あなたは英語をバイリンガル式(英語+他科目を英語で)で習ってみたくありません(でした)か?私は高校生の頃すごく。学校のいちいち訳す授業がいやでいやで…
自分が英語教員になってからは、できるだけバイリンガル的なものを取り入れようとしました。(不十分でしたがw)
ところがごく最近、あるニュースに(えッ?)と思いました。ブラジルはアマゾン奥地、英語やスペイン語、さらに日本語のバイリンガル教育が進んでいるという報道。つまり日本語なら日本語で他の科目も教えられているらしいのです。
世界最大の熱帯雨林の傍、マナウス市(人口200万人)に公立バイリンガル校が2016年に日本の支援で設立されたそうです。小6~中三までの900人が日本語専攻。一日一つはバイリンガル授業(日本語・数・理)があり、日本文化の授業も。
英語・スペイン語等入れると総勢約5000人。増設予定が10校あるというのです。すごくありません?
第2次大戦前後から外国企業が進出してきた縁で、今も多文化の名残があるそうです…とはNHKの国際ニュースの内容。でもちょっと内容が日本と日本語に偏り過ぎかも。
そこで少し広い視点が欲しい私はネットを検索。するとブラジル人研究者の最適な論文が見つかりました。
それによればブラジル全体ではバイリンガル校が1300、生徒は33000人…(この論文についてはまた後で触れます)
数に圧倒されながら、ブラジルで私の憧れ、日本では広がらない直接的バイリンガル教育がこんなに普及する秘密は、…と考えて、はたと思いつきました。
それはブラジルでは言語学習への姿勢が「おおらか」なのでは?細かいミスは気にせず、どんどん使い、とにかく完璧を求めない。つまりいい加減なのでは?ということです。
私がブラジルのバイリンガルは「おおらか」で、ある意味「いい加減」と思う証拠は二つ。
一つ目は、さっきのNHK国際版で見たバイリンガル校での「剣道(日本文化)」の授業。生徒はジャージ姿だったんです。つまり剣道特有の面とか防具はなし。竹刀も何だか怪しい代物。多分教員の自作かも。
日本だったらそんなことありっこないですよね。私は高校の体育の授業で柔道をやりましたが、勿論柔道着。柔道着なしで、なんて考えもしなかったです。
(ブラジル人の)先生はそれでいて「剣道は集中力・規律等を養う」とインタビューで堂々と答えていたんです。
ブラジル式を非難しているのではなく、おおらかだと言っているのです、念の為。
2つ目の、ブラジルのバイリンガル教育が「おおらか」で「いい加減」だと推測する証拠。それはさっきのブラジル研究者の論文。その中に偶然!マナウスのバイリンガル校の生徒達(165人)にアンケートをとっているんです。その一つのQが、
“Which language do you find more difficult? Japanese or English?”.
(英語と日本語とどちらが難しいと思いますか?)。
あなたの予想はどうでしょう?
さて結果、英語或いは日本語の方を難しいと思った生徒の割合です。
英語の方が難しい・・38.6%
日本語の方が難しい・・・61.4%
私これに驚きました。ブラジルの公用語ポルトガル語は、英語と同じ仲間。ほぼ全員が日本語が英語より難しいと絶対答えるだろうと思ったのに、4割近い生徒が英語の方が難しいと….私の予想は見事にはずれたんです….。
なぜブラジルのバイリンガル校の生徒達に「日本語難しい感」が低いか?この理由こそ、私は彼らのシステムのいい加減さ、おおらかさだと思うんですね。
つまり日本語をガチガチにやってない。日本のように(知らず知らず)完璧を求めて漢字テスト、宿題とかで生徒を追い込まない、追い詰めないのでは?が私の推測。実際に確かめられませんが。
でも、そんなブラジルで生徒は立派に育っているみたい。マナウスのバイリンガル校から、高校や大学のバイリンガル校・日本語学科へ進学する者が多いらしいです。また日本留学を夢見る子もいるみたい。
さて私の思う所を単純化してまとめました。
日本:完璧を求める設立ハードルが高過ぎて、バイリンガル校がとても少ない。
ブラジル:おおらかに「適当に」作ったバイリンガル校は多く、卒業生も多い。
この比較って、ベストを求めるだけより、いい加減でもなんでも、やった方が良いと教えてくれる好例では?
日本のバイリンガル教育も完璧を求めず、ゆったりやればもっと普及するかも。
何事につけ、あなたも完璧さをいつの間にか追及し損していないでしょうか。
英語も、この際ゆったり構えて楽しく学び続けられると良いですね。
追記:
公立校でバイリンガル教育を受けるブラジルの中学生のアンケートに基づく論文 2023-09-11出版
https://ojs.revistacontemporanea.com/ojs/index.php/home/article/view/1492
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私立学校に英語教師として勤務中、40代半ばに差し掛かったころ、荒れたクラスを立て直す策として、生徒に公言して英検1級に挑戦することを思い立つ。同様の挑戦を繰り返し、退職までに英検一級(検定連合会長賞)、TOEIC満点、国連英検SA級、フランス語一級、スペイン語一級(文科大臣賞)、ドイツ語一級、放送大学大学院修士号などの成果を得る。
アメリカで生徒への対応法を学ぶ為に研修(地銀の助成金)。最新の心理学に触れた。4都県での全発表、勤務校での教員への研修を英語で行う。現在も特別選抜クラスの授業を全て英語で行っている。「どうやって単語を覚えればいいですか?」という良くある質問に答える為、印欧祖語からの派生に基づく「生徒には見せたくない語源英単語集」を執筆中。完成間近。常日頃洋書の読破で様々な思考にふれているが、そうして得た発想の一つを生かして書いた論文がコロナ対策論文として最近入賞。賞品の牛肉に舌鼓をうっている。元英検面接委員