普段とはちょっと違う所に勇気をだして出かけてみると、これまで自分が出会った事がなかったような人たちと会える事がある。
先日参加した「着物ランチ会」はまさにそんな場所。私にとって少しハードルの高い会だった。着物を着て行くというだけで緊張する。
その日は、始めにオペラ歌手の方が歌を披露。それだけで、普段ではない体験。
その時ピアノの伴奏をしていたのは70代の女性、Yさん。私は彼女が70歳を過ぎてもプロ級に演奏できる事にまず驚き、さらに彼女の人生を聞いて二度驚いた。
全く予測不能なNo planで生きる意外な展開続きのYさんの人生。
計画通りに歩む人生とNo planで行く人生。あなたは人生計画、たてる派ですか?それとも無計画派?
無計画な人生と聞くと、ろくな事はないような気がしますが…。果たして…
<何その展開!>
6歳の頃からピアノに打ち込んできたYさん。しかし、ピアノはあまり好きではなかったそうで、大学進学を決める時にも、ピアノの道には進みたくないと思っていたそうです。
けれど、ピアノの道へ進まないと教えてもらっていた先生が悲しむと思い、そのままピアノで音大へと進んだそうです。
行く気のなかった音大でしたが、ある日、有名なドイツの音楽家が大学に来て演奏会があったそうです。ステージ上でそのドイツ人音楽家の話を一人の先生が通訳していました。ドイツ語で会話する先生を見て、「ドイツ語いいな。私もドイツ語を話してみたい!」ととっさに思ったそうです。
その公演後、すぐにその先生に「私もドイツ語を話してみたいです。どうやったら話せるようになりますか?」と聞きに行ったといいます。
すると、先生は知り合いのドイツ語の先生を紹介してくれ、そこから学生時代はピアノよりもドイツ語を一生懸命勉強していたそう。
そんな折、1972年にドイツでミュンヘンオリンピックが開催されました。ドイツ語を話せるようになっていたYさんは、なんと日本人選手団のサポート役として抜擢され、ドイツへと行く事になったのです。それがYさんの初めての海外旅行。
そしてそこで、ドイツが気に入りそのままオリンピック終了後も一人残ってドイツ語を勉強したといいます。
ドイツから帰ってきてからは、結婚をし子供も生まれて主婦をしていたYさん。時々、知り合いのドイツ語の先生のいる大学へ遊びに行っていたそうです。
そうしたら、ある時、「短大でドイツ語を教えてみたら?」という話になり、「え~、免許ないし大学生は教えられない。」と一度は断ったものの、「大学は教員免許とかいらないから大丈夫。」と言われ、「じゃあ、やってみようか。」と主婦から一転。今度は短大のドイツ語教師へ。
ここまででも彼女の行動力と決断の軽さは凄いのですが、定年後もそれは健在で、彼女の面白い人生はまだ続きます。
たまたま友人が連れて行ってくれたタイレストランが気に入り、通ううちに忙しそうなのでそのお店を手伝う事に。
お店はタイ人のご主人と日本人の奥さんとで切り盛りしていて、日本語をあまり話せないタイ人の旦那さんはいつも寂しそうにしていたそうです。
そこで、彼の話し相手になってあげようと、今度はタイ語の勉強を始めたYさん。そのレストランで働きながらタイ語も覚え、店主家族がタイに帰省する時には一緒に同行して、タイ旅行を楽しむようになったといいます。
そんな時、タイの日本語学校に来る予定だった日本語教師が急病で来られなくなってしまい、日本語学校で代わりの人を探しているとお店のご主人から聞きます。
学校が始まるのは、1週間後。学校側も時間がないため困っていたといいます。
その話を聞いたYさん。
「私が行くわ!」と即決し、その数日後には荷物をまとめ、飛行機に乗りタイへ飛んで行ったといいます。
私は、彼女がタイに単身で行くという決断の速さにも驚きましたが、それを決めた時の年齢を聞いてさらに驚きました。
その当時の年齢はなんと68歳!
旦那さんもいて、お義母さんの介護もしていたといいます。そんな中で、半年の期間限定とはいえ、家庭を置いて一人で海外に渡るというのは、海外に住む事に抵抗のない私でも躊躇してしまうし、年齢を考えると無謀にも思えた。
彼女の考えは「チャンスはそう何回もはやって来ない。だから、来た時にパッと掴まないと次はない。」というもの。
事実、彼女が帰って来てから少しして世界的にコロナが広まった。あの時行っていなかったら、もう行く事はできなかっただろうとYさんは言う。
<転がる人生>
チャンスの神様は前髪しかないといいます。「チャンス!」と思った時に迷わず、行動に移す事が本当に大事なんだと彼女の話を聞いて改めて思いました。
そして、チャンスが来た時にすぐに掴みに行けるのは、いつもその準備ができているから。
彼女は、ドイツに行きたくてドイツ語の勉強をしていた訳ではないし、タイで働く為にタイ語を習得した訳でもありません。ただ、興味があって面白いから勉強して習得した。結果、それが準備となって、ドイツやタイでの仕事につながった訳です。
ドイツ語にもタイ語にも興味を持つ事がなければ、そしてやってみようと思わなければ、ドイツやタイで仕事をするチャンスも訪れなかった事でしょう。
英語も一緒だと思います。「〇〇の仕事に就く!」「海外で働く!」と明確な目標のある人もいるでしょうが、ただ「英語、話したいな。」と漠然と思っている人もいると思います。
そういう人も、Yさんのように、ただ興味を持って学び続けていたらある時、思いがけないチャンスがやって来るかもしれません。その時、チャンスの神様の前髪をすぐに掴めるように、今、準備をしておきましょう。
彼女は何にでも興味を持ち、好奇心旺盛。何でも「やってみたい!」と思った事はすぐやってみる。そして、今でも新しい事に分野を問わず挑戦しています。それが元気の源になり、70歳を過ぎてもはつらつとしているのでしょう。
彼女の人生は言ってしまえば、無計画。
ただ目の前の興味がある事、人から頼まれた事、来たチャンスを活かし行動しているだけ。だけど、それが思わぬ方向へと転がり繋がって行っています。予測不可能な人生って、何て面白い人生でしょう。
未来の事をきっちり計画をたて、その目標に沿って実行していく人生ももちろん素晴らしい事です。でも、あまり先の事は考えないNo Planな人生もいいのかもしれません。
今を大事に、縁を大事に。もらったチャンスをキャッチして行動してくと、自分では想像も出来なかった面白い未来にたどり着けるかもしれませんよ。
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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