「英語の発音、すごく苦労しました。アルファベットを見ても、どう発音するのか分からなくて…」
これは、まだ私が高校の英語教師をしていた頃、ある卒業生に言われた言葉です。
確かに、英語読みにくいですよね。
例えば、tea (ティー/紅茶) はなぜ「テア」と読まないのか、とか
fool(フール/愚者)はなぜ「フォール」と読まないのか、とか。
実は、こういう疑問への答えは英語の歴史の中にあります。「英語の歴史」なんて聞くと、堅苦しいなと、あなたは思うかもしれませんね。
さて英語の発音の厄介さ、その答えは母音の大変化。15世紀~17世紀に起きた「大母音推移」(The great vowel shift)という出来事が理由です。
これはどういう出来事だったのでしょう。
<大母音推移でこうなった母音の発音>
「大母音推移」と呼ばれる出来事で、まず英語の母音は300年間かけてこう変化しました。
今まで「ア」と発音していたものが、「エやエイ」に、
今まで「エ」と発音していたものが、「イ」に、
今まで「オ」と発音していたものが、「ウ」というように、発音自体が完全に変わってしまったそうなんです。
例えば
teaは「テア」のような、ローマ字読みから今の「ティー」に、
foolは「フォール」のようなローマ字読みから、今の「フール」に変わりました。
今お話し中の変化って、特別な単語だけが変わっただけではありません。「ア」なら「ア」という音を含んだ全ての英単語の発音が、ごそっと変わった大きな変化だったと言われています。
<発音変化⇔綴り>
発音は大きく変わったのに、綴りは変化しなかったんです。発音は新しく変わったのに、綴りは古いまま残った。このため綴りと発音とが対応しなくなってしまったんです。
昔「テア」のように読まれていたteaは、大母音推移で発音は「ティー」に変わった。ところが綴りは昔のtea(テア)のまま。
昔は「フォール」のように読まれていたfoolも、発音が「フール」に変わった。ところが綴りは昔のfool(フォール)のまま…というわけなんです。
昔 | 大母音推移後 | 昔 | 大母音推移後 | ||
綴り | tea | tea | fool | fool | |
発音 | テア | ティー | フォール | フール |
このように英語の発音と綴りは、大多数の単語で食い違うようになりました。綴りは変わっていない、発音だけ変わってしまった。
日本語で言うと、「ありがとう」と書いてあるのに、「おはよう」と読まなければならないようなもの…読みにくいはずですね。
私が大学でフランス語等、英語以外の外国語を学んだ時、読み方は意外に楽で不思議でした。 そこで調べてみると、英語以外の言語は、基本的に全て日本で言う「ローマ字読み」。
イタリア語などは、ほぼ「ローマ字読み」で、日本人でも発音は比較的簡単だと言われる…
けれど、英語だけが「ローマ字読み」のように発音しない…。つまり、英語だけが特別。英語が「ローマ字読み」のように発音しないので、特に難しいということが分かったのです。
<自分を誉めて、気持ちが楽に?>
よく英語の発音が出来ませんとか、英語の発音難しいです!って聞きますが、そもそもチャレンジのハードルがかなり高めなんですよね^^:
日本人にとっては、一番初めに学ぶのは英語。そして日本語のように簡単に話せることを目標にするかもしれませんよね。でも、これ実は意外に設定ハードルが高いんです。読み方に関しては、外国語の中で多分、相当厄介な部類に… 難しいのはある意味仕方ないんですね。
ですから、もしあなたが英語の勉強に挫折したり、どれだけ頑張っても、発音上手く行かない…等と思ったことがあっても、…
意外な「難しさ」を持つ英語、それにしぶとく向き合おうとしているあなたは相当立派!
そして焦らず英語と付き合っていると、今度は意外な「楽しさ」が見えてくる…そうなってくる
といいですね!
See you soon!
※追伸 「大母音推移」なぜ起きた?
大母音推移の原因については、諸説あります。
黒死病で人口が減り下層階級独特の英語が広まったとか、国民としての意識が高まり言葉も英語独特になったとか。でもどれも今いちかも…
私は、英語を話す人は、母音を別の母音にパッと変えるのが好きなので、と思います。
どういうことかと言うと、例えば、名詞の変な変化。man(マン/男一人)⇒men(メン/2人以上)、foot(フット/脚一本)とfeet(フィ―ト/2本以上)等。母音が別の母音にスッと変わってますよね。
また動詞も、同じように母音が変わるのが多い。drive (ドライブ/運転する)– drove (ドロウヴ/運転した) などなど。不規則動詞というものです。
こんな「母音変え好き」も、大母音推移の大きな理由では、という気がします。
私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員