最近のビジネスでは,以前よりもカタカナ英語が多くなったような気がすると思いませんか?
例えば,レジュメ,アジェンダ,スキーム,エビデンス,コンプライアンス,リスクヘッジ・・・。
正直,ちょっとウザいなと思ってしまうことも(笑)
え?ありません?私だけ?
先日,オンラインで打ち合わせをしていた時のこと。
「その件については,ユーザーにヒアリングをして・・・」
という発言がありました。
もちろん,それは「利用者の声を聞いて・・・」という意味で,誰も疑問にも思いません。
でも,この中にも「間違い」が潜んでいるのです。
それは・・・。
― “listening”と “hearing”の違い―
「ヒアリング」という言葉。
この言葉自体はもちろん英単語。
“hearing”で,その原形は “hear”(聞く)です。
でも皆様ご存知のように,「聞く」という意味の単語はもう一つあります。
それは, “listening”(リスニング)です。
この2つは日本語ではいずれも「聞く」と訳されます。
でも使い方を知らないと,ちょっと違和感のある英語になってしまうのです。
“hear”というのは,
「意識しないでも聞こえてくる音」,
つまり雑音とか車が走る音,近所のおばさん達の話し声や時計のアラームなど,
自然と聞こえてくる音に対して「聞く,聞こえる」というのが “hear”。
対して, “listening”は,
「意識して聞こうとして聞こえる音」のことを言います。
ですので,「ユーザーの声をヒアリングする」というのは間違いで,
実際は「リスニングする」が正解なのです。
よく「英語のヒアリングが苦手なんだよね。」という意見を聞きます。
これも正しくは「リスニング」。
英語の試験などの「聞き取りテスト」は,しっかりと意識を向けて内容を聞こうとするので,ヒアリングテストではなく,「リスニングテスト」なのですね。
ちなみに “hearing test”と言うのは,聴力検査のこと。
ほら,健康診断のときにドラえもんの「もしもボックス」みたいなブースへ入って,
ヘッドフォンつけてやりますよね。
あのことになりますので,お気をつけを。
「あれも意識向けて聞いてるじゃん?」って?
違いますよ,あれは「自然と聞こえてくる音の聴力」を検査するので,「ヒアリング」なんです(笑)
―プリント=配布物ではない―
最近はコロナ禍のため,あまり研修会は開いておりませんが
以前は全国の英語の先生のための研修会などを開いておりました。
その時,
「このプリントを配っておいてください。」のような言葉も使います。
自分でも使っておきながら言うのも変なのですが,
この「プリント」という言葉もNG。
“print”は,「印刷する,活字体で文字を書く」等が主な意味であり,
「配布物」の意味では使われないのです。
確かに「印刷物」という意味があるのはあるのですが,研修会で配る資料は
“print”ではなく
“handout”
と言います。
お子様がいらっしゃるご家庭では,学校から配布される「お知らせ」などあると思います。
それらも「プリント」ではなく, “handout” なのです。
また「宿題のプリント」では単語も違ってきます。
「作業をするシート」ですので, “worksheet”が正解です。
「それはプリントじゃないよ,英語ではhandout(またはworksheet)って言うんだよ。」
とこっそり自慢げに教えてあげてもいいかもしれませんよ。
―それはナイーブな問題だ!―
会議の場面で,「ちょっとこの件はナイーブな問題なので,慎重に考えよう。」
という場面を想像してみてください。
「何か深刻なことなので,よく考えてからにしよう。」
と,眉間にシワを寄せた人たちが考えている様子が思い浮かびませんか?
日本では, “naïve” は「繊細な」というような意味で使われている場合が多いような気がします。
でも,実際の意味は
「考えが甘い」「騙されやすい」「世間知らずな」「うぶな」というような
「未熟さ」をネガティブに表す語として使われるのです。
だから,「ちょっとこの件は,世間知らずな問題なので慎重に考えよう。」と言っているのと同じなのです。
日本人だけの会議であれば通じるかもしれませんが,海外の人と一緒だったりすると,
「ちょっと何言ってるかわからない」状態になってしまうかもしれませんよね。
―カタカナ英語はほどほどがいいかも―
最近は,カタカナ英語を頻繁に使って会議をするケースも増えています。
「それはリスクヘッジのためにも部署内でのコンセンサスとっておいて!」
(それは,危険回避のためにも,部署内での意見一致(同意)を確認しておいて!)
過去に会議で実際に言われた言葉。
全員がわかればいいのですが,もしかするとわからない人もいるかも知れません。
そうなったら大変。
きっとわからなかった人は,(わからない)と言い出しづらいでしょうし,わからないまま仕事が進むとも思えません。
だから本当は,もう少し日本語を増やした方がいいかもしれませんよ。
だって,それが “リスクヘッジ” にもなるんだから(笑)
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。