「ノック」と言えば,あなたはどんなことを想像しますか?
ドアを「コン,コン…」と軽く叩くノック。
野球の守備練習でするノック。
漫才師で政治家でもあったノック。
ノックもいろいろありますが,
今日は「部屋に入るときにするノック」について
ちょーっとだけ考えてみたいと思います。
きっと
「え,そうなの?!」
って思う人が1人くらいはいると思…います。
― “I knocked the door.”は間違い?―
他人がいる部屋へ入るときなどにするノック。
英語では “knock”と書きますよね。
早速ですが,
「私はドアをノックしました。」
という文章を英語にしてみてください。
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どんな単語を使うか,考えましたか?
おそらく,
“I knocked the door.”
とした人,結構いらっしゃるのではないでしょうか。
実はコレ,ちょっとトリッキーな英文なんです。
どういうことかを考えるために,まずは“knock”の意味を英英辞書で調べてみると,
“to strike a sounding blow with the fist, knuckles, or anything hard, especially on a door, window, or the like, as in seeking admittance, calling attention, or giving a signal:”
(特にドアや窓などで、入室を求めたり、注意を促したり、合図を送ったりするときに、拳や指の関節、または硬いもので音を立てて叩くこと:)
とあり,私たちの使う「ノックする」と全く同じです。
全然トリッキーじゃありませんよね。
でも,「[ドアを]ノックした」という表現をするとなると,
“I knocked on the door.”
“I knocked at the door.”
のように,
基本的には,“knock”の次に前置詞の “on”または “at”が必要になるんですね。
じゃあ, “I knocked the door.”としてしまうと,どういうニュアンスになるのでしょうか。
“knock”という単語単体の意味には,「ノックする」という意味の他に,
「トントン叩く」
「強打する,ぶつける」
「批判する」
という意味もあります。
ですので,
“I knocked the door.”
とすると,
「私はドアを強打した。」
「私はドアを批判した。」
(え〜,そんな風にとらえる?)
と自分でもツッコミを入れそうになりますが,ネイティブの場合,この文章を単体だけを聞くと,そう捉える人も結構いるみたいなんですね。
ノックという言葉は野球でも使われているので,「強打する」はなんとなくイメージできるのですが
「批判する」というのは面白いですね。
“I knocked the door.”(私はドアを批判した)なんて捉えられたら,
「ドア!,お前は建付けが悪いんだよ!」
「おいドア!キィーキィーうるさんだよ!」
って感じなのですかね。(笑)
ちなみに,先程使った「野球用語のノック」。
これ,「和製英語」だったって知ってました?
―野球の「ノック」は実は…―
“knock”には,「ぶつける,強打する」という意味もあるので,日本では野球のノックに対して使われるようになったの「かも」しれません。
でも英語では野球のノックのことを,
“fungo”
というそうなんです。
正確には,「ノックやノックしたボール」のことを “fungo”と言うのだどか。
ノックとは全然違いますよね。
辞書にも,
“The term “fungo” is used to describe a coach hitting ground balls or fly balls to his players during practice.”
(Fungoとは,練習中にコーチが選手たちにグラウンドボール(ゴロ)やフライボール(フライ)を打つことを指す)
とあります。
これも面白いですね。
―トイレでノックされたら?―
「ノック」と言えば,連想されるものに「トイレ」がありますよね。
海外で自分がトイレを使っているときに,
だれかに「コンコン」とされたら,あなたは英語でどう応えますか?
この状況って嫌ですよね。
しかもアメリカなどでは,トイレの個室って足元の部分がかなり開いているので外から見ても,人が入っているのがわかるし(笑)
でも,色々なトイレがありますので,
「もしもそういう状況になったら」
で考えてみましょう。
私の場合だと,まずは
“knock back”(ノック返し)をします。
「[英語でどう言うか?]って言ったじゃん?」
と叱られそうですが,まずは “knock back”して,
それでも続くなら,
“Yes?”
でしょうか。
たいていはそこで「人が入っているんだな。」とわかると思うのですが,
それでも何かを文章で言わなければ理解してもらえないのだったら,
“It’s occupied.”
(使用中です)
または,
“Someone’s in here.”
(誰かが入っています)
と言うと思います。
と,最後はトイレの話になってしましましたが,
「ドアをノックした」という場合,私たちのような英語を第一言語としない人が
“I knocked the door.”と言ったとしても,その話の前後から意味はわかってもらえると思います。
でも,やはり「ドアをノックした」と言いたい場合は,
“I knocked on the door.”
“I knocked at the door.”
と, “on” や “at”を付けて言いましょう。
でも,イギリスのコミュニティで聞いたところ
「“I knocked the door.”でも問題ない。」
という発言者が!
そのイギリス人の方曰く,
「イギリスの一部では使われている」ということなんですよね。
なので「間違い」とは言えないと思うのですが,それでも,イギリス人の多くやアメリカ人などは,
“I knocked on the door.”(アメリカ人が多い)
“I knocked at the door.”(イギリス人が多い)
感じで,いずれも “on”や “at”を使う,という意見でした。
間違えたとしても,話の前後から大丈夫とは思いますが,
やっぱり,多くの人が使うと言っている表現を覚えておいたほうが安心ですね。
私は,最近「ドアをノックする」ってしてないなぁ,と思ったのですが,
つい2日前にしてました。
病院で,先生の部屋に入るときにしておりました,ワタクシ。
さて,あなたが最後に「ドアをノックした」のはいつですか?
それではまた来週〜♫
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。