前回は,
「英語的感覚を身に付けて英訳してみよう!」
と,クイズ感覚でご紹介させていただきました。
「英語ではこう言うんだ。」
「状況などで考えればいいんだ」
と,英語で話す際に少しでも気持ちが楽になっていただけたらいいなぁ,と思っております。
で,最後にお伝えした
「あの番組」
にちなんだ英語,どの番組でどんな英語かわかりましたか?
―ニュアンスを掴むには妄想が一番!?―
前回の記事の最後の画像で,
「きっとアレだ!」
と思われた方,たぶん正解!
画像は「空港」でしたよね。
そう,あの「日本に来た外国の方々に来日の理由を訊く」あの番組です。
番組名の下には英語で,
“Why did you come to Japan?”
と書かれています。
まさに,
「あなたはなぜ日本に来たのですか。」
です。
これ,日本語をそのまま英語にしていますし,意味も全くその通り。
学校のテストで
「[あなたはなぜ日本に来たのですか。]を英訳しなさい。」という問題があれば
まちがいなく正解です。
でも,実際はちょっと注意が必要な表現なのです。
ちょっと想像(というか妄想?)してみてください。
(ちょっと長いけど,お許しを!)
[妄想開始]
あなたは日本を代表する大映画スター。
「今の自分は映画がパートーナー。だから人間のパートナーは作らない。」
をキャッチフレーズに,老若男女からも大人気。
そんなあなたに先日,超有名ミュージシャンの◯◯との熱愛報道がありました。
その情報を入手したメディアは大騒ぎ。
本来は東京にいるはずのアナタは,秘密裏に予定を変更してグアムへ。
グアムの空港へ到着すると,もうすでにたくさんのメディアが待ち構えています。
そこで,
“Why did you come to Guam?”
と,レポーターから訊かれました。
[妄想終了]
と,ここまでお付き合いいただき,ありがとうございました(笑)
さて,報道陣から少しでも離れていたいと思って来たグアムなのに,
そこにはまた多くの報道陣が!
そこで訊かれた,
“Why did you come to Guam?”
(あなたはなぜグアムに来たのですか?)
すごく直接的でストレートな質問だと感じませんでしたか?
もしかすると「不躾だなぁ。」
と思われたかもしれません。
そうなんです!
その感覚なんです。
長いフライトの後,
「ふぅ。やっと日本に着いたぞ!」と思っていたところ,
“Why did you come to Japan?”(あなたはなぜ日本に来たのですか?)
と「いきなり」訊かれたら,そう感じる外国の人もいる,ということなんですね。
―「何があなたを日本に連れてきたの?」―
確かに,誰でもいきなりストレートな質問をされると構えてしまったり,
あまり良い気分にならなかったりするもの。
この “Why did you come to Japan?” も,見ず知らずの人にいきなり訊かれると
「え,何なの?」
と気分を害す人もいるのは否めません。
ではどう言えばいいのか。
これも英語的発想になるのですが,こういう表現がよく使われます。
“What brings you to Japan?”
“What brought you to Japan?”
“bring”
“brought”(“bring”の過去形)
を用いて,
「何があなたを日本に連れてきたのですか?」という表現を使います。
これが日本語で言うところの
「あなたはなぜ日本に来たのですか?」
になるんですね。
つまり,
「何があなたを日本に来させたの?」
↓
「あなたを日本に来させたものはどんなこと?」
↓
「あなたはなぜ日本に来たの?」
となるのです。
「なぜ」を “why”と訊くのではなく,「何があなたをそうさせたの?」のように訊くなんて,面白いですね。
ちなみに “bring”(現在形)と “brought”(過去形)を使う場合の大まかなイメージですが,
“What brings you to Japan?”
のように現在形の “brings”を使った場合は,まだこれからも日本に滞在する人に対して言う感じで,
“What brought you to Japan?”
と過去形の “brought” を使う場合は,日本滞在を終え,これから自分の住む国へ帰る人に対して言うイメージです。
ですが,厳密には大きな違いはありませんので,どちらを使っても大丈夫です。
―話し方や表情が大事―
「あなたはなぜ日本に来たのですか?」
= “What brought you to Japan?”
= “What brings you to Japan?”
と言った方がいいのはもちろんなのですが,やっぱり思い出せなくて,
ついつい
“Why did you come to Japan?”
と言ってしまうかもしれませんよね。
それは仕方ありません。
相手の人も,英語が母語ではない日本にいることはわかっているし,
日本人の第一言語が英語ではないこともわかっているでしょう。
なので応えてもらえると思います。
でも気をつけたいのが,
「いきなり言わないこと」
「やわらかく笑顔で言うこと」
だと思います。
その人と初めて会ったのだとしても
“Hello. I’m ◯◯.”などといい,
“Can I interview you?”(インタビューしてもいいですか?)
などと前置きの会話をしてから,やさしく言えば気分を害する人はいないのでは,と思います。
でもできるだけ,
“What brought you to Japan?”
“What brings you to Japan?”
を覚えて使ってみましょうね。
―いくら笑顔でも…―
先週のコラム内で,
「お先にどうぞ」= “After you.”
をご紹介させていただいた際に, “After me.”もあるんですよ。とお話したかと思います。
正直,私自身も使ったことはありませんし,使っている人を周りで聞いたこともないのですが, “After me.”だけを使った場合の意味は,
「私の後で」=「私が先」
というニュアンスになるんですね。
これきっとみなさんご想像どおりだったのではないでしょうか。
複数人で会話などをしていて,だれかと同時に話した場合に
「私に先に言わせて」
みたいな感じで, “After me.”と言うのでしょうか。
でもちょっと高圧的な気もしますよね。
実は先日,ある地方から飛行機で東京へ戻った時にこんなことがありました。
羽田空港へ到着し,私は最寄り駅までリムジンバスで帰ることにしたのです。
ご存知の方も多いかと思いますが,リムジンバスの乗り場は番号別にたくさんあります。
その一つ一つの番号の乗り場内にも,1・2・3とレーンが引かれており,それぞれ行き先が違います。
私は早く到着しすぎてしまったため,3番の一番前。
となりの2番は,私の行き先とはまったく違う方向の駅へ向かうレーンで,まだ男性1人しか並んでいません。
私の後ろには,私よりも年上の女性,そしてどんどん人が並び始めていました。
2番の男性の後ろに20代くらいと思われる女性が歩いて来て並ぼうとしたところ,私の後ろにいたそのおばさまが,その女性の元へ早足で寄って行き笑顔で,
「私,さっきから並んでいたの。だから私が先,ね。」
と言うではありませんか。
自分が行き先を間違えて並んでいたことに今気づいたのでしょう。
その女性は,「私が先,ね。」,と笑顔で…つまり “After me.”と言ったのです。
私は
(い,いや違うと思うけど…)
と思いつつ声をかけられた女性に目をやると,首を傾げながらも,おばさまに譲っていました。
やっぱり “After me.”って笑顔だとしてもキツイのかもなぁ。
“After me.”よりも “After you.”が絶対にいいよね。と思った出来事でした。
と余談がなが〜いCozyでした。
それではまた来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。