前回の記事で、軍隊では将校に対して“Yes, sir”と返事をするといったことを書きました。
“Yes, sir”だけでは、男女平等という観点から不十分であるので、原稿を修正しました。
“Yes, sir(ma’am)”と修正し掲載したところ、「知らなかった」、「ma’am」は何と読むのかという反応が多くありました。
軍隊の教育では、sir(サー)とma’am(ミャム)は、最初に教えられる返事の仕方です。
sirは男性将校に対して、ma’amは、女性将校に対して使います。
自衛隊で英語学校に入り、英語を履修していても、教官はほとんど男性で、女性は非常に少ないという状況でした。常日頃、上司に対する敬語は“Yes, sir”のみ。
そんな状況で、米軍基地研修で米陸軍の座間基地を訪問したところ、米軍の担当官は女性士官。
防衛省の英語学校で朝礼で挨拶するときは、“Good morning sir!”全員が声をそろえる。
訪問時の最初のブリーフィングで、自衛隊のリーダーが“Good morning, sir!”と口火を切り、
それに合わせて20名の学生が、“Good morning, sir!”と唱和した。
担当の女性士官は、目を丸くし、“Good morning, guys!”(皆さん、お早うございます)と反応。
<女性将校にYes, sirと言ってしまった!?>
女性にYes, sirというのは、失礼極まりない。sirは、男性にしか使えないので当たり前である。
どうなることかと冷や冷やしたが、日本人の失礼な物言いに対して、女性将校は、余裕の対応。
驚いた表情を浮かべながらも、
“Good morning, guys!”
(皆さん(guys)、お早うございます)
と対応。
チョットここで一言説明します。guyは、最近は「男女兼用」です。
その女性将校は、一呼吸おいて、丁寧に説明してくれた。
英語では、男性将校(officer)に対してsir(サー)をつけ、目上の女性に対しては、ma’am(ミャム)をつけるのが基本である。
米陸軍の将校は、基本的に社交家が多いので、そういったミス対応はお手の物です。また、現役の若い兵士でも、口が滑ってしまい女性将校に“Yes, sir”と言っているのを目撃したことはあります。
軍の中では、階級や地位によっていろいろな呼び方があるので、それを頭の中にいれ、咄嗟に口をついて出ることが大切です。気が焦ると間違いもある。
軍の学校では、まずは、上司の呼び方をしっかりと身に着けるよう教育されるのです。
防衛省の語学学校でも、軍事英語の初歩として、上司の呼び方についてはしっかりと学びます。
しかし、ほとんどが男性であるので、女性への呼びかけは、練習する機会が少ないということもあります。咄嗟に、女性将校に対して、“Yes, sir”と言うのも、ある意味仕方がないかもしれません。
唯、一度失敗をすれば、二度と同じ失敗をしないことが、自衛隊のモットーですから、そこはうまくいっていると思います。
もし、女性に“Yes, sir”と言ってしまったら、すかさず
“I mean, ma’am”
(ma’am と言いたかったのです)
と訂正すれば、問題ありません。I meanは、言い間違えを訂正するときに使えます。
<ma’amってどう発音すれば通じる?>
ma’amだが、もともとはmadam(マダム)からきており、その省略型でma’am(ミャム)となる。アメリカ英語は、言いやすさが一番(音便化という)なのです。そのため語を省略する。
Madamの真ん中に’が付いているのは、dを消しましたという意味になる。
マダムから「ダ」をとって、(マム)となります。読み方が分かったところで、正しい発音は?
アメリカ人は、言葉に関しては、自分が話している発音が基準となっているので、それが言語学的にどう変化したとか、取り入れられたことについては、とんと興味がない人種でもある。
一般的に、綴りに対してもあまり頓着せず、コミュニケーションは、もっぱらバーバル(verbal / 音声の、話言葉の)コミュニケーションが重視されている。
発音に関しては、アメリカ人はかなり細かいところまで、気を使って話している。というところから、ma’amの場合、(ミャム)と発音しなければならない。
日本人が、(マ~ム)とか(マアム)と発音されたのを聞くと、ma’amとは、「違うな」という感じになる。日本語英語を英語のどの単語にあたるかを思い起こすのは、かなり難しいらしい。
聞いたままの感じで反応することになる。(マ~ム)とか(マアム)という発音は、アメリカ人には「お母さん、お母ちゃん」と聞こえるのである。
「マアム」と「ミャム」は、日本人でも意識すれば、発音の違いが分かるはずだ。それらの発音によって、(お母ちゃん)、(女性への敬語)と意味が変化する。
一方、ma’amの方は、軍隊での言葉の躾であり、規律維持の手段であることから、完璧に相手に伝えることの必要から、「ミャム」と明瞭に短切に発音することが大切である。
Yes, sirも(イェッサー)と一気に言い切ることが、緊張感が伝わり、軍人には心地よく伝わる。
<ma’amとMon、日本での身近な間違いの例>
日本人が、和製英語とかカタカナ英語により、英会話で恥をかいたり、意味が伝わらないもどかしさを感じることは、多くあります。
今回の「マアム」を題材に、一つ例を挙げてみたい。
チョコレートを使ったお菓子で、不二家の「カントリーマアム」という商品がある。
これは、「マアム」なので、(お母さん)という意味で使われている。
商品説明によると、1970年から1980年代のアメリカで流行った、お母さんによる手作りクッキーというコンセプトの商品だそうである。
さらにその根拠が、「アメリカの「田舎のお母さん(country ma’am)」の手作りクッキーを意味イメージして名付けられました。(1984年発売)」だそうである。
あなたは、写真の英語表記を見て「あれ?」と気付かれたかもしれません。そうです。
「COUNTRY MA’AM」と英語表記されています。つまり、「故郷の女性名士」ということ。
であれば、発音は、「カントリー・ミャム」でなければなりませんね。
「お母ちゃん」であれば、motherを省略した「Mon」と綴り、発音は(マアム)です。
会社は、こんなにおいしいクッキーを作る母親は、故郷の誇りですといって、country ma’amとつけたのかもしれませんが、発音的には「お母ちゃん」なのです。
「マアムとミャム」発音の違いで、違うイメージになることを感じていただければ嬉しいです。
そういった発音のチェックが、英語を楽しく話す基礎になっていくと思います。
英語を楽しんでいきましょう!
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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