アメリカの軍人と職業的に英語で話す機会が多くなり、英語表現について気づかされることが多くありました。
その経験や知識が私の財産になっています。
米軍は、入隊した若者たちを、数か月間、厳しい訓練をして、プロの軍人にふさわしい思考力と技術、話し方を習得させます。コミュ力を重視しています。
軍の学校では、教官がすべてのことに関して、
“Do you understand?”
(お前は理解したか)
と確認します。
答えは、もちろん
“Yes, sir(ma’am)”
または、
“Yes, Sergeant”
(軍曹、わかりました)
です。
同僚同士では、“Do you understand?”(わかったか)は使いません。上から目線で、失礼だからです。また、理解する能力があるかどうかを問うことも、非常に失礼だからです。
そこで、米軍人とイベントや訓練の調整をするときなどで、説明を受けたときに、
“I don’t know”
(知りません)
は絶対に使いません。
その言葉を、口にしてはいけないからです!
<“I don’t know”は、言ってはいけない>
以前のSwatchは、知らないことについて説明を受けたときには、正直に
“I don’t know”
(知りません)
と答えていました。
理由は、「アメリカ人は率直な答えを期待している。知らなければ、知らないと、白黒はっきりさせないと優柔不断な人間にみられる」と勝手に思っていたからです。
知らないことがあれば、何回でも“I don’t know”を繰り返していました。
しかし、そのフレーズは、繰り返すごとに意味が自動的に変化していくのです。
“I don’t know”(知りません)
↓
“I don’t know”(知る訳ないだろ)
↓
“I don’t know”(興味ないんだよ)
ドキッとしますね。「白黒させるために、はっきりものをいう」とは意味が違いますよね。
“I don’t know”は、大人が口にすることが「恥ずかしい」と思ってください。
知らないことを自慢する大人はいません。“I don’t know”(知りません)は、自分の欠点を相手に暴露し、さらに欠点を自慢していると同じなのです。
卑近な例を挙げると、日本人でも、ある程度の年齢に達すれば、「知りません」という発言はしなくなります。
たとえ知らないことがあったとしても、「知らない」ではなく、「そのことについて、少し説明をしてください」と話を続けます。
知らないことをアメリカ人から告げられた時に、論理的に考えれば、すでにそのことについては「知っている」ということになります。
なぜなら、相手に言われた時点で知ったことになるからです。
「知りません」というのではなく、そのことについて詳しく説明してくださいと発言する方が、話が前に進みます。「知らなかった」は言い訳であり、前には進めません。
<I don’t knowよりI can do it!で行こう>
“I don’t know”(知らない)と発言すれば、実は、仕事の面では知らなかっただけでは済まなくなります。連絡方法が悪かったのか、何故伝わらなかったのかなど、責任まで言及されるかもしれません。
知らなくても、そこから知る努力をすれば、仕事としては成立します。
“I don’t know”「知らない」と、自分の無知を晒す必要はないのです。プロフェッショナルな場に、「知りません」という意味のない発言は必要ないのです。
たとえ知らなかったとしても、今、その話題が提供されたのであれば、さらに詳しく説明を受け、その場で分析をして自分の判断を相手に伝える。
それが米軍人の仕事であると教えられたのです。
“I’m sorry I don’t know”「知りません」は、言ってみれば、最悪の自己否定の言葉です。
否定的な考えは、さっさと、頭から消してしまいましょう。
今まで使い慣れていたものを捨てるためには、その代替となるものを用意しなければなりません。
それに代わる新しい考え方が、“I can do it!”です。直訳すれば、「私は、それができます」です。
実は日本人が日常で良く使っている言葉とほとんど同じ意味なのです。それは、「大丈夫!」です。相手にとって、非常に頼もしく、プロフェッショナルに伝わります。
そういってしまえば、周りが協力してくれます。ポジティブな態度で取り組むことが大きな一歩です。
これからは、あなたも、常に、“I can do it!”(大丈夫!)のプロ精神で行きましょう。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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