前回の記事では私が添乗員時代、お客様に必ずしている話である挨拶とThank youについてお話しました。
実はもう一つ、必ずしている話があります。それは、海外旅行が初めての方や、2回目、3回目でまだ慣れていない…という方、ほかにも、ブランド品などの高級店に行かれる方には特に覚えておいて欲しいことです。
それが何かというと、早いサービスは良いサービスじゃない。ということなんです。
ブランド品など高級店では品物は勝手に触ったりできないようになっていますよね。そこで見たい物があって声をかけたのに、なかなかショーケースから出してくれない。見せてくれない。って話を時々聞きます。
実はこれも、外国(特に欧米諸国)の文化の違いからくる勘違いかもしれないのですが、一体なぜなのか。
早いサービスは良いサービスじゃない
イタリアでお客様に頼まれてプラダのお店へご一緒した時の事です。お店の中は、日本人観光客の人たちで溢れていて大混雑でした。
ショーケースや棚を覗き込んで、店員さんに”Excuse me! This one! This one!”と呼びかけています。中には店員さんの肩をたたいて「こっち、こっち」と手招きをしたり、勝手に棚から商品をとって見たりする姿もありました。
「少し待ってください」と言っても、次々とあちこちから声がかかり、「遅いなぁ!早くしてよ!」などと文句を言う人たちもいて、お客さんも店員さん達もみんなイライラしている感じでした。
日本であれば、早いサービス=良いサービスという考え方もあるので、一度に何人ものお客様を同時にサービスするのが普通でしょう。どんなに忙しくても声をかけられればすぐに対応することが良いサービスになる訳です。
しかし、外国では、特に高級店では1人のお客様に1人の接客員が普通で、その方へのサービスが終わるまでは次のお客の接客はしません。客の立場であれば、同じスタッフが最後までしっかりとついてくれた方が安心ですし、丁寧に扱ってもらえている感じがします。高い買い物をする場合はなおさらです。
なので、他の人の接客中に声をかけても、例えそれがすぐに済むような事であっても、対応はしてもらえないのです。前の人の接客が終わるまで待たなければいけません。それが、声をかけてもすぐに対応してもらえない理由です。
その時はあまりに混雑していたので、お客様にもう少し後で来る事を提案し、他のお店をまわったりして夕方に再びお店に行きました。接客が終わるのを待ってスタッフの方に声をかけると、きちんと丁寧に対応をしてくれました。
昼間見た時の顔とは別人のようににこやかで「さすがプラダの店員さん」と思える良いサービスでした。
「日本人だから冷たい態度をされる」のではなく、こちらが習慣を知らなかったり、マナーを守っていないから冷たい態度をとられたりするのです。
そしてもう一つ、買い物時に「お釣りをだまされた気がする…」などの話も聞くことがありますが…
お釣りをだまされた!
日本人の気質か、日本の素早いサービスに慣れているからなのか、お土産店のレジでよく「早くして!早く!」と言って声を荒げている人を見ます。ツアーの場合は時間が決められているので(急がないと!)という気持ちがあるのかもしれませんが、外国では「早くして!」と言っても逆効果です。
それは、言われたことがないから。早いサービス=良いサービスという概念がないので、(早くしよう。待たせてはいけない。)とは思わないのです。
スーパーのレジでも、長蛇の列ができていても気にすることなく、いつもと同じようにお客や他のスタッフとおしゃべりしながらレジ打ちをしています。時には、途中で自分の退社時間がきたと急にレジを閉めて帰ってしまう事もあります。
もともと「急ぐ」という考え方がないのに「早く!早く!」とせかされても、急げないのです。逆に反論して口ばかりが動いて、手が止まってしまい余計遅くなってしまいます。
これは、こちら側が余裕をもってレジに並ぶしかありません。バスや飛行機の出発時間は店員さんには関係のない事なんです。
足し算方式のお釣り返却
そして、急ぐと損することもあるんです。たまに「お釣りをだまされた!」という事も聞きますが、もちろん両替などでだましたりする事もあるので注意は必要ですが、普段の買い物でお釣りをだまされたかも?と思うのは、これも習慣の違いからきているかもしれません。
例えば、お店で23.5ドルの物を買って、50ドル払ったとしましょう。日本人なら50-23.5=26.5ドルと計算しますよね。そしてお釣りをもらうときは、大きいお札から返ってきます。
ところが、欧米諸国では引き算ではなく足し算方式でお釣りを計算します。
どういう事かというと、「23.5ドルにいくら足せば50ドルになるのか」という考え方をします。なので、お釣りを渡すときは23.5ドルからスタートして、50セント渡して「24ドル」。1ドル渡して「25ドル」、次に5ドル渡して「30ドル」、最後に20ドルを渡して「はい。50ドルですね」という感じです。
つまり、お釣りはいっぺんに返るのではなく、少しずつ返ってくるのです。しかも小さい方から!
この返され方は、引き算方式に慣れている日本人には頭が混乱して、お釣りが合っているのかどうかが分からなくなってしまいます。
なので、急いで焦っていると、少しお釣りが戻ったところで(お釣りをもらった)と勘違いしてそのまま行ってしまい、後になって「あれっ?お釣りだまされた?!」となってしまうのです。
大きいお札は後から返ってきます! 海外で急ぐことは、何事も損でしかありません。旅行として行っている時は、仕事ではないので、せかせかする必要はないですよね。現地の人たちに合わせて、ゆっくりと心の余裕を持って旅をしたいものです。
このように、海外と日本の文化の違いから、勘違いをしてしまうことがあるのですが、もしあなたが海外でレストランに行った時、もう一つ覚えておいてほしいことがあります。
レストランで無視される
レストランで、暇そうにしている店員さんに声をかけても聞こえているはずなのに、来てくれない。無視されて、おしゃべりを続けている…。そんな状況だったらあなたも腹を立てますか?
実はこれも習慣の違いからくるもので、海外のレストランやカフェではテーブルごとに担当のスタッフが決まっています。私もオーストラリアのホテルのレストランで働いていた事がありますが、その時も毎回担当テーブルを指定されていました。
日本人のお客様もよく来られていましたが、自分の担当テーブルでなければ、声をかけられても「担当のスタッフをお呼びしますね」と言って、私は対応せず、担当のオーストラリア人スタッフに引き継いでいました。お客様からしたら(日本人なんだからあなたが接客してよ!冷たいな!)と思われたかもしれません。
しかし、多くの海外のレストランでは日本にはないチップの制度があります。このチップは担当をしたスタッフの物になる場合が一般的です。
そのため、テーブルごとに担当が決められているわけです。なので、自分の担当でないスタッフに声をかけても、どんなに暇だとしても接客をすることはないのです。自分のテーブルを担当してくれているスタッフに声をかけなければいけません。
私にそんな口のきき方をするな!
「スタッフは声をかけたらすぐに来る」とか「早くサービスをするのが当たり前」「こちらがお客だから「ありがとう」は相手が言うもの」というような考え方は「お客様は神様」という日本式の考え方から来ている気がします。
日本では、お客は立場が上、スタッフは下という関係性があるように思います。それをはっきりと意識することはなくても、日本の風習の中で染み込んでいる感覚があるのだと思います。
ですが欧米諸国では、お客もスタッフも同じ、対等の関係です。そしてもっと言うと、上司と部下、親と子供なども立場は違っても対等の関係で話しをします。
フランスのパリのホテルで、コンシェルジュに用事がありロビーに降りて行った時の事です。
コンシェルジュデスクには、男性のお客(外国人)がいて声を荒げて何かに怒っていました。彼の声は、高級ホテルの静かで広いロビーに響き渡っていました。
海外ではとても珍しい事なので、ロビーにいる人たちも遠巻きに「何事だろう」とその男性を見ていました。私は、その男性の少し後方に立って、様子を伺いつつ終わるのを待っていました。何やらチケットの事でもめているようで、「時間がどうのこうの」と怒っていました。
コンシェルジュの方は落ち着いた様子で話していましたが、男性の怒りは治まる様子はなく徐々に声も大きくなり、ついに大声でそのスタッフに怒鳴ったのです。その時です。コンシェルジュの彼が強い口調で一言!
“Don’t talk me like that!”
「私にそんな話し方しないでください。」つまり「私にそんな口のきき方をするな!」と言ったのです。相手はお客様です!
私は(え~っ!お客にそんな事言う?! そんな言い方して大丈夫なの?)と自分の耳を疑う位、驚きました。日本だったら「客に向かってなんだその口のきき方は!上の者を呼んで来い!」などと、さらに怒りをかい大ごとになるんじゃないかと思います。
どうなる事かとドキドキして見ていると、その言葉を言われた男性は、ハッとしたように急に黙り、周りを見渡しました。彼を見る周りの冷たい視線に気づき、チケットを持ってすごすごと帰っていったのです。
この時、私は欧米諸国ではスタッフもお客も本当に対等なんだと実感しました。コンシェルジュのスタッフも相手と対等と思うからこそ、自分にそんな話し方をする事が許せないと思ったのでしょうし、怒っていた男性も、自分の発言が相手に対して失礼だったと思ったからこそ、すごすごと立ち去ったのだと思います
最初の挨拶や、Thank youもすべては相手への敬意だと思うのです。スタッフの手が空くまで順番を待ったり、急がせたりしないのも、相手への敬意であり、思いやりだと思います。
そして、その国の習慣や文化を知り、それに合わせる事もまた、その国の人たちへの敬意だと私は思います。
この3つで海外旅行の達人に!
これで「日本人だからバカにして」とか「日本人だから無視された」「英語ができないから冷たくされた」などは、相手の国の習慣やマナーを知らない事からくる「単なる勘違い」だという事が分かってもらえたでしょうか?
1つ目が、「お店やレストランではHelloとThank youを」、2つ目に「心に余裕を。時間にゆとりをもって行動する」、3つ目に「お客もスタッフも対等の関係。お互いに尊重する」、なのですが、大事なことは、行く先の文化や習慣などを事前に知っておくことなのかなと思います。
旅行する国の習慣や文化を知って合わせれば、楽しく旅行ができるのです。「郷に入っては郷に従え」です。
そして、気づいたでしょうか?これには難しい英語表現を知る必要も、英語がペラペラでなければいけない、という事もないのです!誰でも使える“Hello.”と”Thank you.”。 これさえちゃんと言えれば、海外旅行はOKなんです!
逆に、どんなに難しい英語表現を覚えても、どんなに英語を話せるようになったとしても”Hello”と“Thank you”を言うべき時に言ってなければ、結局冷たい態度をとられてしまうんです”
3つ目の大事な言葉
“Hello”と”Thank you”と並んでもう一つ重要なのは”Please”です。
イギリスでホームステイをしていた時、3歳の女の子にいつも“Pleaseは?”とお母さんが口酸っぱく言っていたのがとても印象的でした。それだけpleaseは大事だという事です。
例えば、コーヒーを頼むにしても“Could I have a coffee?”とどんなに丁寧な表現で頼んでもpleaseをつけなければ、逆にお高くとまっているように聞こえてしまうそうです。それなら”Coffee, please”とシンプルに言った方がずっと丁寧だと言われました。
私はこの3つは、英語圏でない国では現地の言葉をなるべく覚えて片言でも使っています。私たちも外国の人が片言でも、そして丁寧でなくても「オハヨー」とか「アリガートー」と言ってくれたら「日本語知っているんだ!」と、英語で言われるよりももっと嬉しくなりますよね。
海外でも同じです。片言でも、例え3つの言葉しか知らなくても現地の言葉を使うと、とても喜んで親切にしてもらえます。これも相手の国に対しての敬意かもしれません。英語でも通じるけど、現地の言葉を勉強して使うことで、より「あなたの国に興味がありますよ。あなたの国が好きですよ」というメッセージが伝わるのだと思います。
難しい英語表現や、丁寧な言い回しを覚えるよりも、”Hello.” “Thank you.” “Please.” を言うべき時にすんなり言えるように練習をした方がずっと役に立ちます!
この3つを極めれば海外旅行は怖くないのです!
そして、この3つの言葉は誰もが知っている簡単な英語です。
つまり、英語をちゃんと話せなくても、誰でも海外旅行は楽しめるという事なんです!
“Hello” “Thank you.” “Please.”を知っているあなたは、もうすでに海外旅行の達人なのです!
中学生時代から英語を話せるようになる事に憧れ、外国語短大へ進学。その後イギリスへ留学するも英語が話せず落ちこぼれの生徒に。英会話のトレーニング(カランメソッド)を受け英会話が上達。帰国後、夢だったツアーコンダクターになる。渡航国約35カ国 年間200日以上を海外で過ごす。その後オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、オーストラリアにあるハミルトン島のリゾート会社に就職。その後日本に帰国し、京都のホテルやゲストハウスなどでの経験を経て、地元宮崎にUターン。現在は地元宮崎で、英会話教室及び、単位制、通信制の高校で英会話を教えている。
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