みなさん,海外旅行へ行く時に気をつけたことはありますか。
特に一番気をつけたことは何ですか。
と,いきなりの質問ですが,
「盗難にあわないように気をつけた」
と答えた人もいらっしゃるのではないでしょうか。
「置き引き」や「スリ」など,ある程度の情報を頭に入れてから観光地へ赴くこともあるのではないでしょうか。
私は以前こんなことがありました。
中・高生の生徒たちを10人程引率して,サンディエゴを訪れたときのこと。
宿泊したのはアパートが数棟並んでいるようなリーズナブルなモーテル。
まだ生徒が出発準備をしている朝,早々に準備を終えた私はちょっとブラブラと散歩。
その時,「ある場所に電話をしなくては!」と思い出した私ですが,携帯電話を部屋に置いて来てしまったため,モーテルの敷地内にある公衆電話を使うことにしました。
その時,手に持っていたデジカメを電話の上に置いて電話をかけてしまったのです。
電話をかけ終えると,そのまま部屋へ戻ろうと歩き始めて数十歩。
「あ,デジカメ忘れた!」と急いで取りに戻りました。
ここまで読まれた方はお気づきになられたことでしょう。
そうです,もう後の祭り…。
そこにデジカメの姿はなかったのです。
「あちゃー!盗られちゃった…。」
「ついさっきまでここに置いて電話をかけたのに…。」
「まだ,私の手の温もりホカホカなのに…。」
そう思っていると,電話のすぐ向かいにある部屋から,一人の男性がこちらを覗いているのが見えました。
目が会った瞬間,その男性はカーテンをさっと閉め,そして慌てるように部屋から出てきたのです。
“Hi, are you okay? Do you need any help?(大丈夫ですか。どうかしましたか?)”と。
“え?こんな急に声かけてくる?
っていうか,「俺が盗ったんだぜ!」と言ってるようなもんじゃん!”と心の声。
“Ah, I just put my digital camera right here a couple of minutes ago, but it seems someone has just stolen it.”(えっと,数分前にここにデジカメを置いたのですが,誰かが盗っちゃったみたいです。)
と言うと,
“Oh, it’s not me. It’s not me! I didn’t see your camera. I didn’t steal it.”(それは私じゃないよ,私じゃないよ。私は君のカメラを見てもないし,盗んでもないよ。)
その焦ったような言い方(笑)
“怪しいじゃん!ってか,お前だろ!”と思わせるには十分な挙動不審さ。
笑いがこみ上げてきそうです。
でもね,ちょっと怖かったんですよ。
だって目が合っただけで,突然,上半身裸で外に出て「どうしたの?」って聞いてくるんですよ。
怪しさ満点です。
なので,
「本当に知らないんですね。嘘だったら,バチが当たりますからね。」と言うのが精一杯で,カメラは諦めました。
その後も,カーテン越しにこちらを観ている上半身裸男。
もう「アナタ盗ったんでしょ?」って感じです。
結局,そのカメラは戻ってきませんでしたが,そこでやり合って銃で撃たれでもしたら大変。
なので早々に諦めました。
旅行では落としたりすることもあるかと,高いカメラは持って行ってなかったのが不幸中の幸いでした。
私もアメリカに住んでいる時は,自然と意識して注意していた「忘れ物」ですが,日本の生活が長くなるにつれ鈍っていたようです。
今も,コロナ禍で海外へは行けない生活。
外出もあまりできない中,先週,またまたやらかしてしまったのです,このワタクシ…。
私は日頃から,使いたい時に使えるカーシェアリングをフル活用しています。
つい先日,その車で買い物へ行ったのです。
自宅へ戻ってきたのが夜だったのですが,次の日は特に外出することもなく夕方まで過ごしていました。
そして夕方に「ある物」がないことに気づいたのです。
「あれ,鍵がない…」
そう,キーケースがないのです。
自宅の鍵や,オートチャージ(クレジット)機能のついた地下鉄のパスカードも入ったキーケース。
昨日は家族の鍵で家に入ったため,まったく気づかずにいました。
そこで,「あ,昨日乗った車の中かも?」
そう思った私は駐車場をすぐに確認しました。
「ガ~ン!車がない…。」
そう,カーシェアリングですから,昨日乗ったその車は既に他の人に使われていたのです。
しかも,その返車予定をネットで確認すると,戻ってくるのは次の日の夜中12時。
再度,家中の至るところを探しましたが,見つかりません。
「もしかして,どこか道端で落としちゃったのかなぁ…。」
気持ちはますます不安になります。
クレジットカードも入れていたため,近くの交番へ遺失物の届け出を出しに行くと,警察の人は,「悪い人に拾われちゃうとねぇ,使われちゃうんだよ。だからクレジット会社に連絡してカードは停止してくださいね。」
というアドバイスとともにさらに不安にさせる一言が!
「あ,東京は警視庁管轄なので,もしも千葉や神奈川,埼玉といった近隣の県の人が拾って,そちらの管轄の交番に届けられてしまった場合は,それぞれの県にも遺失物届け出をしておかないと警視庁には連絡がきませんので。」
えええ,そうなの!?
今の時代,そこの連携が取れていないなんて・・・なんて日だ!!
遺失物の届け出をしたのに安心もできず,
「ああ,どこにいるの…私のキーケースちゃん…」
不安で夜も眠れません…。
次の日も,不安は続きます。
そして夜11時半頃,やっと車は返ってきました。
急いで中を見ると…,
ありました!
私のキーケースちゃんです!
しかも,何も無くなっていません。
天にも昇るような気持ちで,
“Oh, thanks God!!!” です。
次の日早々,カーシェアリングの会社から,
「昨日利用された方から,クレジットカードの入ったキーケースを車内に忘れている方がいるとの連絡をいただきました。」
と連絡がありました。
お礼を言って,警察への届け出も取り下げの電話をして一件落着。
いやぁ,日本って素晴らしい!
これがアメリカだったら,戻ってきたでしょうか。
それが返ってくるなんて,本当に日本って素晴らしい!
昨年,イギリスのBBCがこんな記事を出していました。
“Why Japan is so successful at returning lost property(なぜ日本では,落とし物が戻ってくるのか)”
という記事です。
その記事によると,
・ニューヨークでの拾得物の届け出は6%程度だが,日本では90%以上にも上る
・日本には交番が多くあり,そのため拾った人が届け出をしやすいことが理由の1つ
・落とし主から5%~20%の報労金がもらえるため,届け出をする人が多い
ざっとこんな感じですが,これには違和感を覚えるのです。
だって,日本人が拾った物を警察に届けるのは,報労金などの見返りを求めるからではないと思うのです。
中にはそういう人もいるかもしれませんが,多くは違うのでは?思います。
多くの人は
「失くした人は困っているだろうな」
「知らん顔したり,そのまま取ってしまったりすると,なんだか気持ち悪い」
「他人のものを取るなんでできない。バチが当たりそう」
など,そういう感じではないでしょうか。
少なくとも自分はそんな感じなのですよね。
なので,「報労金がもらえるから」という理由がメインにはならないと思うのです。
実際,私のキーケースをカーシェアリングの会社に連絡してくれた方は,届け出たからと言って料金が安くなるわけでも,私からお金がもらえるわけでもありません。
電話をくれたカーシェアリングの会社の方によると,
「大切なものだろうし,困ってると思うので」
と相手が仰っていたと聞きました。
これは「日本人として誇れること」なのではないでしょうか。
某大手動画サイトでも,外国の人が日本人の正直さを試すために,
「日本でわざと財布を落とす」という動画を複数投稿しているのを見ることがあります。
私の観た限りでは,100%の日本人が落とした人に,「落としましたよ」と財布を拾ってわたしています。
これが他の国だったらどうでしょうか。
もちろん,「落としましたよ」という人も多くいると思います。
実際,海外の人がそういう経験をSNSにあげると,多くの同じような経験のコメントもついています。
でもそれは日本と比較すると「珍しいこと」だから。
私が失くしたカメラのように返ってこない場合の方が多いからです。
それを考えると,落としてしまった大切な物の8割~9割が戻ってくるというこの日本はすごい国だと思いませんか?
私たちはこの「日本の良さ」を再認識し,もっと誇りと自信を持っても良いのではないでしょうか。
日本では昔から,「お天道様が見ている」と言われます。
子どもの頃,大人から言われた人もいるのではないでしょうか。
ご存知の通り,誰も見ていないところでも太陽は見ているのだから悪いことはしちゃダメだよ,ということ。
この考え方が根底にある人が多いため,落とし物も届け出る人が多いのかもしれません。
さらに,ハンカチや手袋の片方など,警察に届けるまでもないかもしれないような落とし物であっても,道路脇のフェンスの上に置いたり,人に踏まれないような場所に避けて置いてあったりするのを見かけたことはありませんか?
それもやっぱり,
「もしかしたら,今頃落とした人は探しているかもしれない」という思いと,
「落とした人が見つけやすいように」という意味が込められての行動だと思うのです。
このような「気持ち」を「小さな行動」に表すことの出来る日本人って,やっぱり素敵だと思います。
だって,「見知らぬ相手の気持ちを思いやる」ということですもの。
「相手に思いを馳せる」
これって本当に大切なことだと思うのです。
今はコロナ禍。
東京でも緊急事態宣言が延長となりそうです。
とは言え,これから暖かくなると,ちょっとした散歩や買い物などで,外に出る機会も増えてくると思います。
そんな時に落とし物を見かけたら…
それが財布などの貴重品であれば,交番に届ける人も多いと思います。
でも,それがハンカチや子どもの片足のみの靴下だったら…
あなたならどうしますか?
これまで経験したことのないような事態を経験している今だからこそ,
他の人に思いを馳せ,一人一人の優しさを広めてみませんか。
そう,蔓延させるべきなのはウィルスではなく,
みなさんの「やさしい気持ち」「あたたかい心」ではないでしょうか。
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。