「Bed Bugが出たらしいよ」
「えっ!やばいね!」
Bed Bugは日本語ではトコジラミとか南京虫というそう。たぶんそれを聞いても???って感じですよね。見た事も聞いたこともないのが普通。
Bed Bugはオーストラリアのホステルやバックパッカーの宿などで問題になっている虫。刺される(血を吸われる)と激しいかゆみと腫れが1,2週間続く。駆除するのも大変らしい。
そのBed Bugがスタッフの寮で出たというのだ。ここは、オーストラリアのハミルトン島。話を聞いたのは私が働くホテルでだった。
Bed Bugがホテルの部屋にでも持ち込まれたら大変。部屋丸ごと、あるいは1フロア全て長期間使えなくなるかもしれない。ホテルにとったら大損害だ。
Bed Bugが出たという寮の部屋は、住民は退去させられ駆除のための徹底消毒が行われたという。「部屋も出なきゃいけないの? Bed Bugって大変なんだね~」
その時の私は、まだ他人事で聞いていた。
まさか、自分がBed Bug事件に巻き込まれるとはその時、思いもしなかったのだ。
楽しいパーティーから一転…
ハミルトン島で働くほぼ全員がタイプは色々あるが寮に住んでいる。寮は基本ルームシェアで1部屋を2人でシェアする。
最初は6畳位の暗くて狭い部屋だったが、その後、長屋風の部屋にお引越し。床は白いタイル張りで、広さは12畳くらい。ベッド2つあっても余裕がある。そして、テーブルと椅子もあった。
キッチンも普通のアパートにあるキッチンくらいの大きさがあって、冷蔵庫も2段で結構入る。シャワーもトイレも部屋の中についていて快適!部屋も明るいし、前の所とは大違い!
その当時のシェアメイトは韓国人の女の子。英語はあまり話せなかったけれどかわいくて、とてもいい子だった。
ある日、みんなで集まってご飯を食べようという事に。最初は友達数人だったが、「あの子も呼んでいい?」と、友達が友達を呼び、またその友達が友達を呼び…という形で結局10人を超える大人数のパーティーに!
みんなの中で部屋が一番広いのは私たちの部屋。という事で私たちの部屋にみんなが集まったのだが、いくら広めの部屋といっても10人も集まれば部屋はいっぱい。
もちろん椅子もそんなにない。椅子がない人たちはベッドがソファー代わり。持ってきた料理やお菓子をベッドの上で食べる。お酒もすすむと、みんなテンションもあがって飛び跳ねたり、寝転んだり…。
ワイワイと盛り上がり楽しいうちにパーティーは終了。酔いもまわっていい気分でベッドへ。
と、ここまでは良かったのだが…
ここからが悪夢の始まりだった。
その夜、というよりその夜以来、眠れなくなってしまったのです。
悪夢の始まり
「かゆい!」
かゆくて眠れない! 蚊ではありません。ベッドに何かいるのか、腕やら脚やらムズムズするし、痛がゆい!
そう。あのパーティーの時。みんなが来て、ベッドに座ったり寝転んだりした。「きっとあの時に…誰かの服かバッグについてきた?まさかBed Bug?」
私にはそう思う心当たりがあった。パーティーに来たうちの2人がBed Bug が出たのと同じ寮から来ていたのだ。
それにしても、かゆい!眠れずにトイレに行ったり、ウロウロしていると、ルームメイトも起きてきた。やっぱり彼女もかゆくて眠れないと。
彼女は肌が弱いからなのか、刺された跡が腫れて別の痕ともくっついて、腕中が真っ赤に腫れている状態。
その日から、Bed bugかダニか分からないが、その見えない者たちとの戦いが始まった。
まずは、スーパーで殺虫剤を買ってきてベッドにかけまくる。→ 効果ゼロ!全く変化なし。
やはり表面だけではダメだと、日本から中まで注入できる針付きタイプの殺虫剤を送ってもらう。→ 少しましになった感はあったものの、数日たてば一緒。
もはや夜寝るのが恐怖にさえなった。毎晩、眠る事ができずイライラ。ストレスもたまる。ムールメイトは、首や顔までさされて赤く腫れている。フードで首や顔を隠すようにして、かわいそう…。
新たな戦いが勃発?!
自分たちの力ではどうしようもないと、寮を管轄しているStaff Accommodationへ相談に行った。入り口のカウンターで暇そうにしていたおばさんスタッフに声をかける。
私:「ベッドにBed bugか何かいるみたいで、刺されて。かゆいし、夜も眠れないんです。」
スタッフ:「えっ?! Bed bug?! Bed bugが出たの?!」と驚いた様子
私:「Bed bugかどうかは分からないですけど、何かにかまれました」と腕を見せる。
スタッフ:なぁんだという顔で「あ~、Bed bugか分からないのね。Bed bugだったら大変よ。すぐに消毒しなきゃいけない」
私:「Bed bugがいるかは分からないけど、何かいるのでベッドを消毒してもらえませんか?」
スタッフ「Bed bugがいたらね。Bed bugが見つかったら捕って、ここに持って来て。Bed bugだったら消毒に行くから」
(えっ?? 今、何て言った? Bed bugを見つけて持ってくる? 私が? 捕まえろって?!)
英語の聞き間違いかと思った。それで、
私:「あなたは私たちが自分でBed bugを見つけて捕まえないといけないと言ってるんですか?」と聞いてみた
スタッフ:平然とした顔で「そうよ。Bed bugは黒くて、これくらいで見えるから。捕まえて袋にでも入れて持って来て」と、人差し指を小さく丸めて見せた。
(はぁ?! 何で自分たちで見つけなきゃいけないの?! てか、Bed bugがいるかどうかなんてどうでもいいわ! 何かいるんだから何とかしてよ!)
毎日かゆくて眠れずイライラしていた私は、彼女の言葉でさらにイライラがヒートアップ!
私:「Bed bugかどうかは関係ないし!でも、Bed bugかダニか何か知らないけど、ベッドに何かいるのは確かだよね!私もルームメイトも噛まれて酷い事になってる。消毒とか殺虫剤まくとかないんですか?!」
スタッフ:「Bed bugじゃないと業者を呼ぶことはできないわね」と変わらず冷たい態度
私「じゃあ、せめてマットレスを代えてもらえますか?」
スタッフ:「マットレス代えたら、そのマットレスどうなるの~。他の部屋には使えないでしょ? それはできないわ」
またまた(はぁ?!)怒りもMax! この人何言ってるの?
私:「それ私たちには関係ない事だし!マットレス使えないとかそれはそっちの問題でしょ?! そんなの知らないよ!こっちは眠くてかゆくて仕事もちゃんとできない位なんだよ!何かあなたができる事ないの?!」
スタッフ:「ないわ。Bed bugがいたら別だけど…」とまたもBed bugをだす。
私「OK. 分かったわ! あなたはBed bugがいないと何もしてくれないんだね!Bedbug見つけて持ってくるわ!」と捨て台詞をはいてStaff Accommodationを後にした。
部屋に戻るとすぐ、ルームメイトと一緒にマットレスをひっくり返し、ベッドの下や横、本棚の裏まで細かくチェック。どんな物かも分からないBed bugを必死で探した。
しかし…Bed bugらしい物は何も見つからなかった…。
そしてまた、あの恐怖の眠れない夜が来た。
してやったり
次の日、どうにもならない私は最終手段に出ることにした。職場の上司に相談するのだ。
プライベートの事と言えば、プライベートの事だし、仕事とは関係のない事とも言えるから相談するのは畑違いかとも思った。
だけど、眠れなさ過ぎて、仕事中もイライラしたり、眠気が襲ったりして仕事にも支障が出てきている。そうなると、関係ない事でもないかもと自分を納得させ、マネージャーの部屋へ。
これまで駆除しようと頑張った事、Staff Accommodationに行ったけど何もしてもらえなかった事、そして、このままでは仕事もいい仕事はできないと相談した。
仕事に関係ない事と軽く流されるかと思ったら、彼はしっかりと話を聞いてくれ、すぐにStaff Accommodationのマネージャーに電話をかけてくれた。「マネージャーが話を聞いてくれるって。アポ取ったから、仕事が終わったら行って話したらいい」と。
おお~、少し光が見えてきた!
仕事が終わって、再びStaff Accommodationへ。昨日バトルした意地悪おばさんスタッフがまた座っていた。“Hi.” とだけ言って、冷たい視線を送りながら彼女の前を通り過ぎ、奥のマネージャールームへ。何事?というような目で見送る意地悪おばさん。
(昨日の事、マネージャーに言ってやるからな!)そんな気持ちだった。
Staff Accommodationのマネージャーとは話すのは初めてだったが、小さい島なので見た事はある。30代後半くらいのガッチリとした体格で黒く焼け、はつらつとした感じ。
私は、自分の上司に話したのと同じように、これまでの経緯と昨日意地悪おばさんスタッフに言われた事を伝えた。そして、本当に眠れないし、かゆいし辛いので、何とかしてほしいと訴えた。
彼も私の上司同様、平社員が言う事と聞き流す事なくしっかりと話を聞いてくれた。そして「何をしたらいい?」と。
部屋を消毒して欲しいと言ったが、それはやはり無理だと言われた。でもマットレスの交換はできると言って、すぐに電話をかけ手配してくれた。マネージャーになる人はやはり仕事が早い!
その日の夕方には、部屋に別のマットレスが運ばれてきた。
これで、ゆっくりと眠れる…。
しかし残念ながら、眠れたのは数日。また、かゆみが始まったのだ。やっぱり、部屋に何かが残っていたのだろう。
その時、「キャー!!何かいるー!!!」とルームメイトの叫び声が。
「なんかいた!」とベッドサイドの本棚を指さす。
「え~!何?何?」二人でギャーギャーわめきながら、本棚を少しづつずらしていく。
と、
いたー!!! 小さくて黒い物体が出てきた!! (これがBed bug?)よくは分からないが、確かにStaff Accommodationの意地悪おばさんが言ってた1㎝位の大きさ。
すかさず、殺虫剤をかけてみる。逃げる黒い物体。ギャー!逃げる2人。
わめきながら何度か攻防を繰り返し、ようやく動かなくなる黒い物体。本当は早く捨ててしまいたかったが、これがBed bugかもしれない。あの意地悪おばさんスタッフに見せなくてはいけない。
しかし、そのまま置いておいては死んでなかった時が怖い。という事で、2人で考えた結果、空き瓶をかぶせて置いておく事にした。これなら万一死んでなくても、瓶の中で死ぬだろう。
その後も、まだいるかもしれないとまたベッドの下や本棚などくまなく調べた。すると、あと2匹TVの裏側とベッドの裏から出てきたのだ。結局、黒い物体は3匹見つかった。
次の日、私はその3匹の黒い物体をビニール袋に入れてStaff Accommodationへ。
「これ部屋にいたよ!Bed bugだよね!」とあの意地悪おばさんスタッフに文句ないよね!と言わんばかりに突き付けた。
その袋を見た意地悪おばさんスタッフ。急に顔が真剣になり、「Bed bugだわ。新しい部屋を手配するからなるべく早く部屋を出て。今から帰ってすぐ準備して。」と
私:「なるべく早くって?」
スタッフ:「明日移動できるなら明日。移動する前に、服とかシーツとか洗えるものは全て洗って。乾燥機は一番高温にして乾燥させて。本や雑誌はなるべく捨てて持って行かない。次の部屋にBed bug持ち込まないでよ!」
Bed bugが見つかったら、今度は急にばい菌扱いだ。迷惑をこうむっているのはこっちなのに…。
消毒の後、同じ部屋に戻れないか聞いてみた。消毒してもBed bugの卵には効果がないらしく、卵がふ化した所で再度、消毒をしなければいけないという。そのため、1ヶ月位は部屋は封鎖される
らしい。
私たちは言われた通り、洗濯できるものは全部洗濯、乾燥させ、捨てられる物は捨て部屋を出た。
後日、私たちがいた部屋に行ってみると、外の窓はビニールで覆われていた。白い防護服を着た人が噴霧器のような物をもって部屋に入っていく。
Bed bugとの戦いがやっと終わった。
はぁ?!という時がチャンス!
自分の意見を主張したりする事は、日本では敬遠されがち。私の今回の行動は、日本だとクレーマーとも受け取られたかもしれない。
でも、海外では「自分の意見を言う事」というのがとても大事。それが、正しいとか間違ってるとかは関係ない。「私はこんな考えを持ってます」を伝える事が大事なのだ。
と言う私も、日本では自分の意見はなかなか言えない。言いづらい雰囲気があるのだ。正しい(と思われてる)事を言った方がいいよね?周りと違う意見は言いづらいな、とか考えてしまい発言するのに勇気がいる。
一方、海外は、今回のように「はぁ? 何で?」というような事も堂々と言ってくる。だからこっちも「私の考えの方がまともじゃない?」と意見を言いやすい。
そして、どんな意見を言っても「あなたの意見は間違っている。」などとジャッジされる事がない。自分と違う意見でも「へー、あなたはそういう考えなのね。私はこういう考え方。」で終わる。
どっちの考え方もありで、どっちでもOKなのだ。この「どっちでもOK、どんなのでもOK」というのが発言を気楽にさせていると思う。
そして、マネージャーなど目上の人でも、対等な立場で話を聞いてくれるし、意見を言う事が許されている雰囲気がある。意見に賛同してくれたら、今回のマネージャーたちのようにしっかり行動も起こしてくれる。
京都の外資系ホテルで働いていた時、私はなぜかスイス人の副支配人と話す時の方が、日本人の係長と話す時よりずっとリラックスして自分の考えを伝える事ができていた。英語マジックなのかもしれない。英語では自分の意見を否定されない、どんな意見でもOKという安心感があるのだろう。
とはいえ、このどんな意見でもOKという安心感を得るようになるまでは、「この考え方でいいのかな?」とか「こんな考え方おかしいかな?」とか思いながら、恐々意見を言っていた。
以前の私のように英語で自分の意見や考えを言う事は抵抗があるなぁと思う人は…
「はぁ?! そんな事ある?!」という事が起こった時がチャンス!
これは私の経験上ですが、はぁ?!って事が起きると、頭に血が上ります。そして、言い返したい欲求も高まります。そうすると、脳が活性化するのか、普段よりも英語がスラスラ出やすくなるんですね~!そしてそんな時には文法がどうとかはどうでもよくなります。
相手にムッとして自分の意見を主張しながらも、頭の片隅では(え~、いつもよりめちゃ英語でてくるやん~!)と喜んでる自分がいるんです。
このムッとしたエネルギーや言い返したいpassionを利用して、ぜひ自分の意見を言う練習をしてみましょう!どんな意見を言ったとしても、大丈夫。どんな考え方でも大丈夫。すべてOK!と分かるでしょう。
海外で「はぁ?!」ってことが起きたら、それはチャンスですよ!
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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