月に一度行く理容店のマスターはオッサレな髭の紳士。
今年初めに静かな住宅街から、町のど真ん中の商店街に店を移した。商店街に真新しい英語の店名“Standard”のサインボードが目立つ!
常連客に加え、大学生や若者が客としてくるようになった。さらに、店名もあって、外国人の客が増えた。一年ほど前から、散髪中に、マスターは英会話の話題を振ってくるようになった。
外国人の客との会話で、なかなか通じなかったことが、質問である。先日も、こんなことをきかれた。
「長めにするって、cut longerじゃあダメなんですかね?」
「それじゃあ、通じないだろう。外国人は、短めにするという逆の意味にとるだろうね」
「え!そうなんですか?じゃあ、どういうんですか」
<Leave it long on top! トップは長めにしてね!>
おしゃれなマスターは、なかなか商売熱心である。
英語でしっかりと客とコミュニケーションを取ろうと、1年前から私との会話で床屋に必要な英会話表現を学んでいる。
こちらとしてみれば、無料英会話レッスンになるが、マスターは確信犯である。抜群のコミュニケーション能力を駆使して、話題にしてくる。
「cut longer なら、直訳でより長く切るということになるから、反対の意味になるよ」と説明する。「え!そうなんですね。だったらどういったらいいんですか?」とマスター。
「”Leave it long on top” トップは、長目にしておく」といえばいいんじゃない。
「え!リーブ・ロン・トップ」ですか?
まあ、カタカナで書けば、リーヴ・イット・ロング・オン・トップになるが、日本人の耳には、「リーブ・ロン・トップ」と聞こえるだろうねと、Swatchがつぶやく。
マスターは、ぶつぶつとつぶやいている。「リーブオントップ、リーブオントップ、、、」
「うまいじゃん!それで十分通じると思うよ」とほめるとマスターも笑顔を返してくる。
ここで、Swatchは、はたっ!と気づいたことがあった。
これって、英会話を学ぶ基本だよね!
つまり、聞いたままの英語を「おうむ返し」に言ってみる。それを何回も繰り返してみる。耳の音と口から出る音を一致させる練習だ。また、細かいことまでこだわらず、自分の耳と口を信じること。そして、外国人と会話してみる。この場合、Swatchとやり取りしてみる。
そこで通じれば、実践的な英会話を習得したことになる。通じる英会話もフレーズを身に着けたことになるのだ。
今日も、おしゃれなマスターの口車に乗り、無料英会話レッスンをしてしまった。笑
英会話のフレーズを自分のものにする実践的な習得法を目の当たりにし、充実感もある。
英会話は、やる気と自分の耳を信じ、聞き取った音を真似して、再現してみる。
何度も口ずさみ、口の筋トレをする。そうやって身に着けていくのが一番早いのである。
<基礎英語症候群とは?>
コミュニケーション力抜群のおしゃれな髭マスターの英会話タダ乗り作戦に乗り、英会話を教授しても、心がさわやかなのはどうしてだろうか。
よくよく考えてみると、英会話の生徒の中に、その逆のタイプがたくさんいることを思い出した。いわゆる基礎英語症候群の生徒である。
基礎英語症候群とは、いつまでたっても基礎英語から脱却できない生徒のことである。日本人に一番多いタイプ。基礎がしっかりしていないと何もできません!というまじめなタイプ。
先ほどから話題にしているおしゃれな髭の床屋のマスターとは真逆なタイプ。長年英会話の学習を続け、英語にも興味があり、将来は英語ペラペラという目標もある。
実際、英単語力(語彙力)も中学、高校レベルの2,000以上の英単語は記憶している。文法も試験をすればよい点が取れる。TOEICで言えば、500点以上の実力者。
そのぐらいのレベルの学習者は、英語をなかなか話せない悩みを抱えている。英語が話せない理由を「私は基礎力がないから、話せない」とかたくなに信じているタイプである。
英会話は、自分の耳を信じ、聞き取った音を真似して、再現してみる。さらに何度も口ずさみ、口の筋トレをする。そうやって身に着けていくのが一番早いのである。
打開策は、自分を信じること。自分の耳で聞こえた音を再現すること。一つ一つ丁寧に、日本語の発音から英語の発音に変換していく努力を続ければ、「英語が分かった!」という瞬間が訪れる。
それは英会話ができるようになった人の共通の「奇跡体験」でもある。本当に、ある日突然英語が「分かる!」のである。または、英語が聞こえるようになるのである。
その瞬間が来るまで、人によって学習する時間は違う。ただ、生活で英会話が必要な人は、かなり早いスピードで、その瞬間を体験できることがある。
繰り返せば、英会話は、やる気と自分の耳を信じ、聞き取った音を真似して、再現してみる。何度も口ずさみ、口の筋トレをする。そうやって身に着けた人なのである。
髭のマスターは、最初から文法とか発音とかは全く頓着しない。できれば、単語一つでコミュニケーションしたいと思っている。
一言で床屋のサービスを伝えたいと考えているのだ。基礎力が不足しているから、完璧な英会話ができないと考える、「基礎英語症候群」の人とは、まったく考え方が違う。
基礎英語症候群は、正しい英語や正しい発音がそれなりに理解できる実力がある。だが、完璧にしなければ、英語は話せないし、通じないと思っている。
それが間違いであると気づくには、考え方を変え、症候群を抜け出さなければならない。
英会話の勉強をやめる原因にもなる。もっと楽に英会話を楽しめばよいのだ。
ぜひ、あなたも実践してみてください。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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