アメリカの社会で話されている英語は、絶えず変化しています。社会全体が変化すると同時に、言葉自体も変化していると言っていいと思います。
日本で英語を勉強しているだけでは、なかなかその変化の傾向が分かりません。言ってみれば、その変化の研究をする人や教えてくれる人が少ないということです。
現地でコミュニケーションをとっていると、言葉のカルチャーショックを感じることが良くありました。
その一つが、大学での授業で使われるテキストに略語(abbreviation)が多く使用されていること。
ある日の授業で、パラグラフを読むように指示され、
“Your behavior should be IAW your statement.”
の略語IAWを、「アイ・エイ・ダボユー」と音読しました。
次の瞬間、
“You don’t know IAW?”
(IAWを知らないの)
とか
“That’s an abbreviation!”
(それは略語だよ)
と意見が飛んできます。
議論好きのアメリカ人がスルーするわけはありません。
すると、教授が助け舟を出してくれました。
<略語大好きなアメリカの社会>
“Tak, IAW stands for in accordance with”
(タック、IAWは「~に一致するという」略語なんだよ)
と教授に教えられました。
アメリカの社会は、実は略語が非常に多く使われています。フルスペリングすると字数が多くなる。
一瞬で意味が分かる略語は、非常に便利で、学術用語としても大切だと説明を受けた。
それが、アメリカで最初に受けた学問上のカルチャーショックだった。そういった視座を与えてもらい、アメリカの生活を見渡してみると、あるある略語だらけだった。
簡単に略語を説明しておこう。英語には、日本語にはない略語の概念があります。
一般的に略語は、言葉を加工して短くしたものです。それをabbreviation(略語)と言います。
abbreviationで、アルファベットをそのまま読み上げるもの、例えばWHOを「ダブル・エイチ・オウ」と読む略語があります。WHOは、World Health Organization(世界保健機構)で、それぞれの単語の頭文字を並べたものです。これを「頭字語」(とうじご)と言います。
頭字語の中で、それを単語のように読む略語があります。例えば、NATO(North Atlantic Treaty Organization)北大西洋条約機構を「ネイト―」と読みます。このように一つの言葉のように読める略語を「アクロニム」(acronym)と呼びます。
ビジネスの分野では、略語によって効率的に伝える機能的な略語が使われています。
NLT Nov.18
は、
No later than November 18
で、
「11月18日迄に」と締め切りを示します。
<ネットでバズったASMRって何?!>
最近、ネットの世界で癒しを感じるような音と映像を編集した動画があります。それを略語で、ASMRと言います。
ASMRは、Autonomous Sensory Meridian Response の頭字語で、通常は「エー・エス・エム・アール」と読みますが、最近は「アスマ―、エースマー、アズマ―」などとアクロニムのように読む傾向もあります。
日本語の定訳はありませんが、「自律感覚絶頂反応」とウイキ―ペディアでは紹介されています。
アスマ―とは、人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地よい、脳がゾワゾワするといった反応・感覚を言うそうです。
You Tubeで人気のあるアスマ―動画は、雨音、風の音といった自然音、料理で野菜を切るときの音、キャンプでの焚火の音、人(あるいは動物)が物を食べる音、咀嚼音、タイプを打つ音、野球の打球音などがあります。
自然の風景や音を拾った動画も多くあります。海の波の音、風の音、小鳥のさえずりなど、ヒーリングミュージックと呼ばれるものです。
アスマ―にもそういった分野がありますが、ある一つの音を編集し、より感覚に強く訴えるような動画がアスマ―の特徴です。
一度聴いたらはまってしまうような音、人それぞれに感じるところが違い、自分の好みの音に出会った時は、感覚絶頂感が得られるのではないでしょうか。
下記のURLは、長崎バイオパークの「カバのスイカまるごとタイム」という動画で、動物園のカバにスイカを丸ごと食事として与えた、その食いっぷりを編集したものです。1億4000万回以上見られています。
カバがスイカを丸ごと一口でかみ砕くダイナミックな映像と「グシャ!」とスイカがつぶれる豪快な音が気持ちよい動画になっています。
そういった音や映像が、ネット上に多く投稿され、自分のオシ動画が見つかった時には繰り返し視聴するファンが増えているということです。
言ってみれば、それだけ世の中にはストレスをためた人々が多いのかもしれません。誰にも邪魔されず、感覚絶頂感を手軽に得られるのはネット社会に現象の一つです。
ASMRの投稿、ハマりそうですね!
<大谷選手だけに使われるアクロニム>
アメリカのメジャー・リーグ・ワールドシリーズは、大いに盛り上がりました。大谷選手の活躍、肩の脱臼、脱臼のけがを押しての出場と毎試合で大谷選手のことが取り上げられていました。
日本のプロ野球の実況放送と違って、大リーグの実況担当のアナウンサーは、個性豊かな人が多いですね。ドジャースの公式ホームページの動画を観て、大谷選手を絶賛する言葉を見つけました!
詳しくは、Swatchの「大谷選手は最高!を英語でどういう?!」をご覧ください。
公式ホームページの動画で、アナウンサーが叫んでいた言葉です。大谷選手がホームランを打ったときに、“He is the GOAT!”と絶叫していました。「彼は、ヤギだ!」といったのです。(笑)
実は、GOATには、こんな意味があるのです!
G:Greatest (最も偉大な)
O:of (~の中では)
A:All (すべての)
T:Time (時代)
GOATは頭字語でacronymです。意味は、「至上最高」という感じです。
Otani is the GOAT!
(大谷選手は、史上最高の選手です!)
になります。
最高の程度を示すのでTheをつけます。
スポーツ界、芸能界などレジェンドのような感じ大物感を出したいときに、GOATを使います。
大谷選手にピッタリな表現ですね。
文頭でアメリカは変化の国だと書きました。メジャー・リーグ・ワールドシリーズで優勝すると、優勝チームからの選手の引き抜きが活発化すると聞いています。
大谷選手が、決勝進出の時に見せた優勝への執念は、実は優勝を狙えるのは今年しかないというしたたかな計算があったのかもしれません。
来年になればチームメートが引き抜かれ、チームの戦力が下がることを見極め、将来のチーム編成の変化まで読み取った素晴らしい戦略家なのではないでしょうか。
そういった意味で、今年の大谷選手以上の活躍は、今後あるのかは微妙なところです。
であれば、大谷選手をThe GOATと賞賛するのは、今年が最適な年と言えるかもしれません。
“Otani is the GOAT!”を思う存分、リアルタイムで使っておきましょう!
<略語を駆使して、情報社会を楽しもう!?>
今回は、略語(abbreviation)、頭字語(acronym;アクロニム)について、日本語にない概念として紹介しました。
略語の作り方やビジネスで良く使うアクロニムなどは、また紹介させていただきます。
今回は、気になるアクロニムを2つ取り上げました。
ASMRで、SNSでお気に入りの音や映像と出会うのも楽しみです。
大活躍中の大谷選手には、“Otani is the GOAT!”(今世紀最高の野球選手だ)とリアルタイムで応援できますね。
P.S.
平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太からなるNumber_i、初のオリジナル曲「GOAT」
リリース3日間で1000万回再生を突破。
これは日本の男性アーティストのデビューシングルとしては史上最速の記録。
音楽の世界でも、日本から世界に発信されブレイクすることが多くなりました。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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