正月明けに、Newsweekの日本版(デジタル)を読みました。
ティーバッグからマイクロ・ナノプラスチックがどの程度溶け出すか、調べた研究が紹介されていました。
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マイクロはミリの1/1000
ナノはマイクロの1/1000
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研究では、3種類の素材のティーバッグで紅茶をいれ、一滴中のマイクロ・ナノプラスチックの数を調べたようでです。
ティーバッグの素材によって
・12億個
・1億3500万個
・818万個
と、プラスチックの粒子が溶け出しているとのこと。発がん性の可能性など、健康リスクについても述べられていました。
数の大きさにびっくりした私は、本家の英語版も読んでみました。
するとこの研究に関する記事が2本あり、一本目は日本版と同じ内容で、実験と科学者の警告で、2本目に、いかにそのリスクを減らせるのかという内容が。
日本版にはこの2本目に対応する記事が見当たりませんでした。
① 日本デジタル版 科学者の警告
ティーバッグから有害物質が放出されている…研究者が警告【最新研究】
https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2025/01/531822.php
① Newsweek英語版 科学者の警告
Scientists Warn of Harmful Release From Tea Bags
https://www.newsweek.com/harmful-release-tea-bags-microplastics-nanoplastics-2005123
② Newsweek英語版 警告と回避方法
Plastic Tea Bags Update: How To Avoid Harmful Release
https://www.newsweek.com/plastic-tea-bags-update-avoid-harmful-release-2009157
日本版では、科学者は実験結果の最後に、検査方法の確立や公衆衛生対策の必要性、規制強化を訴えているようですが、発言の結びが、マイクロ・ナノプラスチックの発生源はティーバッグだけでなく色々あるので、全部を避けるのはなかなか難しい、みたいな終わり方。
何だか「諦め的」態度で終わっているような気がします・・・。
対して英語版は、警告だけに終わらず、プラス回避対策も説明しています。
3種類の素材があれば、溶け出す数的にはどの素材が一番ましか。またプラスチックフリーのティーバッグもあるし、ティーバッグを使わず茶葉から直接入れる手もある、というようなことも書いてあります。
これって記事の方針としては、日本版と英語版で、本質的な違いがあると言ってもよいのでは。
日本版がこのまま一本目の扱いだけで終わったとすると、本家の趣旨の大事な「回避対策」が伝わらないことになります。こんな大事なことを伝えないでいいのでしょうか?
本家の英語版の記事は、一本目の「警告版」と二本目の「回避策版」で、一つと考えられます。もし日本版が、最初の警告版だけなら、本家の内容とかなり離れることに。何故本家に合わせないのかと疑問になります。
こんなに本家と差があるのに、「本家の日本版」として提供されることに疑問を感じるのは私だけでしょうか?大半の読者は、日本版と英語版との、このような差に気づかない可能性がありそうです。
疑問が消えないので、日本版の編集元に電話して事情を聞きました。
すると以下のような回答
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この記事は、日本版でもデジタル版だけにのっている記事で、そして英語版の一本目だけ訳したもの。紙の日本版には1本目も2本目も出ていない。何の記事を載せるかは、日本スタッフの裁量です。
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残念ですが、言わば「何の記事を載せるかは勝手にやっていい」と事前にお墨付きをもらっているので全て問題はない、みたいな感じでした。
なんと紙の方には二本目の回避対策は勿論、一本目の、ティーバッグから溶け出すマイクロ・ナノプラスチックの研究記事自体のっていないのですね。
問い合わせをしてみて、さらに違和感が深まるかたちとなってしまいましたが、新たな事実を知ることができました。
もしあなたが、Newsweekの日本版を読んでいるなら、たまに英語版と比べてみてはいかがでしょうか。英語の勉強になるばかりか、思いがけない発見があるかもしれません。
Untile next time,
Jiro
追記1:
今回の編集元への問いかけ、巨大な企業だけに、一つの記事に対する一本の電話など、多分痛くも痒くもないでしょう。極小の抵抗かも。でもマイクロプラスチックと同じで、非常に小さいモノに実は効果があるかもしれませんよね。
尚、2025年2月現在、今も問題の2本目にあたる記事の掲載はありません。
追記2:
1 micrometer と1 nanometerを1μm、1nmと書きます。μ:ギリシャ文字(ミュー)。
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員