パンデミック以前には、毎日のように載っていたので自分では気がつかなかったのですが、この広大な国土を持つ50もの州があるアメリカ合衆国では、実は電車に乗ったことがない、地下鉄に乗ったことがない、どうやって乗っていいのかわからない、と言う人がたくさんいる、というのです。
移動手段の歴史を見ると、まず西部劇に出てくるような大陸横断鉄道は、遥か昔(1869年完成)のこと。その後歴史は動き、イギリスの産業革命と共に自動車の開発が進み、あっという間に交通網が「道路」としてアメリカじゅうに広がりました。
国土が広すぎて、列車では州を越える遠距離の移動に時間がかかりすぎるため、飛行機が、安価でよく利用されるようにも。例えば、西海岸のロサンジェルスから東海岸のニューヨークまで、アメリカ大陸の左端から右端まで、約4500km。列車ですとシカゴで乗り換えて60〜70時間ほど、かかりますが、飛行機だと5時間ちょっと。
ただ、アメリカでは自動車やガソリンが安く手に入ることもあり、インフラとしては圧倒的に、高速道路が人気となりました。
そんな歴史もあって、シカゴやロサンゼルス、ニューヨークボストン、ワシントンなどの大都会では、地下鉄などのパブリック・トランスポーテーション(公共交通機関)が見られますが、人口密度の低い州へ行けば、何といっても交通手段は自動車のみ。アメリカでは、なんと90%以上の人々が、都市部ではないところに住んでいるのだそうです。
私は、世界でも有数の大都市TOKYO、そしてパリやロンドンの、電車や地下鉄網の複雑さを知っているので、ニューヨークの地下鉄はとてもシンプルだと思いますが、アメリカの田舎から出てきた人たちにとっては、とてもややこしいものなのだそうです。
映画やテレビで見た事はあっても、実際に乗車したことがなければ、多少の不安はあるかもしれませんね。
少しそんな方たちにもわかりやすいように、ニューヨークの地下鉄についてちょっと説明をしてみましょう。
まず、こちらがニューヨークの地下鉄マップです。わかりにくいと言えば、ローカル(各駅停車)とエクスプレス(快速)が、同様に書かれていることでしょうか。また、路線の名前に、番号が付いていたり、アルファベットが付いていたりします。これも慣れないと、よく訳がわからないかもしれません。でも、それほど種類が多いわけではないので、覚えてしまえば、すぐです。
ジャズの名曲で、デューク・エリントン楽団の、「A列車で行こう」という曲をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。これは、ジャズで有名なニューヨーク、そしてその地下鉄のストーリー。
ニューヨーカーたちが、ダウンタウンでの仕事後、Aトレインというエクスプレス(地下鉄の快速)に乗ってハーレムへ行き、そこでジャズのライブ演奏を聴きながら食事をしたり飲んだり踊ったり、さぁ人生を楽しもうよ!ジャズのメッカ、ハーレムへ、とびっきりのジャズを聴きに行こうぜ〜!エクスプレスに乗って、ひとっ飛びにさ、と言う曲なんです。
マンハッタン内の移動には、地下鉄は欠かせません。タクシーやウーバーなどのカーサービスに比べると、安価で、地下鉄に乗った後のバスは、トランスファー(乗り換え)と言うことで、2時間以内なら1回無料になります。(同じ線の往復はだめだそうですが。)
さてそんなニューヨークの地下鉄について、来週はもう少し詳しく、地下鉄の乗り方なんかも説明しますね。
それではまた来週
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。