「あれ?なんだかこれ,味がしない…。」
「前にも食べて美味しかったんだけど,今日は味がしない。」
あ,コロナ感染による味覚障害のお話ではありません。
今のようなコロナ禍になるちょっと前,近所にできた中華料理屋で担々麺を食べた時のことです。
店員さんは全員中国の人たち。
「すみません…。交換はしなくていいんですけど,これ,味があまりしないんです。
調味料か何か忘れていたら,それだけ持って来てもらえますか?」
とお願いしたのです。
だって,全部作り直しとかしたら,食材がもったいないですもの。
すると店員さん,
「ごめんなさい。料理人が変わったばかりなので,まだ慣れていないんです。」
と,味を追加した担々麺を持ってきてくれました。
「本当,すみません。次回サービスしますからね。」と言って。
「そんなこともあるんだなぁ。」と思いながら食べていたら
「そう言えば,アメリカでもあったなぁ。」と思い出しました。
近所にパスタの美味しいイタリアンのお店がありました。
とってもオシャレで,中でも最初に出されるコーンブレッドが美味しくてとても人気の店。
お隣に座っていた40~50代くらいのご夫婦。
奥様が浮かない顔で,ご主人に何やら話していたのです。
なんとなく気になってしまって,お耳ダンボにして聞いていたら,どうやらパスタの湯切りがしっかりとできていなかったようで,スープパスタ状態になっていたそう。
ご主人がすぐに呼び,そのパスタを下げてもらっていました。
しばらくして,作り直したパスタが奥様へ運ばれてきて,一件落着。
これはまあ仕方ないですよね。
フードロスの量が半端ではないアメリカの実情を考えると,もったいないなぁとは思うのですが,これは仕方ありません。
もうひとつ,こんなこともありました。
こちらは「絶対に違うだろ」と言いたくなるようなお話。
場所はよく行っていた近所にあったファミレス。
日本にもある誰もが知るファミレスのチェーンです。
久しぶりに会った友人との夕食。
その時,隣の席では若い女性2人が大きなボウルに入ったサラダを食べていました。
「わ,でかいサラダだ!」と思ったのでよく覚えています。
談笑しながら食べすすめる2人。
そのサラダも残り少なくなった頃,一人がこう言ったのです。
“Oh, this is not what I ordered.”(あれ,これ私が注文したものじゃない。)
なんだかとても大きな声で言っていたので聞こえてしまいました。
すぐに店員を呼び,再度,同じことを言っていました。
そして店員さんは,再び別のサラダを持ってきたのです。
それもまたまた大きなサラダボウル。
私は思わず
“Wow!”
友人も苦笑い。
だって,「ほとんど食べておいて気付かないの?」って思うじゃないですか。
多くの方はご存知かと思いますが,アメリカはよく「返品大国」と言われます。
それは,このようにレストランの食事にもあてはまるんですね。
商品を返品する場合,日本では未使用でレシートが必要と言われる場合が多いかと思いますが,アメリカでは,基本的に何でも返品が可能。
店によってルールは異なりますが,買ってお気に召さなければ返品が可能なのです。
例えば,大手スーパーのTrader Joe’s(トレーダー・ジョーズ)。
こちらは無条件で100%の返金を謳っています。
いつ購入したものか,食べかけや使ったものかなど関係なく返品ができるのです。
返品理由を聞かれることもなく受け付けてもらえるなんてすごいですよね。
さらに,日本でも有名なWalmartでは,”We make returns & refunds fast & easy.”(私たちは返品・返金を迅速に,そして簡単にします。)として, “Easy Digital Returns(イージー・デジタル・リターンズ)を大々的に推しています。
通常,ウォルマートでは基本的に90日以内の返品はOK。レシート,または会員サイトから印刷した注文番号が記載された確認書があれば,店舗,郵送,または定期集荷便で返品が可能となっています。
レシートがない場合も,行政が発行する顔写真付きの身分証明書があれば受け付けてもらえるとのこと。
しかし,このEasy Digital Returnsでは,返品手続きを会員サイトやウォルマート・アプリで行えるシステム。購入品によっては,品物を返品することなく返金を受け取れるのです。
使いかけの日用品や食料品は,再販することはできません。それを廃棄するだけでも労力と費用がかかります。
それをかけるくらいなら,「商品はお客様の方で使うなり処分するなりしてもらい,さっさと返金してしまったほうがいい」というのがこのシステムということなのです。
いやぁ,これはすごいですね。
でも,なぜアメリカではこのように商品の「返品」に対して寛大なのでしょうか。
いろいろ説はあるかと思いますが,1つは自己主張をする文化のためだそう。
正当な主張なら日本人もすると思いますが,それ以上に主張する人が多いのもアメリカです。
お店からすると,それらの人たちに対して「正当な理由」を求めると長時間の議論にも発展する恐れがある。それならば「無条件での返品受け入れをした方が楽だ」という考えがあるそうなのです。
また,「アメリカの製品は壊れやすい」,ということも理由の一つとも言われています。
「どういう状況で動かなくなったのか」のような説明を求めると,かえって時間がかかってしまう。そこに人件費をかけるのであれば,返品を無条件で受け入れてしまった方が楽,そういう考えもあるとのことなのです。
さて,このように「返品」に対して大らかなアメリカですが,前述したようにレストランなどでも可能な場合が多いのです。
アメリカのレストランは,たとえファミレスであっても注文は細かく聞きます。
お肉を注文すると,その「焼き方をどうするか」まで聞かれ,スープかサラダか,ドレッシングはどうするか,付け合せはどうするか,まで事細かく注文する場合もあります。
そのためか自分の注文通りではなかった場合,クレームを言う人も出てくるのが自然な流れ。
「作り直して!」のような要求に,
“No”
というと,それだけで訴訟問題にも発展しかねません。
そうなると店としても面倒。
だから,無条件で作り直すということのようです。
日本では,注文を間違えられてしまった場合,
「あ,それでいいですよ。」という人が多い気がしませんか。
(あくまでも私の経験からだけですが・・・違う人がいたらごめんなさい。)
私もそのような経験をした時,
「あ,大丈夫ですよ。それをいただきますよ。」と言ったこともあります。
これはまさに「文化・習慣の違いだなぁ」とつくづく感じるのです。
でもこれだけ返品を受け付けて,企業としてやっていけるのか?と他人事ながら気になってしまいます(笑)
さて,冒頭の担々麺のお話。
会計の時にも中国人のお兄さんから再度,「今日は本当にすみませんでした。今度サービスしますからね。」と言ってくれて恐縮してしまいましたが,そう言われるとなかなか次には行きづらくなるもの。
その日から1ヶ月くらいたってやっと行くことができたのですが,その時も同じお兄さんが注文をとってくれました。
そして,「今度サービスしますね」は,すっかりと忘れ去られていたのでした(^_^;)
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。