Blue Note / ブルーノート
突然ですが、『ブルーノート』ってご存知ですか?
ジャズに詳しい人か、音楽に詳しい人ならきっとご存知だと思います。
あまりジャズや音楽に詳しくない人なら、『ブルーノート』って言われると、青いノートを思い浮かべるかもしれませんが、決して青いノートではありません(笑)
『ブルーノート』これは、ニューヨークのジャズライブハウスの名前です。日本でもこのジャズライブハウス『ブルーノート』に行くためのツアーが企画されていたりします。ちなみに、東京の南青山にもあります。
そんなジャズライブハウスとしての『ブルーノート』以外にも、「音」のことを指したりもします。黒人音楽やブルース大好きさんだったとしたらご存知かもしれませんが、メジャーの曲なのに第3音と第5音、第7音にフラットをつけると、とってもブルージーにカッコよくなるっていう「音」のこと。
実は他にも、アメリカの超有名なジャズのレコードレーベルの名前でもあります。
ジャズ・ヒストリーシリーズでもお話しましたが、ジャズの帝王と言われるマイルス・デイヴィスや、現代で最も著名なジャズ・ミュージシャンの一人と言われ、9つのグラミー賞を受賞しているウィントン・マルサリス。
そんな彼らがジャズのレコードレーベル『ブルーノート』からアルバムを出しては大ヒット。ジャズの全盛期を作り上げたと言っても過言ではありません。
ちなみに2020年9月4日から、ジャズの帝王と言われるマイルス・デイヴィスの映画が日本で公開されてるそうですね。
そんな色々な意味を持つ『ブルーノート』という言葉、本場アメリカでは、もうまさにジャズの代名詞なのです。
この『ブルーノート』を是非取り上げてくださいーとのリクエストがありましたので、今回はこの『ブルーノート』についてのご紹介です。
#世界へ広がる、ジャズクラブ
ニューヨーク、ダウンタウンのグリニッジビレッジにあるこのジャズクラブ『Blue Note New York』は、現在では、世界一といってもいいほどの知名度を誇っています。
世界中にこのブルーノートのファンがいて、先ほどもご紹介しましたが、東京の南青山やハワイのワイキキ、中国の上海や北京、ブラジルのサンパウロ、リオ、イタリアのミラノなどにも、支店があるのです。
まさに、ワールドワイドなジャズクラブですね〜。私は、お客さんとして行ったのは最初の2つですが、チャンスがあればブラジルとかも、行ってみたいですね〜。
#私とBlue Note
実はそんな世界一有名の知名度を誇る『Blue Note New York』で、3回ほど出演させて頂いたことがあります。
ベーシストにジャズ・ベースの神様と言われるロン・カーターさんをお迎えしたことがあって、ニューヨークのブルーノートで、彼と演奏するのは日本にいる時からの夢だったので、それはそれは素晴らしい思い出です。
実は昨年、そんなジャズ・ベースの神様と言われるロンさんと食事をすることがありまして、お寿司を食べるときにご一緒しました。その際なんとロンさん、マイ箸を持参されてたんです。
お洒落なネクタイと、胸ポケットのチーフをキメたジャケットの右ポケットから、ちょっとみんなを驚かしちゃおうかなぁみたいな茶目っ気たっぷりの表情で、洒落たケース入りの、半分に折りたたむマイ箸を取り出したのは、笑えました(笑)
実はロンさん、とっても日本びいき。「日本のBlue Noteに行くのは大好きだ。だっていつもビジネスクラスのチケットを抑えてくれるから」って笑顔で仰ってました。日本人は、ジャズを尊敬してくれてるからね、素晴らしいことだよって。
#アメリカンミュージシャンが大事にする日本の心
大の親日家ジャズ・ミュージシャンと言えば、世界的ドラマーのアート・ブレイキー。「Moanin’」や「ブルース・マーチ」といえば、きっと誰もが一度は聞いたことのある曲のはず。
そんなアート・ブレイキーの娘さんにあたる歌手のエベリンから聞いた話ですが、アート・ブレイキーが1960年代、最初の公演のため来日時にえらく感動したのは、帝国ホテルに、正面玄関から迎えられたこと。
当時のアメリカは、まだまだ人種差別が激しい時。ジャズミュージシャンの黒人はいつも裏口のみ、出入りが許されていたそうです。そんな中、帝国ホテルの正面玄関から迎えられたことがとても感動したそうで、日本人は、人種差別を全くしない、世界で唯一の素晴らしい人たちなのだと、彼は亡くなるまで言い続けておられたそうです。
#これからの、ブルーノートを含むニューヨークのエンタメ
少し話を『ブルーノート』に戻しましょう。
11月半ば現在、コロナ感染拡大の影響でニューヨークのレストランなど飲食業は厳しい停滞が続いています。今年3月の3週目からずっと営業することができなかったレストランが、屋外の臨時テーブルでの営業が許可されたのが6月末。
屋内で収容人員の25%のお客さんの飲食が認められたのが9月30日。バーはクラスターになる確率が高いので、まだ営業は認められていません。
そして私たちにとって痛手なのは、多方面に渡り、いまだにパフォーマンス業界(屋外でソーシャルディスタンスをちゃんと取れる物のみ可)全体の営業許可が降りていないと言うことです。
既にお知らせしましたが、ブロードウェイのミュージカルは2021年の6月まで、メトロポリタンオペラは同じく9月まで、すべて公演中止が発表されています。
ニューヨークフィルハーモニー、マンハッタン内の映画館や、ジャズバーもまだオープンできていません。25%のみのお客様では、ライブ演奏を聞かせるレストランもきっと採算が合わないだろうと予測されます。
そんな中で、このニューヨークのBlue Noteは太っ腹。4分の1のお客様でもこのクリスマス時期、ホリデーシーズンの週末には、なんとプロのピアニストとして、またバンドリーダー、作曲家、編曲家としてラテンジャズ オーケストラを率いる第一人者であるEDDIE PALMIERI(エディ・パルミエリ)を呼んでショーをお贈りするそうです。
この60年間、アメリカのジャズとアフロ カリビアンの音楽を融合させ、プエルトリコ人であるが故の「サルサ」を生み出し、一世を風靡しました。
この辺、ジャズヒストリー編と重ねて読んでいただくと、流れがとってもよくわかりますよね(笑)。
彼は、ご高齢ですが、ジャズミュージシャンは本当に、皆さんいつまでもバリバリ元気です。このジャズっていうとってもライブリーな音楽が、年齢を感じさせないんですよね。私もそんなおばあちゃんになれるかしら。なれたらいいな〜。
なかなかこのパンデミックはアメリカでは終焉しそうにありませんが、でもしゃがんでれば次はきっと飛び上がる時が来るはず。落ち込んだ後は、今度は昇る時が待っています。それを信じて、頑張って行きこうと思います。
New Yorkより
追記
12月7日現在、NY州ではコロナ感染拡大防止のため、レストランの屋内営業も来週からすべて再度クローズと言う情報が入っています。
マンハッタンの朝9時の気温は約0度。この状況で、ホリデーシーズンにニューヨークへ観光を考えておられる方はまず無いとは思いますが、一応書き添えます。ライブ演奏も変更になるかと思われます。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。