前回は、See you later!で失敗した、英会話の恥ずかし体験をお話ししました。いろいろと反響をいただき、読んでいただいて嬉しいやら、恥ずかしいやら複雑な気持ちでした。
英語で仕事をしたり、コミュニケーションをとる生活を続けていると、同じような体験が多くあります。
ある意味、英語でも「空気を読む」が多くあるということです。
日本人は空気を読むのが比較的得意なはずなんですが、英語のフレーズとなると、空気を読むのではなく、そのフレーズが辞書ではどういう意味なのかにこだわってしまうことが多いようです。
今回は、英語の直接的な意味にこだわってしまい、またまた失敗してしまったフレーズをお届けします。
<Let me think about it! 考えさせてよ>
英語で日常会話ができるようになると、色々な表現を使ってみたくなります。新しく覚えた英語のフレーズをアメリカ人に使ってみたくて、うずうずしてきます。
そんな新しい英語表現を使って、自己満足するのがオチなんですが、学習時のドキドキ、覚えたてのワクワク感、使ってみたらアメリカ人の反応はイマイチなんてのもざらです。
そういった試行錯誤を繰り返しながら、アメリカ人の考え方や文化を学んでいくのが英語道。
言ってみれば、あなたは英会話の修行僧です。
フレーズの数が増えていくと同時に、自分の言いたいことが言えるようになると、自分の要求を実現したいという気持ちが湧いてきます。
そして、日本に滞在しているアメリカ人の友達にいろいろと要求を突きつけることになる。
日本人の悪い癖だと思いますが、アメリカ人を独り占めしたくなる。
べったりととした友達関係になりたいと考え始めます。
そうすると、あれをしたい、これをしたいとその友人にリクエストを出すようになる。
一方的な友情関係というか、日本風のいつでも同じことを、一緒にやって満足するという関係を実現したくなるわけです。
そういったことを良く考えてみると、それは日本人だけがしている友情関係の在り方であって、英語圏の国々では、ちょっと珍しいこと。普通ではない関係です。
Let’s go to the new shopping mall next Sunday.
(来週の日曜に、新しいショッピングセンターにいかないか)
などと、誘ってしまいます。
最初は珍しさもあって、付き合ってくれるかもしれませんが、毎週となると、少しフラストレーションがたまるようなお誘いなっているかもしれません。
そもそも、一緒に何かをするとか、群れるとかいう感じがアメリカ人にはないのです。休日は自宅でのんびりと過ごす。何もしないで過ごすというのがアメリカ人にとっては普通のことです。
そこに毎週外出するお誘いをすれば、あなたとの付き合い自体が億劫になってしまいます。
そこで、断りのフレーズの出番となります。
“Let me think about it”
(考えさせてよ)
を、あなたならどういう意味にとりますか。
“Let me think” は、考えさせてくださいと言う意味です。“think about it”のitは、「私が相手に言ったこと」をさします。これが実は、大事な意味を持ちます。
さらに、“think about ”と“think of ”の違いを考えてみると、面白いことが分かります。
“think about ”は、私が言ったことをざっくりと分かったことを意味しています。
一方、“think of”では、計画したことや、物事が確定しているという意味が含まれます。
aboutは、「ざっくりと言えば」、ofは「深く考えたこと」を意味します。
ですから、“let me think about it”は、「君が言ったことを考えさせてよ」となり、言ったことが具体的に認識されていない(真剣に何をするかを考えていない)ことになります。
それを考えたところで、実行することには絶対ならないのです。
つまり、“Let me think about it”は、「具体的には何も考えない」=何もしない!ことなのです。
勘違いしそうな表現です。
<I wish I could, but そうしたいんだけどね>
“I wish I could”は、覚えたときには、本当に便利で良く使いました。
自分の言いたい気持ちをす~っと言えた時の快感がありました。
“I wish”は、「~だったらなぁ」という願望を表すときに使います。
ちょっと文法的に言えば、仮定法過去や仮定法過去完了を伴うことが多く、「現実には起きなさそうなことを、単なる願い」として表現することが可能です。
だから、単に願うだけなので、言いたい放題の無責任なフレーズになります。
その文の形を短くしたのが、“I wish I could!”(できたらいいなあ)です。その文末に、現実にひきもどすような逆説の“but”が付きます。
“but”には、注意が必要です。「逆説」といってそのあとには意味が反対のフレーズが続くからです。butの持つ意味は非常に強烈です。
日本人は、“but”を多用して、”but~, but~”(でもね、でも、、、、)と2つ以上の文章をbutでつないで話したりします。文章ごとにその逆のことを言うって、理解できませんよね。
日本人の英会話の中の間違いでは、良くある話です。
“but”を使ったら、逆の意味になると覚えていただければ十分です。
そもそも何かを実行するときに、英語では“but ~”とは絶対に言いません。
“but”が耳に入ってきたら、それは実行する気がないのだと考えるのが妥当です。“I wish, I could ”(思っていることが実現するといいなあ)という甘いフレーズにのらないことが大切です。
<I’ll have to get back to you on that! 後で返事します>
最後に、実現しそうで、まったく実現可能性がない表現を紹介します。
“I’ll have to get back to you on that!”
(後で返事します)
です。
さて、この英文を中学校で習った「日本風」文法で説明していきましょう。
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I’ll:I willの短縮形、口語で使います。意味は、将来のことを表します。
have to:しなければならない。mustと同じ意味。
get back to you:~を相手(あなた)に返す、返答する
on that:それについて
上記の解釈でこの文を翻訳すると、
「そのことについて、私はあなたに返答しければならないでしょう」となります。
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翻訳の仕事を長くやっているとこのような直訳はしませんが、意味は通じます。
なんとなく、「返答をします」と約束しているように聞こえます。
結果、Swatchは返事をくれるものだと思って、首を長くして待っていて、そのまま無視された経験があります。コミュニケーションの大失敗ですね。
さて、これを長年英語学習携わってきたSwatch的な解釈すると………..次のようになります。
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I’ll:I willの通常形。I willと会話で使うことは稀です。
willは、「今思いついた」という感覚があります。
have to:相手が「こういう状況だから、そうするしかない」という意味です。
自分にはその考えはなく、相手に対して気を使っている状況です。
get back to you:~を相手(あなた)に返す、返答する意味はかわりませんが、何を明確に伝えたいかを避けている表現です。
on that:thatは、ある特定なものを指しますが、ここでは本人以外はわからない。
つまり相手に誤解させる言い方。itとすれば、「あなたの言ったことすべて」になる。
以上のことから要約すれば、「私は、あなたの話をきいて、きっとあなたはこういうことをしたい(that)と思っていることは理解しています。
「あなたの考えていることや状況はわかるので、返事はしなくてはならないだろうと、今考えたところです。」
そして、本心は、「でも返事はしませんし、やる気もありません」と考えています。
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まあ、回りくどい解説ですけど、ネイティブはそういった思考回路で発言しています。
つまり、わけのわからない否定形です。それを聞くと、アメリカ人は空気を読んで、「だめなんだ」と分かるわけです。
次の瞬間、アメリカ人は、お礼の言葉を発し
“Thank you for your consideration”
(考えてくれてありがとう)
頭の中は、「可能性ゼロだな」と考えているのです。
しかし、典型的な日本人であるSwatchは、「可能である」と勘違いしてしまったのです。
それが分かるのは、失敗してみないとわからないところがあります。
でも、そういう英語のバタバタ劇がまた面白いのも事実です。英語を楽しんでいきましょう。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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