「その服いいね!」
突然、そう言って見知らぬ人から話しかけられたとしたら、あなたはどう反応しますか?
「え、何?誰?」と、普通は思いがちですよね。
でもこれ、アメリカでは日常茶飯事なんです。
サンディエゴに滞在していた時、夕方にバスに乗ることがありました。
ロサンゼルスのバスは窓もスモークになっていることが多く、ちょっと怖いイメージ。
だけど、サンディエゴは比較的明るいイメージだったので、安心して乗り込みました。
私の向かいの席には、ちょっとやんちゃそうな強面のお兄さん。
すると、何やらジロジロと見てくるではありませんか!
「な、なんだろう?気に入られちゃった?バスってやっぱり怖いよ…。」
そう思っていると、いきなり
“Nice shades!”
と言ってきたのです。
“シ、シェ…?Shades?” と聞き返すと、私の胸元を指差して
“Nice glasses.”とお兄さん。
その時、私はTシャツの胸元にサングラスを掛けていたのです。
「ああ、このサングラスのことか!ふぅ。」
お兄さんはただ「いいサングラスだね!」と褒めてくれたんですね。
それなのに、「新手のナンパか(笑)」と、失礼なドキドキを勝手にしてしまった私は、
“Oh, thanks!”と答えるのが精一杯。
「ああ、怖いとか思っちゃったよ。案外、見かけによらずフレンドリーなんだな。」
とトンチンカンなことを思いながら、ふと考えていました。
『ああ、アメリカって全然知らない人とも話をしたりするよな。』って。
スーパーのレジに並んでいる時やレストランでの食事の時もそう。
ある時、ハンバーガー・レストランで食事をしようと席についた私は、ある日本語で書かれた本を持っていました。
すると、「Well,… what are you reading?(ん~、何を読んでいるの?)と、突然、超明るい声で20代くらいの女性の店員さんが話しかけてきました。
そして、私の隣に座り、その本を見始めたのです。
「Wow! Can you read this? What does it say?」(わあ!これ読めるの?それはなんて書いてあるの?)なんて言いながら。
そこからしばらく日本の話で盛り上がりました。
しばらくして彼女の本業である「オーダー」をやっととってくれたのです。
でも心はとっても明るくなりました。
そんな感じで雰囲気がよくなると、食事もより美味しく感じるんですよね。
このような、ちょっとした会話のことを “Small Talk(世間話)”と言うのですが、これはアメリカでは結構重要なコミュニケーションなんです。
自分の側にいる「見知らぬ人」がどんな人か、また、「自分は怪しい者じゃないよ」、という意味もあるようですが、「共通の場の雰囲気をよくしてお互いの居心地をよくする」という意味がメインのようです。
確かに考えてみると、会議でもそうだなぁ、と思うのです。
最近はオンラインでの会議が増えた我が職場。
国内の企業等と会議をする時は、「では始めましょうか。」
と、結構最初から本題に入ることもしばしば。
でも、海外の企業との会議の時は、必ずちょっとしたスモール・トークから入ります。
みんなが笑顔になって打ち解けたところで本題に入るのです。
緊張のまま始める会議よりも、場の雰囲気が和やかになってから始める会議の方が参加しやすいですものね。
そんなスモール・トークが結構身についている私は、日本でも隣にいる人に話しかけてしまい、友人や家族に「恥ずかしい!」と言われてしまうことがあります。
日本に住んでからのある日、友人と「豚汁食べたい!」となり、食材を買いにスーパーへ行った時のこと。
「何を入れたらいいかな?」と思ったのも束の間、私は
「今日は寒いですよね。豚汁作ろうと思うんですけど、どんなものを入れたらいいと思います?」
と、隣で買い物をしていた見知らぬマダムに話しかけたのでした。
そのマダムはとっても親切に「その方の家庭流」を教えてくださったのですが、友人から
「普通は話しかけないよ!!」
と怒られてしまいましたww
たしかに日本で突然話しかけたら変な人と思われてしまいますよね…と反省。
でも、先日気づいてしまったのです。
都内のバス停で前に並んでいたおばさま2人が、
「暑くて嫌になっちゃう。」
「本当よねぇ、今年の暑さは異常よねぇ。」と何気ない会話。
バスに乗り込むと全く別々に座っている二人。
知り合いでも何でもなかったようです。
やっぱり日本でもあるじゃん、スモール・トーク!
ちょっと年配の方々がされるというイメージですが、このコミュニケーション術は見習うところもあるのでは?と感じる今日この頃です。
都会を始め、だんだんと希薄になってきていると言われるご近所付き合い等も、スモール・トークでちょっとは明るい世の中になるのではないか、そう思うのです。
さあ、みなさんも日本を元気にするためにも(大袈裟)スモール・トーク、実践してみませんか?
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。