でしょう。
私が行った時は日中は-15℃くらいまで上がりましたが、この防寒グッズのおかげかお天気も良く風もなければ、-15℃といってもそんなに寒さは感じず歩きまわる事ができました。もっとも、頭からつま先までほとんど素肌が外に出ている部分はありませんでしたが…(笑)
夜中のオーロラ観測
オーロラツアーは、オーロラを見る事が目的なので日中よりも夜がメインになります。
夕食は早めに済ませ、夜9時ごろからオーロラ観測に出発します。ここから数時間が勝負の時間帯。イエローナイフは、晴天の日が多く、3日間のうち少しでもオーロラが見られる確率は90%以上。
3日いればほぼ見られるという訳ですが、オーロラは自然の物。いつ、どこから出てくるか分かりませんし、タイミングが合わなければ、見られないかもしれないのです。
ホテルを出て、人工の光がない山の中へとバスで30分ほど走ると…そこには、北アメリカの先住民族が住んでいたティピーのような円錐形のテントが並んでいました。
オーロラ観測スポット、「オーロラビレッジ」です。森の中で安全に、そしてテントの中で温まりながらオーロラを観測できるようになっています。
ただ、いつオーロラが出るかは分からないので、外で待ち続けるか、窓にへばりついて出てないかを確認しなければいけません。
しかし、この時はお客様の中にカメラ愛好家の方がいたのです。オーロラを撮るために来ている彼は、オーロラを撮る装備も気合も十分でした。
夜で、しかも動くオーロラを撮る事は、普通のカメラや普通のカメラの腕では難しいです。さらには、極寒の地なので、寒さでカメラも機能しなくなるのだとか。
彼はカメラに覆いをかぶせ、カイロも数個周りにあてて温めてカメラ機能を維持していました。オーロラは一瞬で形が変わったり、消えたりします。そのため、出現したオーロラの一瞬も逃したくないと、外でずっとカメラにへばりついているというのです。
そして、私たちには「オーロラが出たら呼んであげますよ」と嬉しいお言葉を!
しばらくはみんな外で待っていたものの、すぐに体は冷えるし、オーロラがでなければただの森の中の真っ暗闇。お言葉に甘えそそくさとテントの中へ。
中はストーブがあり暖か。飲み物やスープ、お菓子も用意されています。ぬくぬくとした中で、お茶をしたりトランプをしたりしてオーロラが現れるのを待ちました。
そして、「オーロラでましたよ!」とカメラ愛好家の方から声がかかると外に出て見る、という具合。
ただ「わー!オーロラでたの?!」と思って外に出ても、既に終わった後だったり、白いもやみたいなものだけで、イメージしていたグリーンや赤のオーロラはなかなか出現しませんでした。
結局オーロラ観測1日目は、雲も出てきて、オーロラはチラっとのみで終了。オーロラを見たと言えば見たけど少し不満が残る1日目。
気を取り直して次の日の夜。
この日は、何度かオーロラが出現していました。しかし、既に昨日も見ているためもはや同じようなオーロラでは感動しない。動きのあるオーロラが見たくなってくる。
想像していたような動くオーロラがなかなか出ないと、テンションもだんだん下がりだす。さらには、暖かい部屋の中でまったりとしていると、時間も夜中なので眠気も襲ってきて寒い外に出るのもつらくなってしまう。
そんな時、
「オーロラ、出ました!今度はいいかも!」と興奮気味の声。
外に出ると、これまでとは違って広範囲にわたって光るオーロラが!
「おおー!」歓声があがる。
そこからオーロラは白からグリーンへと色を変え、生き物のように波打ち広がりながら動きだす。さっきまで真っ暗だった森がオーロラの光でふわーっと明るくなり、遠くの木々まで見渡せるまでに。オーロラが浮かび上がらせる幻想的な雪景色。
Speechless.
なんの言葉も歓声もあげられなかった。
映像では見た事があったのに、今、目の前で起こっている事、見ている風景が信じられなかった。オーロラの成り立ちについて、ガイドさんから聞いても全く理解できなかったが、実際のオーロラを見てもなぜこんな光が現れ、風もないのに動くのか、私の頭では到底理解できなかった。
刻々と姿を変え生きているようなオーロラ。壮大で、神秘的。それはこちらに迫ってきて、包み込まれてしまうかのような恐怖感さえある。
宇宙と自然のあまりに壮大な景色に人間である自分が本当にちっぽけな物に感じる。
オーロラに圧倒され魅了され、魔法にかけられたようにポカーンとただただ見続ける事しかできなかった。そして、オーロラが消えた後もしばらくはその余韻で動くこともできない。というより、魔法が解けて現実世界に戻るのが惜しかったのかもしれない。
時間にすれば数分の出来事。そして、私が見た動くオーロラはそれが最初で最後でしたが、間違いなく一生の記憶に残る体験。オーロラは静かで深い感動を私の心の奥に残してくれたのです。
本物を見る
ところで、私は茶道を習っているのですが、お茶の先生は「本物を見なさい。」とおっしゃいます。茶道の世界では抹茶椀や茶杓、なつめなどの茶道具は、古い物や、有名な作家が作った物があり芸術作品でもあります。
私には有名な人が作った物でも違いが分かるという訳ではありません。ですが、分からなくても本物を見る事で目が鍛えられるというのです。本物を知らなければ、本物でない物との見分けもつかないと。
イタリアのベネチアに行った時、お客様の中には「わー!ディズニーシーみたい!」とか「ディズニーシーと一緒だ。」と言う方がいます。口には出せないけれど私は、「ベネチアが本物で、ディズニーシーはマネてるだけで全く違うし、一緒にしないで!」と思っていました。でも、ディズニーシーしか知らないとそう思うのかもしれません。
同じ物でも映像や写真で見る物は違うし、レプリカは似てはいても全く別の物です。やっぱり、本物には本物の良さがあり、実際に自分の目で見ないと伝わってこないものがあります。
オーロラも私が実際に見たオーロラは、動いていたけれどもグリーンだけだったので、テレビなどの映像の方が赤い色や動き方も大きくて綺麗かもしれません。でも、やっぱり実際に自分の目で見たオーロラは感じ方が全く違うのです。
「本物を見る・本物を知る」
お茶の先生が教えてくれた事ですが、全ての事に通じる大切な事だと思います。
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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