【World Life】とは?
スポンサーリンク

首脳会談で別人のふりをした首相?

World Lifeな生活
この記事は約5分で読めます。

「えっ…何してるの?」

まだ安倍さんが首相でトランプ氏が大統領だった頃
テレビで二人の首脳会談の特番を見ていた時のことです。

中継されていたのは写真撮影。二人の首脳が握手したり、二つの椅子に座って言葉を交わしたりしています。

その時、一人のカメラマンが二人に「こちらを見てくださ~い」と(日本語で)言ったんです。
日本語だったのですが、トランプ氏は自分にもかけられた言葉だと感じたのか、
安倍さんにすぐ英語で

“What did he say?”

(彼は何と言ったのですか?)
と質問しました。

それに答えて安倍さん

“Look at me!”

(「こちらを向いてくださ~い」の英訳でしょうね)

カメラマンと安倍さんは、(これでトランプ氏はカメラの方を向いてくれるだろう)と予想してたはずです。

ところが”Look at me.”と聞いたトランプさん、
そのカメラマンではなく安倍さんの方に顔を向け、じっと安倍さんを見つめたんです!
他の記者達も戸惑ったのか、続いていた沢山のシャッター音が急にまばらになりました。

そこで冒頭の
「えっ…何してるの?」で
私は頭の中が、「?と!」で一杯になったんです。

このちぐはぐさはどうして起きたの?

この珍事が起きたのは、安倍さんの意図がトランプさんに正しく伝わらなかったからですよね。
安倍さんの意図は(あの記者は”Look at me.”と言ったんですよ)だったはずです。ところが、トランプ氏は”Look at me.”と安倍さんから言われて(カメラマンは俺がMr.Abeを見てる写真をとりたいんだ)と思い、サービス精神で?安倍さんを見続けた。何だか変だと記者たちも手を止めたというわけです。

ではなぜ安倍さんの意図がトランプ氏にうまく伝わらなかったのか。
実は英語と日本語の言い方の違いに潜んでいます。このやり取りを2か国語で比べてみましょう。

日本語:
記者「こちらを見てくださ~い」
トランプ氏「彼は何と言ったのですか」
安倍氏「こっちを見てと」

実際のやり取り
記者    :こちらを見てくださ~い」
トランプ氏 :What did he say?
安倍氏   :Look at me.

安倍さんの意図がトランプ氏に伝わり損ねた肝心の所はLook at me.ですね。

Look at meの3語が記者のセリフだと伝わらず、安倍さんが自分自身のセリフとして言ったと受け取られてしまいました。

つまり安倍さんが記者のセリフを代弁したことが伝わらなかったのです。

さっきの日本語にしたやり取りでは

安倍氏「こっちを見てと」

と言う風に「と」で「こっちを見て」が記者のセリフだということが分かりますが、英語のLook at meだけでは代弁だということが伝わらなかったわけです。

それにしても、面白いですね。代弁とか引用かどうかが伝わるかどうかで、いろいろなことが起きるんですね。今回は少し笑えるぐらいで良かったですが、一つ間違えたら大変だったかも。(仲の悪い国同士だったら「なぜお前の顔を見なければならないのだ!」とか「そんなに俺の顔をじろじろ見るな!」とか、外交問題化したかも。記者が責任被って辞職したりして…)

誤解を防ぐ方法①

誰がどの発言を言っているのかということは正式な場面になればなるほど、問題になりえます。どうしたら防げるかということを知っている必要があるし、知っていれば便利です。

私の知っている防止策は二つ。どちらも「これは引用だ」とはっきりさせます。

一つ目は手のジェスチャーです。とても簡単なので、便利ですよ。

そのジェスチャーを説明します。

まず日本でよくやる「ピース」のVサインを両手で軽くゆる~く作ります。そうしたらそれを両耳の前にもってきます。こうすると両手で鳥のかぎ爪を作っているような格好になります。ここでセリフを言いながら、V字の人差し指と中指を1,2回曲げ伸ばし。これでそのセリフが“ ”の中に挟まれ相手に引用だと伝わります。

さっきの例で言うと、安倍さんがこの身振りで ” Look at me.”と言えば、伝えたい意図がはっきり伝わったはずです。

もう一つの方法は、誰がそう言っているのかをはっきり言うやり方です。

誤解を防ぐ方法②

冒頭の場面だったら、例えば「彼(記者)は言った」とか「彼(記者)は我々に頼んだ」というところまで、ちゃんと言葉にするわけです。例えば

He said, “Look at me.”
He asked us to look at him.

記者    :こちらを見てくださ~い
トランプ氏 :What did he say?
安倍氏   :He said, ” Look at me(, please).”

こういうやり取りがあれば、二人はカメラ目線で無事写真に納まったでしょう。

話法にも英語と日本語の差

自分の発言の中で、別人のセリフをどう扱うかというテーマは「話法」と呼ばれます。
例のやり取りでも、起きているのは話法の問題です。最後に、日英の視点の変わりようの差という点から少し見直してみたいと思います^^

日本語では、発言する人の立場・視点がころころ変わります。この特徴が安倍さんのLook at me.に出ていて面白いですね。安倍さんは”Look at me.(私を見て)”と言った時、自分の視点からカメラマンの視点に移って伝えてしまったのです。英語なのに日本語の癖が出たのか、何の前触れもなく急に別人の立場でしゃべってる訳ですから、トランプさんが理解できなくて当然だったのかもしれません。

これに対し、英語では、別人の発言を伝えるなら、ちゃんと引用らしくする。これって話法のすごい差です!後になってトランプ氏も「日本人は時々別人に化けるのか?」と言ったとか…。

話は最後にロシア語の世界に飛びます。
ある評論家はドストエフスキーを評して「彼の作品は突如登場人物が作者を押しのけて話し出す」と言っています。私はそれを読んで以来「ドストエフスキーって話法の魔術師だ!」と勝手に解釈し、話法に何やら惹かれるものを感じているのです。    

でも、続きはまたの機会に! See you later!

 

タイトルとURLをコピーしました