先日の台風14号では、宮崎も大きな被害を受け、停電や断水、床上浸水になった所もありました。私の所は幸い、短時間の停電ですみましたが、停電になった時にはやはり不安な気持ちになりました。
ところで、
「停電」って、英語で何ていうか知っていますか?
そして、もし海外で停電にあったらどうしますか?
<国全部が停電?!>
実は、私は添乗員時代、イタリア フィレンツェで停電を経験しています。
しかも、台風などの自然災害ではなく、送電線の破損によるもので、イタリアのほぼ全土が停電になるという大規模な物でした。
イタリアの大きさは、日本の本州と北海道を足したくらいの大きさ。そこが全て停電になったと考えると、その規模の大きさ、影響の大きさが分かると思います。
私が停電?と思ったのは朝起きた時。まだ夜明け前の朝5時頃の事でした。
ベッドサイドの灯りも、部屋の電気もつかない。ドアを開けて廊下の様子を伺うと、足元の非常灯のようなものはついているけれど天井のライトは消えている。
窓の外を見ても、見える灯りはほぼなく真っ暗。早朝とはいえ何かおかしい…。
暗がりの中、手探りでスーツケースの中から懐中電灯を見つけ出す。非常用に準備していたのだ。それが役に立った。
灯りを確保したところで、フロントに電気がつかないと電話をかける。
その時返ってきた言葉が“Blackout”。
「停電」だった。その時は“Blackout”が停電を意味するとは私も知らなかった。でも何となくblackとoutの感じから停電の事かと想像ができた。
私:「このホテルが停電なんですか?」
ホテルスタッフ:「まだよく分からないですが、たぶん町全部が停電です。」
その時はまだ、ホテルのスタッフも何が起こっているのか分からなかったのだろう。本当は、町全体どころか、国全部が停電になっていたのだ。
日本では考えられない事が起こるのがイタリア。
それでもその時はまだ朝早いし「そのうち復旧するだろう」と楽観的な気持ちもあった。
それに、今まで停電を経験した事のない私は、停電がどれだけ困る事なのか、その時はまだ分からなかったのだ。
<あれも これも電気がないとダメ>
とりあえず、懐中電灯もあるし、部屋の中では問題ないと思っていた。が、トイレに行った所で、
「え!水が流れない!!!トイレも電気が必要だったの?」
電気が通じていないとトイレも流れない事がある事を初めて知る。
モーニングコールに合わせて、お客様の部屋へ電話をかけ停電している事を知らせる。エレベーターは使えない事、朝食は簡単な物しか提供できない事などを伝える。
皆さん、起きたばかりで、あまり理解されてなかった為かパニックになったり怒りだしたりする人はなく冷静だった。
その日は移動日のため、スーツケースも運ばなければいけなかった。通常はホテルのポーターさんにお願いしてまとめて運んでもらうのだが、エレベーターが使えないとなると、ポーターさんも手でもって階段を使って運んでいく事になる。
ポーターさんだけでは時間もかかるので、自分で持てる人は自分でおろしてもらえるようにお願いする。が、海外旅行のスーツケースとなるとみんな大体20Kg前後。しかも、そんな時に限って泊まっていたのは4階や5階。
年配の方が自分で運ぶのは大変過ぎる。そこで、私がポーターさんと一緒に荷物を運ぶ事に。重い荷物に、階段の上り下り。朝食を食べる暇もなく、朝一からの力仕事は身体に響く。普段何気なく使っているエレベーターのありがたさを痛感したのだった。
しかし、それはまだ序の口。
その日は、午前中フィレンツェ市内観光、午後からイタリアの新幹線ユーロスターに乗ってナポリまで行く行程だった。
現地のガイドさんに会って、少し状況が見えてくる。その時、停電が送電線が破損したらしくフィレンツェの町だけでなくイタリアのほぼ全土が停電らしいという衝撃的な事実を知る。
(イタリア全土って…。そんな事ある?)規模が大きすぎてどうなるのか想像もできなかった。
ガイドさんからの衝撃的な発言はまだ続く。
フィレンツェ観光の目玉であるウフィツィ美術館にも入れないというのだ。入口の手荷物検査が行えない、入場予約の確認がとれないなどの理由により急遽、休館になったとの事。
念のため美術館の入り口まで行って確認する。入口付近は大混乱。閉められたガラス戸には大きな手書きの文字で“Closed”と“Blackout”の文字が見えた。
「電気がないと観光箇所も閉まるんだ…。」
美術館の建物や中の作品には全く異常はないし、天候もいいのに…。やりきれない気持ちが残る。
通常、予定の観光箇所に行けない場合は代替えの観光箇所を案内する。ガイドさんとも話どこか案内できないか探してもらったが、他の美術館、博物館関係も全て“Blackout”により休館。屋外の観光しかできなかった。
しかも、お店やカフェ、お土産物屋さんも軒並み“Blackout”の文字と共に閉店。
本来ならフィレンツェは、職人の街で革製品やマーブル模様がきれいな文具など工芸品が多く、小さなお店巡りも楽しい街なのだ。なのにそれも楽しめない。
ランチを予定していたレストランも“Blackout”で電力が確保できないとクローズ。
もうこの頃になると「あ~、またBlackoutね。」とお客様同士でも普通にBlackoutという言葉が出てくるまでに。
ランチはガスで料理ができる中華料理のレストランが何とかお店を開けてくれ、食事は確保する事ができた。
こういう時、ツアーだと旅行会社が動いてくれるし、団体行動なので、心配や不安はずいぶん軽減されると思う。ただ、それでも前代未聞の大規模停電は、旅行の楽しみを全て奪ってしまった。
変更に次ぐ変更。閉鎖に次ぐ閉鎖。お客様も落胆を隠せないが、こちらもできる限りの精一杯の手配。極めつけは、電車。
フィレンツェからナポリへは新幹線なら2時間半程の距離。イタリアの新幹線はとても快適なのだ。
ところが、電車が動かないとなると、代替えはバス。バスだと約6時間、ほぼ半日の長距離移動になる。高速道路をただひた走りに走るだけ。
だんだんと日も暮れ、ようやくナポリに着くころにはもう外はすっかり真っ暗だった。ただ、ナポリが近づいてくると、灯りが見え始めた。
電気が復旧していたのだ!明かりが灯る夕食のレストランに着いたお客様は、やっとホッとした表情に。灯りはこんなにも人々の心に安らぎや安心感を与える物だったのだ。
ホッとしたみんなが口々に言っていたのは
「電気がないってこんなに大変なんですねぇ。電気のありがたさが分かりました。」
そしてもう一つ。
「Blackoutという言葉は一生忘れないと思います。」
その日一日、どこに行っても目にした“Blackout” の文字。話す度に出てくる“Blackout”という言葉。停電を経験し、身をもって“Blackout”を学んだのだ。
きっと今でも、停電がどこかでおこるたびにBlackoutの言葉とイタリアを思い出しているにちがいない。私もその一人だから。
災害はいつ、どこで起きるか分からないもの。
家に非常用の防災グッズを準備してる人は多いと思いますが、旅行中も何が起きるか分かりません。
私は、懐中電灯とアーミーナイフはいつもスーツケースに入れていました。最近の懐中電灯は小型でも明るい物があるので入れていてもかさばらず邪魔になりません。
アーミーナイフは、用途により色々ありますが、私が使っていたのはハサミ、ナイフ、缶切り、ボトルオープナー、ドライバーなどが付いている物でした。
災害時だけでなく、普通の旅行中も、スーパーや市場で買ってきたフルーツを切ったり、ワインを部屋で飲みたい時などにも使えてとても重宝します。
また、ホテルの部屋に入った時には非常口の確認も忘れないようにしましょう。
家の電気がつき、ガスがつき、水が出て、お湯が出るのは、当たり前のようで当たり前の事ではないんですね。
災害時に気づくありがたさ。普段から忘れずにしていきたいですね。
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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