海外のニュースを見ていると、日本ではなかなか出会わない話題を目にすることがあります。
今回取り上げるのは、スペインの港で行われている、ちょっと変わった研究です。
その主役は、
「海綿(カイメン)」
です。
海綿と言われても、
「それって何?」
と思う方も多いかもしれません。
海綿って何?
海綿は、海の岩などにくっついて暮らしている生き物です。
植物のようにも見えますが、実は「動物」の仲間。
英語では sponge(スポンジ) と呼ばれます。
そう、私たちが台所やお風呂で使っている「スポンジ」と同じ言葉です。
海綿の体にはたくさんの小さな穴があり、そこから海水を取り込み、水の中に含まれる小さな有機物などを栄養として取り入れながら、ろ過した水を外へ出して暮らしています。
この海綿が持つ「水をろ過する力」を、あることに利用できないかと考えた研究者たちがいます。
汚れた港に海綿を入れてみた
英紙「The Guardian」は9月1日、こんなニュースを報じました。
Could this humble sea sponge clean up the world’s ports?
(この小さな海綿が、世界の港をきれいにする?)
舞台となったのは、スペイン北東部、コスタ・ブラバにあるMarina Palamósという港。
港は船の往来や、油、船底の塗料などから出る有害物質によって、海の生き物にとって厳しい環境になることがあります。
そこでスペインの研究チームは、地中海に生息する海綿を港に移し、汚染された環境でも生きていける種類があるのかを調べました。
ほかの海綿が死ぬ中、91.7%が生き残った
研究チームが調べたのは、地中海に生息する5種類の海綿です。
ところが、5種類のうち4種類は、実験の準備段階や港に移されたあとに、すべて死んでしまいました。
そんな中、驚くほどたくましかったのが、
Chondrosia reniformis(コンドロシア・レニフォルミス)
という海綿でした。
港に移された個体の、91.7% が 455日間の観察期間を生き残ったのです。
それだけではありません。
この海綿は、体の一部を分裂させてクローンを作る「無性生殖」まで行い、港の中で仲間を増やしていました。
つまり、
汚染された港でも生き残り、しかも増えることができた
というわけです。
生き残るだけではない
では、なぜ研究者たちは海綿に注目しているのでしょうか。
海綿は、海水を体内に取り込みながら、そこに含まれる細菌や有機物などを取り除く「天然のフィルター」のような働きをしています。
しかも海綿が作る環境は、ほかの生き物にとっても役立ちます。
海綿の周りには小さな甲殻類やゴカイなどが暮らし、魚の幼生などの隠れ場所になることもあります。
そのため研究者たちは、海綿のこうした働きを、傷んだ港の生態系を回復させる「再自然化」に利用できないかと考えています。
巨大な機械ではなく、生き物の力で
もちろん、海綿を港に入れれば、すぐに汚染がなくなるという話ではありません。
今回の研究で分かったのは、この種類の海綿が汚染された港でも長期間生きられるということ。
実際にどの程度、水質改善や生態系の回復に役立つのかについては、これからさらに長期的な研究が必要です。
それでも面白いのは、
人間が作った巨大な浄水装置ではなく、もともと海に暮らしている生き物の力を利用しようとしていること。
研究者たちは、自然の仕組みそのものを使って、傷んだ港を再び生き物が暮らせる場所に戻そうとしています。
「スポンジ」の見方が変わる?
普段、私たちが何気なく使っている「スポンジ」という言葉。
その名前のもとになった海の生き物が、今度は汚染された港をよみがえらせるために研究されている――。
そう考えると、ちょっと面白くありませんか?
日本語のニュースだけを見ていると、なかなか出会わない世界の出来事。
そんな「英語がわかると、世界が広がる」ニュースもお届けしていきたいと思います。
それではまた次回。

