「もっと英語を話せたらいいなぁ。」
そう思う人も多いのではないでしょうか。
書店で自分に合った本を探したり、YouTubeなどでの学習動画を見たり。
そこでこんなことを聞いたことはありませんか?
出会った人と挨拶をするとき、日本人は決まって
「“How are you?”(お元気ですか? or 調子はどうですか?)と言う。
でも実際、ネイティブの間では “How are you?”なんて言わないよ。」と。
英語学習の本を出している人であったり、バイリンガルの人が動画サイトでそう言っていたりするのを聞いたことがありませんか?
英語を第二外国語として学習する私達は、なぜその人たちが「使わない」と言っているのか、その「理由」を知っておく必要があると私は思うのです。
“How are you?”って使わないの?
日本で使用されている小学や中学の英語の検定教科書では、“How are you?”の表現が多く使われています。
でも本当に現代のネイティブは使っていないのかと聞かれれば・・・
答えはノーです。
つまり、「使っている」ということ。
英語ネイティブの声優・ナレーターであり、NHKのビジネス英語などの制作にかかわっている友人に聞いても、
「普通に使うよ」とのこと。
また、私はAGT(Amearica’s Got Talent)というテレビ番組をよく観ています。
一般の人がステージで特技を披露し、4名の審査員がYes/Noの判定を下すというオーディションのような番組です。
その番組でも、How are you?がよく使われているのです。
ステージに出てきた一般人に対して、審査員が “Hi, how are you?“と聞いているのです。
もしも、本当にHow are you?が時代遅れの古臭い表現であれば、ネイティブも使わないと思うのです。
でも普通に使われている。
それはどういうことなのでしょうか。
“How are you?”は使わないという本当の理由
実は、「“How are you?”なんて使わない」と言っている人たちは、全くそのフレーズを使わないと言っているのではなく、
「親しい人同士の間では、もっとカジュアルに言うんだよ。」
ということを言っているのです。
つまり、
“How are you doing?”
“How’s it going?”
“What’s up?”
など、 友人同士のような親しい間柄の場合は、「“How are you?”よりもっと親しくカジュアルに言うことの方が多いし、その方がナチュラルだよ。」ということを言っているんですね。
そこを理解せずに「 “How are you?”なんて言う人はいないんだ。古い英語なんだ!」と早合点してしまうと、大きな間違いを生んでしまいかねません。
例えば、相手が明らかに目上の人であったり、年上の人であったりした場合。
“Hi, I’m Cozy. What’s up?”
(やあ、コージーだよ。調子はどうだい?)
なんて言ったら、眉をひそめられてしまうかもしれません。
あまりにもカジュアルすぎて馴れ馴れし過ぎてしまうからです。
英語には日本語のように、敬語もなければ尊敬語もない、なんてよく言われますがとんでもないです!
英語にだって、その場その場に合った表現や使い方があるのです。
英語にだってTPOはある
ここで私コージーの恥ずかしい体験談を。
アメリカへ移り住んだばかりの、まだ年端もいかない10代の頃、英語もたどたどしかった時代のことです。
私は、友人のお父さんが運転する車の後部座席に乗っていました。
助手席には友人のお母さん。
二人は私に色々と話しかけてくれたのですが、英語がまだよくわからなかった私は「ちゃんと答えなくちゃ」と頭はフル回転。
そんな状態で、二人に向かってつい “Are you guys…?”と口走ってしまったのです。
なんということでしょう!
初めて会った友人のご両親に対して “guys”と発してしまったのです。
二人はお互いに顔を合わせて怪訝な表情。
あ…、ヤバイ…これはヤヴァイ…
一瞬で不穏な空気を感じました。
その後の車内は独特の緊張感。
でも友人は、「ま、別にネイティブじゃないからいいんじゃない?」って感じ。
このとき、やっぱり表現の使い分けは大事なんだと痛感したのでした。
“How are you?”は、結構万能
さて、肝心の How are you? ですが、やっぱり普通に使います。
A: Hi, Anette. How are you doing?
B: Hi, Ken, how are you?
のようなやりとりは普通に行われます。
また、 友達同士の“How are you?”には、本来の「お元気ですか?」の意味というよりは、単なる挨拶という意味合いがあるため、上記のように特に “I’m good.”など返答せずに挨拶だけでやりとりすることもあります。
“How are you?”は、親しくない間柄の人や目上の人にも、また友人にだって使えるとても便利な挨拶。
でも、 “How are you doing?” になると、もう少しカジュアルな表現となります。
さらに「親しさ」に重きを置く場合は、
“How’s it going?” や
“What’s up?”
のようになってきます。
このようにとてもカジュアルに聞かれた場合、その返答はたいてい
“Nothing much.”
“Not much.”
のように、「特になにも」となり、
多くの場合は続いて、
“Just relaxing.”(ただ寛いでいるだけだよ。)
“Just as usual.”(いつもどおりだよ)
のような返答が一般的です。
でもこれらは「親しい間柄」で使うようにしましょうね。
お互いの関係が微妙な場合はやっぱり、
“How are you?”が無難です。
このように、お互いの関係で挨拶の仕方も変わってくる英語って面白いですね。
情報を正しく知る力
たくさんの情報が溢れている現在。
ただ 「“How are you?”は使わないよ。」という言葉じりだけを捉えるのではなく、
「どうして使わないのか」「それはどういう場合に使わないのか」と、ちょっとだけ一歩踏み込んで考えると、より英語の使い方がわかるようになりますよ。
そういえば、とあるネイティブからこんなことを聞いたことがあります。
日本人に “How are you?”と聞くと、必ず
“I’m fine, thank you.”と返ってくると。
みんな口を揃えたように、 “I’m fine.”と言うと。
「これは英語の教科書がそうだから。」とよく言われるのですが、それは昔の話。
今の教科書は
“I’m OK, but I’m sleepy.”(元気だけど眠いよ。)
“I’m great.”(調子いいよ。)
“I’m tired.”(疲れているよ。)
など、fine以外の表現も多く使われており、その先の会話に広げられる様になっています。
みなさんも、 “How are you?”と聞かれたら、 “I’m fine.”だけではなく
A: How are you? (元気?)
B: I’m OK, but a little sleepy.(元気だけど、ちょっと眠い。)
A: Oh, did you sleep well last night?(あら、昨夜はよく眠れた?)
のように、次の会話へと続けられるような返答をすると、もっとナチュラルにコミュニケーションが取れるようになりますよ。
その場の状況を考えて、適切な英語を使っていきましょう!
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。