Hi! 火曜のJiroです。
実は私、まんまとパソコン”修理”詐欺に引っかかりました。
少し前です、額は12万でしたが、多寡の問題ではありません。
(何で詐欺なんかに…注意が足りなかったのか.)
しばらく自分を責めてました。
そんな時、一人の英国人から
In case you’re tricked like that, your bank will compensate you.
(そんな風に騙された場合、今銀行が弁償するよ)
と聞いたんです。
驚きました。
あなたも驚きません?
(もし日本にもその制度ができれば、10万円戻るかも・・・)
と正直すぐ思いましたw。
でも、それと同時に別の疑問が湧いたんです。こんな疑問です。
(なぜ銀行が、共犯でもないのに詐欺被害を補償するのだろう?)
何だか気になり、ネットで調べました。
ところが、最初は日本語で検索していたんですが、なかなか知りたいことにたどり着けません。
(英国政府の新政策なら、英語の一次資料を見た方が手っ取り早いか?)
こう思い、英国の「PSR(決済システム規制当局)」のサイトを見てみたんです。
詐欺被害額の 88%を銀行が被害者に
まず驚いたのが、実績です。
- In the 18 months since 7 October 2024 88% (£316m) of the money lost to APP scams has been reimbursed to victims.
(制度開始の2024/10/7から18か月間に、APP詐欺被害額の 88%(3億1,600万ポンド≒約630億円)を銀行等が被害者に支払った。
PSR資料へのリンク - 補償には原則として1件8万5,000ポンド(≒1840万円)という上限があるそう。
「APP fraud」とは、Authorized Push Payment fraud の略。つまり自分のカードを勝手に使われた、とかいう詐欺ではなく、騙されて、自分の意思で詐欺師の口座へ送金したケースです。
これが日本なら
「自分で振り込んだんだから、自分の責任だ」
と言われそうな詐欺なのです。
なぜ銀行が払うの?
でも私が本当に「へえー」と思うのは、88%という高い数字ではなく、
なぜ銀行に払わせるのか、その理由です。
さっきのPSRの言う理由はこれです。
Through our measures, these firms will be incentivised to stop fraud from happening in the first place
(我々の政策を通じ、銀行は詐欺自体の発生を防ごうとするだろう)
– including… those firms on the receiving end that bank the fraudsters.
(金を受け取る詐欺師側の銀行も含めて)
つまり銀行などに被害の一部を負担させ、詐欺防止にもっと力を入れるように促す…みたいです。
しかも、送金する側の銀行だけではありません。
詐欺師の口座を持っている受取側の銀行にも、補償費用の半分を負担させる、そうです。
あなたはどう思いますか?
私はなるほど、と思ったんです。つまり、
ーー被害者の損失を銀行にも負担させれば、当然銀行は損しないように、何とかしようとするーー
例えば
「この送金は怪しくないか?」
「この口座は何のために開いたのか?」
「不自然なお金の出入りがないか?」
のように、銀行としての防止策を本気で考えようとする….こういう理窟らしい。
もちろん、補償は無制限ではないし「市民は注意しなくて良い」…でもありません。
とにかく「被害者を救う」だけの制度ではなさそう。
犯罪抑止の戦いに、銀行を巻き込む、そのための新しい仕組みのようです。
私の話に戻りますが、騙されて以来、自責の念で苦しかったんですが、英国流の考え方を知り、目が覚めたよう。気持ちも軽くなりました。
繰り返しますが、自分が注意しなければならないのは確かです。
でも相手はプロの犯罪集団。
「もっと注意」の掛け声や「騙された奴が悪い」論、本来自由であるべき送金制限とか、これだけで十分か、英国はそこから一歩進み、
銀行側の行動を変えるには、どうしたらいいか?
という問いを立てたのに違いありません。
もちろん、銀行がすべての詐欺を見抜けるという話ではありません。
しかし銀行にしか見えないこと、銀行にしかできないことは、まだかなりあるのではないでしょうか。
昔教えた生徒で、アメリカのIBMに2年間留学し、大量のお金の流れを分析する仕事をしたことがある彼によると「大量のお金の動きを見てると、不自然な動きは、意外に見えてくるんですよ」ということでした。
英国の制度は、銀行という巨大な組織を、特殊詐欺防止の戦線に動員しようとする仕組みのようです。
日本語では見つからない?
さて、
ここで私は、先ほど中断した日本語での検索に戻ってみました。
そして、もう一度驚きました。
英国でこれほど大きな制度変更が行われ、実際に3億ポンド以上が被害者に払い戻されたのに、この新制度を伝える日本語情報が驚くほど見つからないのです。
「APP fraud 本人が振り込んだ送金 英国」
「英国 詐欺 銀行 補償義務化」
など、いろいろ検索語を変えてみました。
それでも、
なぜ英国は銀行に補償させることにしたのか、という肝心要なところには、たどり着けませんでした。
もちろん、私が見つけられなかっただけかもしれません。
検索で見つからないイコール日本語の記事が存在しない、ではないとは思っていますので。
英語を学ぶ意味
今回、私は英国の政策を知り、特殊詐欺について思いがけない視点を得られました。
そして、騙された自分への自責の念も少し軽くなりました。
英語ができる意味は、外国人と話せることだけではありません。
また情報量の差だけでもないと思います。
日本語だけではわからない「別の捉え方、問い方」に出会うことがあります。
私自身
「どうして詐欺師に騙されたのだろう」
「どうすれば被害者がもっと注意できるのだろう」
という方向ばかりを見ていました。
ところが英国の一次資料を見たら
「銀行側の行動に、詐欺を減らせる手はないか?」
という別の問いが出てきました。
英語は、答えを外国から持ってくるための道具だけではありません。
「そんな切り口があったのか」
と気づくための、小窓でもあります。
あなたの英語の学習が続きますよう!
追記1:
この話があまりに気になり、朝日新聞社と毎日新聞社に電話をして、この英国の新制度について語り、巨大メディアによる調査・取材・報道してもらえないかとお願いしてみました。(w)
もちろん何か動いて頂けるかは分からない。しかし、どちらもきちんと話を聞いてくれ、誠実な対応をしてもらった印象を受けました。
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員









