今回は、アメリカでの医療についてお話したいと思います。もちろん州によりいろいろな違いがあると思いますが、今回はニューヨーク州のお話をしますね。
まず、医療を受けられる場所について、大きく2つに分けて、ドクターズ・オフィス(開業医院)と、ホスピタル(総合病院)があります。
何か具合が悪い時、まずはドクターズ・オフィスに行きます。このドクターはプライマリー・ドクター(家庭医)と呼ばれ、家族ぐるみでお世話になり、個人のあらゆる医療情報を持っているドクターです。
そしてこのドクターに、どこが痛いとか、どう具合が悪いとか告げると、必要のありそうな専門医に紹介してもらえ、そしてそれが個人のドクターズ・オフィスだったり、ホスピタル(総合病院)だったりします。
このプライマリー・ドクターに行く以外にもう一つ、ニューヨークで最近流行しているのが、アージェント・ケア / ウォーク・イン・ドクター(予約無し、飛び込みで入れる開業医)です。
ブロードウェイ沿いなどに、あちこちに見られるようになったのですが、とにかく具合の悪い時に飛び込めば、レントゲンや、投薬等、すぐに何かしてくれます。ここ数年で増えてきて、今住んでいるところからは、徒歩15分圏内に3軒はあります。
プライマリー・ドクター(家庭医)に行く際、普通、予約を取ってからなので、その予約が10日先や2週間先だったり・・・、そしてそこで紹介してもらえたドクターが人気があれば、その予約が取れるのが1ヵ月先だったり・・・、そしてそのドクターからのリクエストで、CT スキャンやMRIを受診することになっても、その予約がまた、また更にその1ヵ月先だったり・・・・と、とても時間がかかったりします。
その上、途中に、8月の長い夏休みや、クリスマスのホリデーシーズンが挟まれば、もっともっと期間が伸びます。なので、そんなの待ってられない!という人々にとって、この、ウォーク・イン・ドクターは、救急病院というわけではありませんが、予約なしで診てもらえるので、とてもありがたいものです。私も、実は、アージェント・ケアには随分とお世話になっています。
ただ、以前にも書きましたが、風邪をひいた位では、病院には普通行きません。自分で、水をたくさん飲んで、熱を出して汗をかき、治します。
日本のように、国民健康保険がないので、自費で保険に入っている人でない限りは、非常に高い医療費を払うのを節約するためです。気管支炎や肺炎でさえ、自分自身で家で治した人を、何人も知っています。
余談ですが、日本では、風邪をひかないように、と小雨でも傘を差しますが、こちらでは、雨が降っても、傘などいちいちさしません。濡れたら乾かせばいい、と思うからです。まあアメリカ大陸が日本と比べるととても乾燥しているから、という理由は確かにありますが。
病院のお話にもどりまして、救急車の値段も、日本では無料と言うのが定着していますが、日本以外の国では、そんな事はまずありません。前回の記事と被りますが、ニューヨークで救急車を1度呼ぶ料金は、確か2年前に700ドルから900ドルに値上げされ、先週のテレビのニュースでは、900ドル(約12万円)からさらに約50%値上げされ、1380ドル(約186,000円)になるようです。これは基本料金ですから、必要によってそれ以上かかることもありそうです・・・。
以前、知り合いから聞いた恐ろしい(?)っちゃ恐ろしい、笑える話なんですが、家族が具合が悪くなって救急車を呼んだ時に、どこをどうミステイクしたのか、救急車がなんと同時に2台来たそうです。
1台目は、保険でカバーされることになったのですが、2台目は、どうしても自費で払えと言って聞かなかったそうで、先方のミスであるはずなのに、患者側に負担を強いるなんて、本当にひどい、と言って、結局は払わないで済んだそうですけれども。
こちらは具合が悪くて緊急で呼んでいるときに、そんな金額の請求が来たのでは、おちおち病気にもなっていられませんよねぇ。
もう一つ、恐ろしい(笑)笑える話を。どこかのブログで読んだのですが、アメリカでこんなことがあったそうです。盲腸手術の時のドクターが患者へ尋ねたジョーク、「腎臓いる?ちょうどその辺切るから取り出しとこうか、結構高く売れるんだよ!」
日本では、手術の前に、こんな心臓が止まりそうなジョークを言って笑わせてくれる手術医には、まだ出会ったことがありませんが、アメリカ人は気性が明るいのでしょうか。手術の前に気持ちを和ませてくれるのは、ありがたいことですけれどね。
まあ、病気にならないのが1番。お医者さんに行かないで済むように、毎日の運動や栄養配分に気をつけて、楽しい毎日を過ごして参りましょう。春はすぐそこですね。
それではまた来週♫
Kayo
P.S.
日本では、年配の方たちが集まると、どれだけ自分の具合が悪いか、どれだけ頻繁に病院へ通っているか、自慢話のように聞かされますが、こちらではありえないことです。アメリカでは、通常、自分の健康については、明らかにプライベートなことなので、あまり人前では話さないようです。人間として、普通に健康である、ということがとても大事で、たとえ具合が悪くても、健康であるように見せようと、強気で頑張るアメリカ人が、とても多いです。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。