【World Life】とは?
スポンサーリンク

外国人の憧れはコタツ?

World Lifeな生活
この記事は約5分で読めます。

もし、あなたの街に外国人が来て、あなたが案内やおもてなしをする事になったとしたら…
あなたの家に滞在して、数日間過ごすことになったとしたら…

あなたはどこを案内して、どんなおもてなしをしますか?

日本に来た外国人が興味の持つものって何でしょうか?
お城?神社仏閣?富士山?…
ちょっと考えてみてください。

それは私達日本人が考える物とは全く違うものかもしれません。

<わ~!憧れの〇〇〇!>

知人が交換留学生を受け入れる事になり、言葉が通じるか不安だからと最初の2日間一緒にいてもらえるようにと頼まれた事があります。

交換留学生は、シンガポールからの女子学生2人。知人は母の友人で70代の女性一人暮らし。社交的な彼女ですが、女子学生とは歳の差もあるので話も合うのか心配な様子。

まずは、彼女たちを迎えに歓迎セレモニーが行われている会場へ。地元の小学生が日本の歌やダンスを披露する。その後、留学生とホストファミリーとの顔合わせがありそれぞれの家へ。

シンガポールから来た2人は、背が高くスラっとした笑顔が素敵な女性。話しやすそうで安心する。

車に乗った時には、既に日は落ちていた。
初めての日本なら景色の綺麗な所や有名な神社など色々案内してあげたかった。宮崎なら海岸線を走って、海がきれいなビーチや奇岩が珍しい鵜戸神宮などが定番の観光コース。

だけど、外はもう暗いし、知人の家は海とは逆方向。山側へ1時間近くも走った山あいの集落。

私は、内心、若い女の子2人が田舎の家で退屈じゃないか、周りは何もないしがっかりするんじゃないかと少し心配していた。

車は賑やかな町中を通り過ぎ、だんだんと明かりも少なくなる。そして最後には街灯も民家の明かりもない真っ暗な中をひた走る。

外はほとんど何も見えないので、私はなるべく彼女たちが退屈しないように、シンガポールの事を聞いたりして会話が途切れないように気を遣う。

1時間ほど走ってようやく、家に到着。知人の家は平屋の横に長い家。広い庭と裏にはブルーベリー畑やミカン畑まである広い土地。しかし、残念ながら夜のためほとんど何も見えない。

到着してまず2人を案内したのはキッチンから続く広いリビングダイニングルーム。ダイニングルームにはテーブル席、リビングにはソファーセットが置いてある。
 
横には小上がりの和室も設けられたおしゃれな造りで、広々とした空間。「お~!ステキ!」と言うのを期待していたのだが、意外にも薄い反応。

後から話を聞くと、海外旅行にもよく行ったり、留学もしていたりと裕福な家庭そう。自宅のリビングも広くておしゃれなのかもしれない。それで特別驚くこともなかったのだろう。

少し落ち着いたところで、家の中を案内する事に。

「ここがトイレで、ここがバスルーム。ここは、私たちのベッドルームで…この部屋があなたたちの部屋ね。」

他の部屋も特別な反応はなし。一通り案内してリビングに戻ろうとした時。

留学生の一人が“Oh~!”と声を上げた。

「どうしたの?」と聞くと

“Is that KOTATSU?”

「こたつ?」と思って横を見ると、案内してなかった小さな暗い部屋の奥に、こたつがぽつんと壁際に置いてあった。

「え?こたつ知ってるの?」と聞くと

「漫画で見た事がある!こたつを見てみたかったの!」
「部屋に入ってもいい?こたつ見てもいい?」興奮気味の2人。

知人に尋ねると、「え~?こたつ?別にいいけど、そこは、書斎で狭いし寒いからこっちのリビングの方が広くて温かいし、いいんじゃない?」と。

でも、2人は“Kotatsu!Kotatsu!”と目を輝かせているのです。

(こたつがそんなにいいの?!)と不思議に思ったが、私が「こたつに入ってみる?」と促すと「わ~!いいの?嬉しい!」と満面の笑み。

すぐ隣の部屋には広いリビングにゆったりとしたソファーもあるのに、4畳半程の狭い部屋で本棚に囲まれ、ぎゅうぎゅうになりながらこたつに入る私たち。

(こんなのでいいのだろうか?)と思っていたが、2人は本当に嬉しそう。

「こたつってあったかいんだぁ~!」
「こたつでみかん!憧れだった。」というのです。

こたつが憧れって?!そうなの?!

これは、本当に予想もしていなかった事。

さっきは、小上がりの和室を見ても特に“Oh!Tatami mat!”ともなんの驚きも見せなかったのに、こたつを見た時はテンションが全く違ったのだ。

でも、考えてみれば畳や布団は、今では海外でも見る事がある。シンガポールならどちらもありそうだ。だけど、こたつは確かに日本でしか見ない。

しかも、最近では日本でさえもこたつのない家も多い。そんな中で、こたつに出会えたのは彼女たちにとったら超ラッキーで嬉しい事だったのかもしれない。

外国人の人たちが感動するポイントって日本人には意外と分からないのかもしれない。

<何もなくて…それでいい>

次の日の朝。私が起きた時にはもう2人は起きていた。

昨日はこたつで盛り上がってくれたが、今日は本当に何もないけど…。

朝食の準備ができる間、2人は散歩に出かけた。

お庭はきれいに手入れされているが、後は畑が延々と続くのみ。特に風光明媚な所も観光名所もない。

だが、帰ってきた2人はまたまた興奮気味。
「すご~い!こんなに広い畑とか土地を見たことない!」

彼女たちの家はシンガポール。

シンガポールはほとんどがビルやマンションで埋め尽くされていて、こんな広い土地を見たことがないというのだ。

「朝の霧が立ち込めた畑と山の風景は本当に美しい!ずっと歩いていたくなる!」

田舎育ちの私には珍しくも何ともない景色。田舎過ぎてちょっといやだなと思うくらいなのに、畑を見たことがない都会っ子からしたら珍しくて美しい景色なのだ。

何もない所だと思っていたけれど、何もないのが逆に良かったのだと気づく。

外国の人が来たらなるべく不便のないようにとか、なるべくいい場所を案内してあげようとか色々気を使う。

だけど、結果、彼女たちが感動した物は「こたつ」と「畑」。本当に分からないものだ。

有名な観光名所や立派な家は必要ないのかもしれない。

彼らが求めている物は、日本にしかない風景や日本にしかない物。日本に来る事でしか味わえない物や景色なのかもしれない。

日本人には当たり前すぎて気づかないもの。だからもし外国人を案内する時には、色々とおもてなしに気を遣うよりも、ありのままの日本の日常を見せてあげよう。

何もないと思うような場所にもきっと外国人にとったら感動ポイントがいっぱいなのだから。

タイトルとURLをコピーしました