「フランス人って、冷たいって聞くけど本当? 英語が分かっててもフランス語で返すんでしょ?」
フランスの話になると大抵出てくるのがこの質問。「フランス人って冷たいんでしょ?」
どこからどう広まったのか分からないけれど、日本では都市伝説レベルで伝わっているフランス人は冷たい説。
これは、英語で話しかけてもフランス語で返される事から来ていると思われる。
フランス人はプライドが高いからフランス語しか話さないとか、はたまた、フランスとイギリスは長い間戦ってきた歴史があるから、その国の言葉を話すのは嫌なのだとか…。
本当かどうか分からないような話まで、私も色々と聞いたことがある。
さて、実際のところは、どうなのでしょう? フランス人って冷たいの?
<パリの洗礼>
かくいう私も、卒業旅行で初めてパリに行った時に経験済み。いえ、きっとパリに1,2回行ったことがある人は感じるでしょう。「フランス人って冷たい!」と。
パリの道路は放射線状に広がっている道が多く、一筋間違うととんでもない所へ行ってしまう事がある。建物も似ているし、道も細かく入り組んでいてどれがどの道か分からなくなってしまう。
それで、道行く人に英語で話しかけ地図を見せて聞いてみる。すると、立ち止まって聞いてはくれるものの、返って来るのはフランス語。
しかも、表情もジェスチャーもあまりないので、何を言ってるのか、言おうとしているのか全く分からない…。もしかしたら、フランス語では丁寧に説明してくれているのかもしれないけれど…。
道を教えてあげようとする気持ちが伝わってこない!冷たく突き返されている気分になる。
その時、私も思った。「フランス人って、冷たい!私の言ってる事分かってるはずなのに、フランス語で返すなんて。英語がそんなに嫌いなの?」
そんな事もあり、最初のパリのイメージ、そしてフランス人のイメージは良くなかった。
そんな冷たいフランス人のイメージが変わったのは、何回目かの時に訪れたディズニーランド・パリ。
ディズニーランドという夢の国だからなのか、ヨーロッパ各国から観光客が来るからか分かりませんが、そこにいたのは流暢な英語を話す陽気なフランス人キャスト達!
英語で色々話しかけてくれたり、肩を組んで写真を撮ってくれたり…。
「フランス人も英語話すんだ~!しかもこんなに陽気な人たちだったの?!」とフランス人のイメージがガラリと変化。
しかし、そうなると「英語話せるのに、英語じゃなくてフランス語で返してきたあのパリの人たちはやっぱり冷たいんだ…。」とその当時まだ学生だった私は思っていた。
<英語を話さない本当の理由>
それから添乗員になり、フランスを何度も訪れるうちに街の美しさ、芸術、建物そして料理に魅了されフランスが大好きになっていきました。
それでも、フランス人、とくにパリの人たちの冷たい印象は変わらず。それで、パリ在住のガイドさんに聞いてみた。
「なんで、フランスの人って英語が分かってるのにフランス語で返すんですか?」
すると、意外な答えが!
ガイドさん:「英語、話せないからだよ」
私:「???。でも英語通じてますよね?」
ガイドさん:「言ってる事は何となくわかるんだと思うよ。でも話すことはできないから話さない。フランス語で返す。」
私:「え~!いじわるでフランス語話してたんじゃなくて、英語話せないから話さなかったんだ!」
これは衝撃!
「え?でも、英語話せなくても普通少しでも知ってる単語とか使って説明しようとかしません?」
ガイドさん:「それはないみたいだね。無理に英語を話そうと思ってないんじゃない?」
私:「なるほど~。」
「冷たいわけじゃなくて、英語を話せないから話さないだけだったんだ~」そう思うと、フランス語で返されても「そうか、英語話せないからだね」と優しい気持ちになる。
確かに、私が出会ったフランス人の人たちは英語を普通に話す人か、全く話さない人かどちらか。
知ってる単語だけ英語を使うとか、すごく片言とかはない。ゼロか100かという感じ。
京都のゲストハウスで働いていた時、若いフランス人の男性のお客様がいた。彼は柔道を習いに日本に来ていて長期滞在をしていたのだけど、日本語はもちろん、英語も全くゼロ!!
挨拶さえも“Hello”ではなくいつも“Bonjour”。延泊を希望した時も、数字も曜日もフランス語。内心「数字とか曜日位は英語知ってるんじゃないの?」と思ったが、彼は終始フランス語オンリー。
私たちも知ってる限りのフランス語や、ネットの翻訳機能を使って会話を試みるもののなかなかコミュニケーションはとれない。元々口数も少なかったが、日がたつにつれ、彼は益々暗く、落ち込んだ様子に。
こちらも心配して声をかけたいが、フランス語のみだと声もかけづらい…。結局そのまま暗く沈んだフランス人の彼は帰国していった…。
しかし、1年後、彼は再び日本に、そしてまた私たちのゲストハウスに帰って来たのです!しかも前の暗く沈んだ彼ではなく、明るく元気な顔で「こんにちは!」と日本語で!
なんと彼は、日本語を勉強して来ていたのです!一生懸命勉強したひらがなや漢字がびっちり書かれたノートを私たちに見せ、「日本語、勉強した。前に来た時、言葉が分からなくて悲しかった。」と。これには、みんなで手をたたいて拍手。「おかえり」と彼を迎えました。
ワーキングホリデーで来ていた彼は、その後私たちのゲストハウスのスタッフとなり一緒に働き、遊びに行く仲間となりました。彼は根暗ではなく本当は陽気でおしゃべりなフランス人だったのです。
<堂々と日本語を>
フランス人がどれ位のレベルから外国語を話すのかは分からないけれど、自分が英語を話せないと思えば、フランス語だけで話す。しかも堂々と当たり前のように。フランス人だからフランス語を話すのは当たり前と言えば当たり前なのだけど…。
この堂々とフランス語だけを外国人に向かって話すところが、冷たいと見られる所以かもしれない。が、これはある意味凄い事だなと思う。だって、彼らの中では英語を話せないという事をマイナスには捉えていないという事。
私たちの中には、英語で話しかけられたら、もしくは外国の人から話しかけられたら、「英語を話さなければいけない!」そして「英語を話せないのは恥ずかしい!」というある種の思い込み、ありませんか?
それで、知ってる英単語を並べて言ってみたけど、通じないと落ち込んでしまう。または、少し英語で話しかけられただけで“No! No! No English!”とか “I can’t speak English!”と言って逃げたりする外国人恐怖症ともいえる人。
“No English!”や “I can’t speak English!”の英語だけがやたら上手な人もいる。それがさらっと言えるだけでも十分英語を話せていると私は思う。だけど、実際は「英語なんて話せない。無理、無理」と言って手を振る人が多い。それだとせっかく、外国の人たちと交流が持てるチャンスを無駄にしているようでもったいないと思う。
フランス人的に考えれば、英語は話せなくてもいい。英語が話せないのは恥ずかしい事じゃないし、英語が話せなければ、堂々と日本語で話したらいいという事になる。
だって、私たちは日本人なんだし、日本語を話すのが当たり前。英語を使わないといけないというルールがある訳でもない。それなのに、英語を話さなければいけないと思っているのは日本人の優しさなのか、それとも単なる思い込みなのか。どちらにしても、英語を話さない事で卑屈になる必要はないのだ。
堂々と日本語だけを使えばいい。ただその時に、フランス人のように「冷たい」と思われるのは避けたいところ。
これは、同じラテン語系で、同じく英語が苦手なイタリア人やスペイン人を見習いましょう!
彼らも英語を話せる人たちは少ないけれど、印象はフランス人とはまるで違う。彼らもほぼイタリア語かスペイン語オンリーにたまに訛りのある英語が混じる程度。ただ違うのは、表情やジェスチャーがほんとに豊か!
「あ~、知ってるよ」とか「それは、遠いね~」とか表情で分かる。そして、目印を指さしたり、そこを曲るよと手を曲げたり、親切?な人は腕を掴んで引っ張って行ってくれる(;^ω^)
こうなると、しゃべっている言語は何でもよくなる。言葉でのコミュニケーションではなく、心でのコミュニケーションだ。結局、「道を教えてあげよう」「助けてあげよう」という気持ちが大事。心でのコミュニケーションに国境はないし、誰にでもできる。
もし次、外国人に道を聞かれたら、“No! No!”と逃げる代わりに、フランス人のように堂々と日本語で、イタリア人やスペイン人のように表情豊かに、ジェスチャーを使って教えてあげましょう!外国の人たちとの交流がきっと、もっと、ずっと楽しくなるはずですよ♪
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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