海外で病気になったら…。考えた事ありますか?
日本では、お腹が痛かったら内科、怪我をしたら外科、肌がかぶれたら皮膚科など、自分で判断してそれぞれの病院に行きますよね。
ところが、オーストラリアでは内科、外科などの専門医(Specialist)の所に行っても診てもらえません。
近くのかかりつけ医(General doctor/総合診療医)にまずは診てもらわないといけないんです。そして、General doctorが必要と判断すれば紹介状を書いてくれ、専門医を受診する事ができます。つまりGeneral Doctorの紹介状なしには専門医には診てもらえないのです。
それが目の病気であっても…。
眼科に行きたいんですけど…
オーストラリアのハミルトン島のホテルで働いていた時のこと。
ド近眼の私は、普段からコンタクトなしでは生きていけません。ある日、起きてみると寝不足でもないのに両目とも充血。血走ったような目に!
それ程痛みもなかったため「そのうち治るだろう」とあまり気にせずコンタクトも使い続けていた私。しかし、数日しても治らず、目の赤みもひどくなっているよう。目ヤニもひどくなってきた。
周りからも「目、大丈夫?」と言われる事も多くなり、接客業で目が血走っているとお客様も怖いだろう。さすがに「病院行った方がいいかも」と思い出した。
日本でも病院は緊張するし、できる限り行きたくない派。それが、海外だとなおさら行きたくない。しかも、住んでるのは本土や町から離れた島!「眼科ってどこにあるの?どうやって受診したらいいの?」と分からない事ばかり。
オーストらアリアでは、まずGeneral Doctorに診てもらわなくてはいけないというのは、知っていた。だけど、内科や外科、皮膚科は分かるけど、眼科はさすがに専門医じゃないと無理じゃない?
歯医者は日本と同じような個人のDental clinicがあって、直接行く事ができた。眼科もそんな感じかなと思っていた。
ところが、他のオージースタッフに聞いてみると、目もやはりGeneral doctorで診てもらわないといけないと言う。
「島にあるじゃん。あそこで診てもらったらいいよ」と軽く言われたが、私は…
「え~!あの病院に行くの?目の病気が分かるのかなぁ?設備もなさそうだし…。」
不安的中!ちゃんと診た?
あの病院とは、島にある唯一の病院というか、診療所。お客様が海でクラゲに刺されたとか、お腹が痛いとかそういった時に、付き添い兼通訳で何度か行ったことがある。
へき地の村にありそうな小さな診療所と言った感じで、平屋のこじんまりした建物。中は、受付スペースと診察室があるのみ。最新の医療機器どころかレントゲンさえもないようなところ。看護師さん1人、そして、いつもやる気のなさそうなおじさん医師一人の病院。
「あのお医者さんで目の事分かるのかなぁ?目を見る顕微鏡みたいなのも無さそうだし…」
不安を抱えながら、島の病院へ。
不安は的中!
「目がずっと充血していて。」と伝えると、もちろん眼科にあるような目を見る顕微鏡は出てこない。しかも、拡大鏡とかよく見るような物も持たずに、私の目をパッ、パッと指で開いて一言。
「アレルギーだね」と。診療時間、2秒! ちゃんと診た?! 目、開いただけなんですけど!
「えっ?アレルギー? 何のアレルギーですか?」と私が聞くと、「何かの植物か、ハウスダストか…。それは細かく検査をしないと分からない。それには時間もお金もかかる。アレルギーの目薬だすからそれで大丈夫だよ」と。
「今までアレルギーとか言われた事ないのに…。大体、ちゃんと診てないでしょ?」
しかも、診療時間2秒にもかかわらず、請求されたのは$65!高っ! 診療を不満に思いながらも、処方された目薬を薬局で買いつけてみる。
しかし、というか、やっぱりというか…
1週間を過ぎても私の目は一向に良くならなかった。むしろ悪化している…。
それでも、紹介状がなければ、眼科の専門医には行けない…。「あの医者め~」と彼に怒りさえも覚えた。
なんだその目は!どうした?!
目の調子は一向に良くならないまま、1ヶ月近くが経とうかという時。
日本に帰国して、就職を考えていた私は、就職に役立つように帰国前にTOEICのテストを受けてみようと思った。ちょうどTOEICのテストを受けたいという友人がいたので、一緒に受けに行く事に。
ハミルトン島から一番近い試験会場はブリスベン。一番近いと言っても、飛行機で1時間半の距離。せっかく遠くに、しかも都会に行くんだからと、1週間有給休暇を取り、遊び兼テスト勉強からの受験というプランに。(余談ですが、オーストラリアでは年に20日も有給休暇がもらえるんです♪)
そして、無事に試験も終え、最後の1日。島への飛行機は夕方。島へ帰る前にブリスベンの大きなショッピングモールで買い物をする事に。
やっぱり都会ブリスベン!島の近くにあるショッピングモールとは規模が全く違う!「色んなお店がある~!!」とテンションもあがり、モールをウロウロ。
洋服や日用雑貨などを買い込んでいると…、ふとコンタクトレンズ屋さんが目に留まった。
「やっぱり、今のコンタクトレンズが良くないのかも。今はつけられないけど、良くなった時の為に、今のうちに新しいの買っとこうかな。」そう思い、店内へ。
日本ではコンタクトレンズは眼科を受診しなければ買えませんが、オーストラリアはちょっと違う。
コンタクトレンズ屋さんの中に、optometrist(検眼医・検眼士)と呼ばれる人がいて、目の検査やレンズの調整をしてくれるんです。そのため、その場でコンタクトレンズを買う事ができる。
「新しいコンタクトレンズが欲しいんですが…」と言うと
Optometrist:「ちょっと待て!なんだその目は!どうした?!」と私の目を見るなり驚いた様子。
私:「general doctorに行ったんだけど、アレルギーって言われて。目薬つけてるけど治らないんです…。」
O:「アレルギーなんかじゃないよ!治るわけない!コンタクトレンズどころじゃないよ。こっちに来なさい!」と検査室へ。
そこには、日本の眼科にあるのと同じ、あの目を見る顕微鏡が!おー!これだよ、これ!やっぱりこれで診てもらわないと!
両目を顕微鏡でじっくり診るOptometrist。そして
O:「やっぱり。すごく悪い。紹介状を書いてあげるから明日必ずSpecialistの所へいきなさい。」
私:「え、でも、私ハミルトン島に住んでいて、今日の夕方の飛行機で帰らないといけないんです。明日仕事だし…。」
まだ今一つ自分の目の状態が分かっていなかった。すると、強い調子で
O:「そんな事言ってる場合じゃないよ!このままだと君は視力を失うかもしれないよ!」
その言葉で、事の重大さに気づいた。
私:「えっ…。視力を失う?失明?そんなに悪いの?!」
失明するかもと聞いては、帰りの飛行機や仕事を気にしている場合ではない。
O:「今予約をしてあげるから」と病院に電話をかけてくれる。しかし、今日の明日ではさすがに予約はいっぱい。
O:「予約のキャンセルが出たら入れてもらえるらしいから。朝一で行って待ちなさい。それでも、診てもらえないような時は、僕に電話して。知り合いがいるから診てもらうように頼むから。必ず診てもらうんだよ。」
何と親切な人でしょう!しかも、これだけしてくれたのに、「その状態ではコンタクトレンズは売れない。また目が良くなったら買いに来て。」と言って、レンズを売ることもそして、診察料を受け取る事もしなかったのです。まさに、神!彼には感謝しかありません。
お店を後にした後も、「視力を失うかもしれない」という言葉が重くのしかかり、ドヨンとなる。とりあえず、飛行機を明日の便に変更し、会社に電話をかけて事情を説明し、あと1日休暇を伸ばしてもらった。
友達は先に帰ったし、一人ホテルの部屋で不安な夜を過ごす。
え? 何の病気???
次の日、病院は9時からと聞いていたので9時前には着くようにホテルを出発。タクシーで病院へ向かう。
着いてみて驚いた。思っていた眼科とは全く違う。日本だと、総合病院や大学病院規模の大きな近代的な病院。「こりぁ、紹介状なしでは診てもらえないわ。」と納得。
ドキドキしながら、入り口を入ると中はすでに多くの患者さん達で溢れていた。受付で紹介状を見せると、別の受付カウンターを案内される。
案内板を頼りにキョロキョロしながら進んでいくと、奥に広い受付カウンターがあり3人ほどスタッフが座っている。再度紹介状を見せると、「予約がないのね。予約の時間に来ない人がいたら、呼ぶわね。でもいつになるかは分からないから、すぐ近くで待ってて」と。
カウンター横の長いすには、すでに受診待ちの人たちでほぼ埋まっていた。私はなるべくカウンターに近い所で、受付の人たちからも見えるような場所を探して座る事にする。
「どれくらい待たされるかなぁ…。いくら何でも夕方の飛行機には間に合うよね」そう思いながらも、長時間待たされる覚悟だった。
以外にも早く、1時間半くらい待った所で名前が呼ばれた。看護師さんに連れられ、診察室の前の廊下で再度待たされる。
そして再び名前が呼ばれ、ドキドキしながら中に入る。診察室の中は意外と広く黒壁のスタイリッシュな部屋。3,40代くらいで若いけど頭のキレそうな女性のお医者さんが座っていた。
いつ頃から悪いのか、コンタクトレンズのメーカーはどこかなど質問される。
上を見たり、横を見たり、指示されながら顕微鏡で目を検査される。
そして、
「~~~~~~だね」と病名を言われた。
が、???単語が分からない…。かろうじてVirusらしい言葉は聞こえた。病名は分からなかったものの、説明は理解できた。
お医者さんによると、使っていたコンタクトレンズが酸素を通しづらい物だったらしい。その為、レンズ内の環境が悪くなり、悪い菌が増え、目に悪影響を与えたらしい。
Doctor:「よくこんなになるまで放っておいたね」
私:「放っていた訳ではないんだけど…。 あの医者がちゃんと診てくれてたら…。」またしても島のgeneral doctorの顔が思い出される。
治療のための目薬と飲み薬、1ヶ月半のコンタクトレンズ禁止令が出された。
やっと専門医に診てもらえ、原因も分かったし治療もできる。それまでの緊張も解けホッとした。後で、お医者さんが言っていた病名を記憶をたどりながら、調べてみるとたぶんウィルス性角膜炎(Viral Keratitis)だったのだと思う。
その後、言われた通りに点眼と飲み薬を続けた結果、目の赤みはどんどん薄れ2週間後くらいには元のように白くなってきた。お医者さんからは「治ったように見えても、目薬は必ずするように。コンタクトもダメ」と言われていたので、その後もコンタクト禁止令が解けるまできちんと続け、無事に完治。
あの時、偶然にコンタクトレンズ屋さんに入って、親切なOptometristに出会って本当に良かったと思う。あのまま放っておいたら、どうなってただろうと考えるとゾッとする。
「専門の病院に行く」という日本では簡単な事が、これほどまでに難しいとは思わなかった。しかし、何事も経験してみないと分からない。
海外で病院に行くというのも病気にならないとできない体験ともいえる。そういう意味では貴重な体験ができたのかもしれない。そして、それが今となっては良い思い出話にもなっている。
とはいえ、なるべくなら病気にはなりたくないし、病院にも行きたくないですよね。特に旅行中だとせっかくの海外旅行が楽しめません。
私の病院経験は幸いこの時だけですが、添乗中にお客様が体調を崩されお医者さんに診てもらうという事は時々ありました。お客様も重病の方は幸いなく数日で治るものがほとんど。
その方たちを見ていて私は気づいたというか、学びました。なぜ体調不良になるのか。そしてどうしたら悪くならないのか。
という事で、次回は旅行中によくある体調不良の原因とその予防法をお伝えしたいと思います!
次回もどうぞお楽しみに♪
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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